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それは綿密な計画の上で実行されていた

ASUSの新戦略を大解剖! タブレットからクリエイター向けまでノートPCが全部「有機EL」になったワケ!!

文●宮里圭介 編集● ASCII

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 PC本体はもちろん、PCパーツ、スマートフォン/タブレット、ルーター、ディスプレー、そしてキーボードやマウス、ヘッドセットといった周辺機器まで、幅広いジャンルを手掛けるASUSが、ノートPCにおいて新たな戦略的製品群を投入した。その共通するコンセプトは、ディスプレーに「有機EL(OLED)」を採用していることだ。

2in1のタブレットから、メインノート、プロクリエイター向けまで、すべて有機EL搭載になった!

ASUSの2021-2022冬モデルノートが、すべて「有機EL」搭載になった!

 OLEDは「Organic Light Emitting Diode」の略で、一般には「有機EL」と呼ばれるものだ。画面に文字や画像を表示するという意味では、従来の液晶ディスプレー(LCD、Liquid Crystal Display)と役割上変わることはない。ただし、その表示原理はまったく違う。

 液晶ディスプレーの原理を簡単に説明すると、各画素が赤(R)、緑(G)、青(B)という3色のフィルターをもち、それぞれに透過させる光量を調節することで色を表現している。この調節に使われているのが液晶だ。液晶は加える電圧で分子の向きを変えられるため、これをうまく制御することで光量の調節を可能にしている。

 ここで知っておきたいのは、液晶がするのはあくまで光量調節だけだということ。つまり、画面上に表示させるには背面からの光……バックライトが必要となる。ただし、液晶とRGBフィルターによって光は減衰してしまうため、明るく色鮮やかに表示させたければ、実際に表示されるよりも格段に明るいバックライトを用意する必要がある。

 ただ問題となるのが、明るいバックライトを使うと光が漏れてしまうこと。液晶で光量が調節できるとはいえ、完全なゼロにはできないため、どうしても薄明るく表示されてしまうのだ。いわゆる「黒浮き」と呼ばれる現象だ。

 これに対して有機ELは、画素そのものが光るというのが特徴。バックライトが不要となるほか、余計なフィルターを透過しないために鮮やかな色を再現しやすい。また、黒は画素が光らないため、原理上、黒浮きが起こらないというのもメリットだろう。

「Vivobook Pro 16X OLED」 の画面を実写したもの(はめ込みではありません)。コントラストが高く、発色も見事なのだ

 とは言え、有機ELもいいことばかりではない。長時間点灯していると画面が焼き付いて跡が残る、消費電力が比較的大きい、コストが高い、といった問題があるのだ。特に画面サイズの大きなノートPCでは、この問題が顕著になる。スマートフォンに比べ、有機EL搭載機の数が少ない理由となっている。

 少なからぬデメリットがある有機ELだが、ASUSが新機種の全ノートPCで有機EL搭載モデルを投入したのは、大きく5つのメリットがあるからだ。

●クラス最高の色表現
●ブルーライト低減で目にやさしい
●細部まで映す・見える
●本当の黒
●高速応答でクリア&なめらか

それぞれ、細かな部分を見ていこう。

有機EL搭載機を選ぶ理由は液晶とは違う“画質”にある

●「クラス最高の色表現」
 まず挙げられるのは、色域の広さ。一般的なディスプレーで採用されているsRGB比で133%と広範囲となっているだけでなく、デジタルシネマ向けのDCI-P3比でも100%を実現し、さまざまなコンテンツで、製作者側が意図した色をしっかりと再現できる。

 さらにASUSでは忠実な色再現ができるよう、カラーマネージメントのPANTONE認証を取得。デザイナーやクリエイターでも安心して使える環境となっている。

HDR対応に加え、DCI-P3比100%の広色域を実現。ノートPCでありながら、写真も映像も正確に色を再現できる

●「目にやさしい」
 眼精疲労や睡眠の質へと影響を及ぼすと言われている、ブルーライト。ASUSのノートPCでは、色の正確性を低減させることなく、ブルーライトを大幅に減らしているのが特徴だ。よくあるブルーライトカットフィルターだと画面が赤っぽくなってしまうが、こういった違和感なしに、液晶ディスプレー比で70%も軽減できている。

