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第6回 and SORACOM

海のビッグデータプラットフォームを目指すスタートアップのセンサー作り

新世代の魚群探知機でデータドリブンな漁業を開拓するAquaFusionとSORACOM

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

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 従来の限界を超える解像度の高い魚群探知機を開発する神戸のスタートアップAquaFusion(アクアフュージョン)。データドリブンで効率的な漁業を目指す同社の取締役COOである竹内悟氏に、新世代魚群探知機の開発ストーリーとSORACOM採用について聞いた。

海の中の解像度を一気に高める新世代の魚群探知機

 AquaFusionは笹倉豊喜氏と松尾行雄氏という二人の創業者によって、2017年に神戸で創業された。代表取締役社長・CEOの笹倉氏は魚群探知機の業界では世界でも最大手である古野電気の出身で、開発部長まで務めた魚群探知機のプロ。東北学院大学の教授で、コウモリやイルカの超音波の研究をしていた松尾氏のアイデアに、この笹倉氏が乗る形で研究開発がスタート。現在は「サステイナブルオーシャン」をミッションに掲げ、水中の可視化と魚体識別を実現すべく、新世代の魚群探知機の研究開発と製品化を進めている。まずは前提知識として、同社の竹内氏に魚群探知機についての基礎を説明してもらおう。

AquaFusion 取締役COO 竹内悟氏

 魚群探査機はいわば海中のセンサー。電波が通らない海の中で探査を実現するため、超音波を海中に送信し、その反射(エコー)を取得して、サーモグラフィーのような形でビジュアル化する。超音波は魚のうきぶくろの中にある空気にも反応するため、魚群の探査に用いられるが、海底地形の調査や沈船の捜索にも用いられる。

 ただ、現在の魚群探査機の弱点は超音波の連続送信ができないこと。同じ周波数帯の音波を連続送信すると、区別ができなくなるため、いったん送信したらエコーが戻ってくるまで次は送信できない。そのため、基本的に飛び飛びにしか海の中を見ることができず、「魚群」までしか探索できないというのがデメリットだった。

従来の魚群探知機の課題(提供:Aqua Fusion)

 これに対してAquaFusionの魚群探知機「AquaMagic」では、同じ周波数帯の音波を用いながら、各音波を識別することができるため、超音波の連続送信が可能になる。同じ周波数にもかかわらず、混信しないケータイの技術を、魚群探知機に応用したわけだ。「超音波を数多く送信できるので、情報量が格段に上がります。従来、ボヤっとしか見えなかった魚群が、一匹一匹鮮明に映るようになったんです」(竹内氏)。笹倉氏が開発したこの音波の連続送信技術に加え、松尾氏は映像から魚影を識別するソフトウェアを開発した。これらの技術を組み合わせたのが、AquaFusionのコアテクノロジーになる。

AquaFusionの新世代魚群探知機

漁業、養殖、海洋探索などの課題解決に貢献

 従来は魚群しか識別できなかった魚群探知機だが、AquaMagicを用いると、魚の大きさや数まで判定できる。そのため、漁業、養殖、海洋開発での課題解決に貢献できるという。

 まず漁業の分野では、乱獲によって漁業資源の現象が大きな課題になっており、水産庁でもサイズや種類の規制を強化するようになってきている。また、コロナ禍で漁獲量が減っていることもあり、漁師も単価の高い魚を獲る必要がある。こうしたニーズにAquaMagicは応えられる。「『無駄な魚は獲らない』という、選別する漁業にわれわれは貢献できます。今後は、季節、水深、魚群の形などを分析することで、魚種の識別にもつなげていきたいです」と竹内氏は語る。

SORACOMを搭載するブイ型のAquaMagic(正式名称:MagicBuoy)

 また天然物を上回る生産高に成長している養殖に関しては、給餌の課題を解消する。養殖は給餌がコストの6割を占めており、適切な成長管理が必要になるのだが、長らく現場の人間の個人的な技術に頼る作業が行なわれているという。これに対して、AquaMagicは生け簀全体を遠隔で管理するというソリューションを提供しており、大手企業とともに実証実験を進めているという。さらに海洋開発に関しては、無人化が進む海洋探索でAquaFusionの技術が活用できそうだ。

 現時点では、資源管理を行なう側の研究機関や大学での導入がメインで、漁業に関しては実証実験を進めているところだ。たとえば、ホタルイカの定置網の観測を行なう富山県の実証実験や、サーモンやさばの養殖でも試している。

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