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第4回 and SORACOM

あらゆるアウトドアスポーツをエンタメに そしてデータドリブンな競技を

水上スポーツのリアルタイムな位置表示を実現する「HAWKCAST」とSORACOM

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ソラコム

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幅広いスポーツで活躍するHAWKCAST 課題はデバイス

 ウィンドサーフィンからスタートしたHAWKCASTだが、その後はSUP、ヨットのセーリング、ボートレース、トライアスロンなど競技の幅を拡げている。「一番難しいウィンドサーフィンからスタートしたので、アウトドアで実施するあらゆるスポーツに対応できると思っています」と横井氏は語る。確かにウィンドサーフィン以外の競技は時間や位置、コースなどなにかしら固定されるため、HAWKCASTでも対応しやすい。トライアスロンは陸上がスタート場所になるし、SUPやボートだって定時にレースがスタートするからだ。

 課題はデバイスだ。現在使っている京セラ製のトラッキングデバイスは、1秒に1点の位置情報を5秒分まとめて送信する仕様になっているが、実際はより細かい値が必要になるという。「われわれの仕様では、秒単位で測位して秒単位で送りたいのですが、ほとんどのみまもりデバイスは早くて1分、普通は3分。メーカーからは、それ以上だと電池がもたないと言われてしまいました」(横井氏)。

現行の位置トラッキングデバイスと専用ウェア。背中の上部のポケットに収納する

 また、過去の経験から学んだ経験では、物理的なアンテナの大きさが重要とのこと。「スポーツ選手としての要求としては、もちろん『小さく、軽く』なんですが、米粒みたいなGPSアンテナだと、ちょっと方向がずれるだけで精度が悪くなります。現時点では、小さくすると精度が悪くなってしまうのが現状の課題」と横井氏は指摘する。

 実際、タイム計測で大きなずれが生じた原因を調べてみたところ、選手がデバイスの向きを間違えていたという。特にみちびきはまだ4台しか運用されておらず、確実な強度で電波を受信するにはアンテナも現時点では相応の大きさが必要になる。こうした知見を元に、現在はサブメートル級の精度を誇るSLAS(サブメートル級測位補強サービス)に対応したトラッキングデバイスを内閣府と共同開発している。

 今後の方向性としては、見える化を工夫し、セーリング競技のエンターテインメント性を高めていくという。横井氏は、「ファンが増えないと、競技も盛り上がらないし、スポンサーも付かない。だから、観客の裾野を拡げられるよう、もっとわかりやすいものを作らなければならないと考えています」と語る。選手やエンジニアとしての目線を持ちながら、スポーツビジネス全体に寄与できるにはどうしたらよいかをつねに模索しているのが印象的だ。

 また、データドリブンなトレーニング環境や模擬大会を実現することで、競技人口の増加やモチベーション強化にもつながる仕組みを考えている。最終的には、日本選手・チームの勝利にデータドリブンなHAWKCASTの技術が活かしたいというのが横井氏の野望だ。「最先端のデータトレーニングで、世界的な大会で金メダルとれるチームを作ってみたいという野望もあります。そのためには私がこれを付けて大会で勝ちまくるしかないかなと(笑)」(横井氏)。

 こうして取材と撮影を終えた横井氏は、今日も鎌倉の海にこぎ出していったのだった。

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