特に影響が大きいと言われている、波長の短い部分を低減。色への影響を最小限に抑えながら、しっかりとブルーライトをカットしている

●「細部まで映す・見える」
 液晶ディスプレーはRGBのフィルターを透過させて色を表現するため、バックライトの輝度が変わると表示できる色域が変化してしまうことがある。輝度が100%なら本来の色で見えるのに、輝度を70%に落とすと色味が変わってしまう……ということもあるわけだ。

 これに対して有機ELであれば、高輝度だけでなく、低輝度でもしっかりと色を表現できるのがメリット。また、環境光の影響も受けにくいため、場所を移動しての作業、昼と夜との差を気にする必要もない。

ディスプレーの輝度を下げると色域も変化。しかし、液晶ディスプレーと比べ有機ELはこの色域の変化が小さく、低輝度でも色味が変わりにくい

●「本当の黒」
 先の原理説明でも少し触れたが、液晶ディスプレーはバックライトを使うことから完全な黒にはできず、どうしても薄く光が透過してしまう。

 これに対して有機ELは、画素そのものが光ることで色を表現しているため、黒は無灯火。つまり、黒浮きが発生しない。とくに薄暗いシーンでこの差が大きく、繊細な影や色をしっかり再現できるというメリットがある。

明るいところは明るく、暗いところは暗く表現できるのが有機ELの魅力。部屋の明かりを暗くした場合でも、黒が浮くことはない

●「高速応答でクリア&なめらか」
 色表現の面で優れる有機ELだが、0.2msという応答速度を持つため、映像でもその実力を発揮。ブレや残像感なしに再生できるため、いつでもクリアな画面で楽しめる。特に動きの速いスポーツ観戦、ゲームシーンなどで活躍してくれるのだ。

 ちなみに応答速度は、一般的なIPS液晶で5ms前後、ゲーミングディスプレーなどで多いTN液晶でも1ms前後というのが一般的だ。

0.2msという圧倒的な応答速度で、素早い動きもクッキリと再生可能。クリアな画質で滑らかに表示できる

複数の技術や対策で有機ELの問題を緩和!
安心して使えるように

 色や画質の面では非常に優れている有機ELだが、やはり気になるのが画面の焼き付き。有機EL搭載モデルが多いスマートフォンで、すでに経験したという人も少なくないだろう。

 これは、同じ画像を長時間表示していると、残像として淡く表示され続けてしまうというものだ。実は、画面の焼き付きそのものはブラウン管の時代からあり、液晶ディスプレーでも起こっていたものだ。ただし、有機ELはこれらと比べより短時間で起きやすく、問題視されることが多くなっている。

 長時間表示されることで発光する明るさが徐々に衰えていき、その輝度の差が焼き付きとして見えるようになってしまうのだ。

 この対策としてASUSのノートPCで採用されているのが、「バーンイン・リファイン技術」。これは、劣化した画素に対して駆動電流を増やし、より明るく光るようにするものだ。これにより、以前と同等の明るさとなり、焼き付きが気にならなくなる。

劣化した画素への電流量を増やし、より明るく光るようにするのがバーンインリファイン技術。元々の明るさが取り戻せるため、焼き付きが軽減される

 もちろん、焼き付きが起こってから対策するより、その前から予防する方がいいのは間違いない。スクリーンセーバーで細かく画面をオフにする、ウィンドウを定位置に表示しない、ダークモードを使うといったあたりは、基本的な予防策となる。

 ASUSのノートPCでは、さらに「ASUS OLED Care」を用意。焼き付きを防止する特殊なスクリーンセーバー「ピクセルリフレッシュ」、特定画素が常時点灯とならないよう、ピクセルをわずかに移動する「ピクセルシフト」といった機能が利用できるため、使い方で気を付ける以上に焼き付きを防げる。

「ASUS OLED Care」を使えば、有機ELの焼き付きをさらに抑えることが可能。焼き付いてから慌てるより、こういったツールを活用して未然に防ぐのがオススメだ

 有機ELの焼き付き問題は完全解決できるものではないが、その影響を小さくすることはできる。使い方の工夫だけでは限界があるが、「ASUS OLED Care」を使えば、さらに焼き付きを抑えられるのは間違いない。

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