なぜKubernetes/コンテナは重要なテクノロジーなのか

時間とコスト減だけでない、Kubernetesが中小企業に支持される理由

古舘正清/ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長(寄稿)

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 新型コロナウイルスによるパンデミックはたったこの1年でも何年分もの変化をもたらし、あらゆる企業のビジネスのあり方を変えてしまいました。マッキンゼー社によると、企業は顧客やサプライチェーンとの連携ならびに社内オペレーションのデジタル化を3~4年前倒ししたという調査結果が出ています。しかし、この急速なデジタル化に伴い、中小を含むすべての企業が現在、フィッシング攻撃やランサムウェアなどのサイバー攻撃の危機にいっそうさらされています。今なお増加の一途を辿るサイバー攻撃に対して、Kubernetesがどのように活用できるのか、前回に引き続き米Veeam Softwareで製品戦略を担うシニア・グローバル・テクノロジストのアンソニー・スピテリ(Anthony Spiteri)とともに考察していきましょう。

 日本を含むアジア太平洋地域もこの1年でサイバー攻撃数が増加しました。チェック・ポイント社の調査によると、2021年5月にアジア太平洋地域のサイバー攻撃件数は前年同期比168%増、国別前月比増加率は日本が40%で1位という驚異的な増加を記録しています。現在、アジア太平洋地域の企業は、1社につき1週間あたり1,245件の攻撃を受けています。

 今日、企業の複雑なITワークロードには前例がないレベルの拡張性と柔軟性が求められています。これに対応できる唯一の技術がKubernetesです。企業はKubernetesによって、複数のクラウド上にあるビジネスアプリケーションを共通のクラウドプラットフォームで運用し、俊敏性と一貫性を高め、コストと複雑さを低減することができます。こうして、KubernetesはITに革命をもたらしました。

 Kubernetesは、中小企業に次の3つの基本的なビジネス上のメリットをもたらします。それらは、競争力を保ちながらコストを削減するための重要な要素です。

ランサムウェアからの中小企業の保護

 ランサムウェア攻撃が増加し、企業がさらされるリスクが急激に高まったことで、データ保護、特にバックアップと災害復旧がこれまで以上に重要になっています。しかし、スピテリによると、これを促しているのはランサムウェアだけではないといいます。Kubernetesとコンテナの導入が大幅に加速したのです。ガートナー社によると、経済的先進国における大企業の75%が2024年までにコンテナを導入する見込みです。

 こうしたトレンドにより、Kubernetesとコンテナを原動力とした最先端のコンピューティングパラダイムが生まれました。企業がKubernetesを導入する際、適切なツールを使用して正しくデータ管理を行えるかどうかが、成功するか失敗するかの分かれ道になります。そして残念ながら、Kubernetesのアプリケーションや環境にはランサムウェア攻撃ベクトルが数え切れないほどたくさんあり、ハッカーを引き付けてしまうことに注意する必要があります。

 必要な手段を講じてランサムウェア攻撃を防止し、克服することが、すべての企業、特に中小企業にとって極めて重要です。Kubernetesはモダンなコンピューティングを統一する仕組みであり、今日のリスク下でデータが抱える喫緊の脅威を軽減する最善の防御策の一つです。

 バックアップ機能やリカバリ機能は、自動化して既存のワークフローにシームレスに統合する必要があります。データを書き変え不能にすること、独自のコードパスでのバックアップ作成、バックアップ保護の有効性の最大化、シームレスな復元などにより、ランサムウェアに対する強固なデータ保護戦略が実現します。

マニュアルプロセスの排除

 企業は、Kubernetesを利用することで、手間と時間のかかるマニュアルプロセスを排除し、成長とイノベーションに注力するための時間を確保することができます。これが、Kubernetesが企業にもたらす2つ目のメリットです。

 Kubernetesにおけるエコシステムが発展すると、アプリケーションのセットアップとインストール、ポッドとノードのスケーリング、継続的なストレージ管理、セキュリティワークフローの自動化など、特定のワークロードやプロセスをさらに自動化できるようになります。多くの運営タスクを自動化するだけでなく、物理マシンや仮想マシンのクラスタのコンテナをスケジュールし、実行することができます。そのため、企業はコンテナの仕組みを自動化して日々の業務に生かすことができるのです。

 Kubernetesは、従来のあるいはモダンなワークロードをダイナミックに拡張する豊富なネイティブ機能を備えています。なぜならKubernetesは一貫して「何を得たいか」というデータ出力の性質やあるべき状態を記述する、宣言型のデプロイメントモデルをベースとしているからです。これにより、アプリケーションの開発者とオペレーターは、オンデマンドでの拡張と自動リカバリに対応した各ワークロードのプロファイルを定義し、アプリケーションの完全性ならびに最高水準のパフォーマンスと信頼性を確保できます。

 Kubernetesは総体的に企業のインフラストラクチャコストの削減を支援します。大規模なエンタープライズアプリケーション群向けに、コンテナベースのアーキテクチャを構築できるため、企業は最小限のリソースでこれらのアプリケーションを統合し、クラウドとハードウェアへの投資効果を最大化することができます。それと同時に、拡張する必要のあるアプリケーションは、拡大する余裕のあるポッドに配置することが可能です。

ITエコシステムのアジリティ強化

 世界がネットワークでこれまで以上につながるなか、企業はビジネスの俊敏性を高め、顧客のニーズに合わせたアプリケーションやサービスの導入機会を最大化しなければなりません。

 中小企業は、開発者、プラットフォームオペレーター、セキュリティ専門家のチームを強化する必要があります。そのためには、プライベートクラウド、パブリッククラウド、エッジベースのコンピューティング環境などのたくさんの技術プラットフォームを統合する、持続的なアジリティを備えたフレームワークが求められます。

 KubernetesのAPIはあらゆるインフラストラクチャで一貫して利用でき、ソフトウェアによってセキュリティ、コンプライアンス、アーキテクチャのガードレールを構築できます。その結果、企業は重要な管理をどこでも問題なく行い、開発チームの迅速かつ安全な活動を支援することができるのです。

 Kubernetesは、多くのデータセンターやパブリッククラウド環境で使用されている一貫性のあるAPIを、新しい分散型のハイパーコネクテッドコンピューティング環境へ拡大するために、進化し続けています。これにより、企業はKubernetesが築いた技術的土台を活用し、統一された形でアプリケーションを拡大することができるのです。

 より強固なランサムウェア対策、合理的なビジネスプロセス、事業の俊敏性のニーズが高まるなか、中小企業およびそのITスタッフによるKubernetesの支持が高まっています。中小企業はKubernetesによって、データストレージやデータ管理に要する時間を削減し、豊富な時間短縮、生産性向上の選択肢を、効率的かつ効果的に得ることができるのです。

(寄稿:Veeam Software)

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