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加速するデジタル経済、レジリエンス推進のために政府が果たす役割

2021年12月27日 09時00分更新

文● 古舘正清/ヴィ―ム・ソフトウェア 執行役員社長、ネイサン・ステイナー/Veeam Software オーストラリア・ニュージーランド地域エンジニアリングヘッド(寄稿)

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 世界中が新型コロナウイルスからの復興を続けるなか、2つのトレンドが見えてきました。1つ目は、消費者、市民、ユーザーが、常時オンラインサービスに完全に依存していること。そして2つ目は、ビジネスにとってデータはまさに最重要のデジタル資産であることです。企業や社会のあらゆる分野でデジタル化が加速し、重要なデータやアプリケーションの可用性やアクセスの確保はかつてないほど重要性を増しています。

 日本を含むアジア諸国は、他の地域と比べてもデジタルエコノミーを全面的に取り入れる方向に向かっており、より早い回復が見込まれています。特に中国では、2021年の成長率が米国3.2%に対して8%になると経済協力開発機構(OECD)は予測しました。また、アジア地域全体では6.8%の回復が見込まれるとアジア開発銀行(ADB)は予測しています。今日ではアジア圏内の多くの国々が、高いテクノロジー導入率と5G等のインフラ整備によって、デジタル化における世界的なリーダーとなっています。

 しかしながら消費者のデジタルリテラシーが高まる一方で、デジタル経済の繁栄に対する楽観視は「デジタルレジリエンス」リスクの高まり、つまり回復力の欠陥によって脅かされています。デジタル経済の重要な基盤であるレジリエンスの実現には、常にデータを保護し、アクセスおよび回復可能にする能力が不可欠です。デジタルレジリエンスとは企業のみならず社会のあらゆるレベルに浸透させるべきものであり、各国政府が理解促進を率先する必要があるのです。

デジタル化の加速がもたらすセキュリティの向上

 デジタル取引やEコマースは飛躍的に伸長し、企業におけるクラウド導入も爆発的に広がっています。同時に、サイバーセキュリティの脅威もまた急増しています。チェックポイント社の「CheckPoint Research」によると、アジア太平洋地域における5月のサイバー攻撃件数は前年比で168%増と爆発的に増加しており、今年の4月から5月のわずか1ヶ月間で53%の増加が見られました。

 こうしたセキュリティリスクの増大に対応することは、デジタルレジリエンスの強化に向けた第一歩になります。デジタルレジリエンスは、今日における生存と成長のデジタル能力を測る指標でもあります。企業は、どのようにビジネスプロセスや既存および新規のデジタルインフラのレジリエンスを積極的に強化しているかを、問われているのです。

 政府は、個人レベルと企業レベルの両方で、直面しているデータリスクの増大に関して、全ての部門を啓発し、そして一部の分野では規制する責任があります。今必要なのは、デジタルレジリエンスの強化に向けてデータ保護、データアクセス、データ管理のすべてに総合的に取り組むべきだというメッセージを発信することです。

 企業の課題は、データ保護のコストと作業負担が増大していることです。これは、レガシーシステムが最新のサービスやイノベーションをサポートできないことに起因しています。ユーザーは、すべてのプラットフォーム上のデータが完全に保護され、復元可能であることが確約できない状況に陥っています。

 Veeamの年次調査「2021 データプロテクションレポート」では、世界的なデータ保護の課題の最上位を占めたのが「バックアップの不完全性」もしくは「サービス内容合意書の不履行」でした(2021年回答者の約40%、2019年では31%)。また、アジア太平洋地域の企業の約82%が、アプリケーションをリカバリできる速さと、アプリケーションをリカバリする必要がある速さの間に「可用性のギャップ」があると認識していました。また、同じ組織の77%が、データのバックアップ頻度と失う可能性のあるデータ量の間に「保護のギャップ」があると回答しています。

 最新のデータ保護ソリューションを導入している企業は、5年単位で見ればデータのバックアップ費用と復旧費用を50%節約し、その業務にあたるスタッフの効率が55%改善していることも、本調査データでは、明らかになっています。

信頼できるデータが成長とイノベーションの基盤を作る

 テクノロジーやツールは、データ保護、データ可用性、デジタルレジリエンスを実現するための解決策の一部に過ぎません。データ管理を強化して復元作業の自動化と即時化を実現することで可用性を高め、マニュアル作業なしにデータプラットフォームの健全性を保ち、コンプライアンスリスクを低減することができます。

 適切なプロセス無しにデータを管理した場合、効率性は下がり、復旧に要する時間が長引くおそれがあります。リスクを減らしながら管理と復元作業を簡略化するためには、システムのプロセスを自動化することが必要です。優れたシステム管理と、データ運用プロセスを定義することで、データへのアクセシビリティの向上を実現できます。データを適切に管理することで、完璧に近い可用性と中断のないアクセシビリティが得られ、データの信頼性と完全性が高まるのです。

 データに簡単にアクセスできるようになるほど、イノベーションは加速します。あまり認識されていませんが従来のバックアップでは、データを閉じ込めてしまい、再利用や活用、リアルタイムのデータストリームと統合して分析することができません。先進的なデータ管理ではデータの可能性を解放し、ビジネスの事業目標をより早く達成するのに役立ちます。バックアップは、もはや単なるコピー保存ではありません。データの強力な中央レポジトリとして、多彩な用途があります。バックアップに含まれるデータを再利用することで、企業はビジネス分析、意思決定、開発、より豊かな顧客体験をスピーディに行うことができるのです。

 各国の政府は、企業がデジタル技術を導入できるよう後押しをしてきました。それを裏打ちするためにも、適切な情報発信を提供し、自ら率先してデータ保護、データの可用性、デジタルレジリエンス向上の模範を示すことが重要です。そのためには、企業、地域、学界と一体になるエコシステム構築に向けた取り組みが必要であり、その先頭に立つべきは政府です。

 デジタルレジリエンスというデータを巡る重要課題に対応しない限り、今後の経済成長、回復、イノベーション、デジタル変革の取り組みすべてが危険にさらされます。デジタルレジリエンスは、未来への分水嶺なのです。

(寄稿:Veeam Software)

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