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なぜKubernetes/コンテナは重要なテクノロジーなのか 第1回

これからKubernetesがいかに技術の競争環境を整えていくかの道のり

2021年11月02日 11時00分更新

文● 古舘正清/ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長(寄稿)

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 日本同様に、オーストラリアでは、テクノロジー業界が深刻な人材不足に陥っています。研究者らの試算によると、オーストラリアで100億ドル規模の経済成長の機会を可能にするためには、2025年までに新たに15万6,000人のテクノロジー人材が必要になるとされています。米Veeam Softwareの製品戦略チーム シニア・グローバル・テクノロジストで、システムエンジニアリングにも深く精通するアンソニー・スピテリ(Anthony Spiteri)の見識を交えながら、Kubernetesが代表する新たなテクノロジーが開発者に熱く支持されている今、エンジニアがスキルを向上させ新たなプラットフォームを積極的に活用することがいかに重要か解説していきます。

Kubernetesとは?

 Kubernetesは、ITチームがアプリケーションのデプロイメント、スケーリング、管理のプロセスをこれまで以上に制御可能にするコンテナ管理プラットフォームです。オープンソースでクラウドネイティブなテクノロジーにより、プラットフォーム全体で開発、テスト、プロダクションのフェーズをより一貫性のあるものにして企業に大きな変革をもたらします。

 Kubernetesでは、アプリケーションの移動を可能にするポータビリティが確保されます。コンテナ化された各アプリケーションそれぞれにネームスペースとPodがあり、アプリケーションを実行するために必要なストレージ、コンピュート、メモリー、セキュリティなど全ての要素が含まれています。

 コンテナはまた、アプリケーションをバンドルして実行するための優れた方法です。本番環境において開発者は、複数のコンテナアプリケーションを管理し、確実にダウンタイムがない状態を保ちながら継続的インテグレーション(CI)と継続的デリバリー(CD)を実施する必要があります。万が一1つのコンテナがダウンした場合は、他のコンテナを起動させなければなりませんが、このプロセスにおける手作業をKubernetesが排除し、自動化します。

スキル開発は事業への投資

 あらゆる「破壊的」とされるテクノロジーと同様に、Kubernetesの導入によるイノベーションは、教育なしに維持することはできません。大学や教育機関がKubernetesをカリキュラムに取り入れ始めた今、日本のみならずオーストラリアでも、最も若い開発者たちが、これから業界を発展させるスキルセットを身に着けて社会に出ようとしています。ではこのことは、既存のITチーム、とりわけジェネレーションYとも呼ばれるデジタルネイティブのミレニアル以上の人たちにとって、何を意味するのでしょうか。

 米Veeamのスピテリによると、実績が豊富なITチームのメンバーは、貴重な経験を積み重ねているといいます。DXに関わってきた経緯から、変化するプロセスや責任領域に適応する方法をよく知っています。彼らの経験は尊重されるべきであり、チームの新メンバーに知識を授ける投資をするのと同様に、彼ら自身の専門能力の開発にも投資すべきです。

 この相互のスキルトランスファーを行わなければ、ITチーム内のギャップは拡大する一方です。だからこそ、あらゆる分野の企業において、定期的に各ジェネレーションの知識交換プログラムを実施することで、自社のシステムを最高の状態に維持することができます。

DevOpsコミュニティに新たな役割を

 企業はますますKubernetesの価値を認識しています。Kubernetesを理解し精通している開発者は、バックエンドシステムを自動化してセキュアにする能力と知識を持っているため、需要が高まるでしょう。企業は競争力を維持する上で必要な人材確保に、先を争うでしょう。

 HashiCorp Stack、Docker、Apache Mesosなど多数の専門分野を習得しているDevOpsエンジニアの役割は間もなく、Kubernetes特化へと拡大していくでしょう。これはすでに起きている現象ですが、仮想化分野に比べるとまだ徹底されていません。

 こうした専門的な役割は、個々の企業にとって有益なだけでなく、グローバルイノベーションにも利益をもたらします。Kubernetesプラットフォームのオペレーターとして特化した役割を担うことで、スキルにさらに磨きをかけ、ソリューションを革新し、現在の能力を全く新しいレベルに引き上げる機会を得ることができるのです。

 テクノロジー業界の競争環境を整えていく上で、企業は真の差別化をするためには内部で競い合っても仕方がないと知る必要があります。テクノロジーの力を真に活用するためには、経験レベル、業界のみならず、さらには国をも超えて知識を共有することが不可欠です。1つの組織、1つの目的のみに知識が閉じられると、当然ながらイノベーションは限定的になります。多様な部門、専門分野、リージョンで共有されてこそ、本来の可能性が解き放たれ、大きな雇用市場が生まれるのです。

(寄稿:Veeam Software)

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