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遠藤諭のプログラミング+日記 第114回

「たてもの」と「まち」のイノベーションに関する情報共有グループを作りました

2021年11月23日 09時00分更新

文● 遠藤諭(角川アスキー総合研究所)

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エレベーター業者とRaspberry Pi活用で見積もりが1桁違った

 あるビルでエレベーターに後付けでフロアごとに違う音楽を流そうとしたらかなり高い見積もりがきた。そこで、Rapberry Piとセンサーを組み合わせて作ってもらったらまるまる1桁安いコストで実現できたそうだ。

 エレベーターの業者からしたら最初からそうしたいなら言ってくれというお話なのだとは思う。しかし、音楽が流れるだけならIoTで世界中でたぶん何百万件も使われている安価なラズパイでできちゃっうというのも納得だ。イノベーションというのは、自分の周りを見回して垣根を超えてみたときに起こるものなのだ。

 ここ数年、お仕事でモビリティやIoTやスマートシティについての案件をいただくことがふえてきた。今も国土交通省の3D都市モデル「PLATEAU」のお手伝いだったり、パーソナルモビリティやスマートビルディングのお話など。ところが、私自身は「たてもの」や「まち」に関して、まったくのシロウトである。

 そこで、「たてもの」と「まち」のイノベーションに関する情報共有グループというものをFacebook上ではじめてみた。

 いままでなら、取材に出かけたり社内も含めて打ち合わせで学べるものがあった。 見本市やイベントに出かければ、お互いに興味があれば2回目の挨拶くらいからいろいろと教えてもらえたりする。そこで得られるものは、ネットで調べたり本で読んだりして分かることとは別のものである。

 ところが、リモートワークとZOOM会議が増えた2021年の現在では、なかなかこのような形のコミュニケーションをとりにくくなっている。この問題を解決すべくいろんな試みか行われていて、フェイスブックあらためメタのVR会議「Horizon Workroom」もあれば、8ビット時代のゲームを思わせる「Gather」なんかも注目を集めている。

 しかし、個人的に「思ったよりぜんぜんよかった」と感じていたのが、KADOKAWAで導入されていた「Workplace」だ。「Workplace」は、企業内向けのFacebookで、情報がフィードに流れてくるし、自分の仕事をアピールできるのもよいし、その人の仕事っぷりはタイムインでわかったりする。レスのやりとりから新しいアイデアや人のつながりもあるだろう。

 ということで、《「たてもの」と「まち」のイノベーションに関する情報共有グループ》を作りたいと考えていたら、ASCII.jpの「地域イノベーション」タブのスピンアウト企画としてやれることになった。スタッフも協力して気になるニュースをポストする。そこを起点に、いろんなやりとりが発生したらと思っている。

シロウト(といっても自分の分野ではプロ)同士が語り合うイノベーション

 グループを作ってまだ3週間なので、これがどんなふうになっていくか、あるいはまったくいかないのか正直見えないのではあるが。ニュースのポストに対して「これはちょっと違うと思う」とか、「宣伝させてください」とか、「ちょっと教えてください」みたいな話になってきたらよいと思う。ちなみに、私の最初のポストは、以下のようなものだった。

 まさにシロウトから「これなんですか?」という質問。日本の《蔵》の外側にポツポツと飛び出している半球形に鉄のガギ型がついている。これに対して、それぞれ《ツブ》と《折釘》と呼ばれるものらしく外壁のメンテナンスのためについているらしいと教えてもらった。

 このやりとりがイノベーションにどうつながるかは怪しいところだが、この話題にそれぞれ異なるバックグランウドの人たちが、「こうらしい」とか「こうである」とかやってくれているのが楽しい。ツブは、万が一のとき漆喰の壁自体は傷めないフェイルセーフの仕掛けとは知らなかった。

 冒頭に触れたエレベーターとRaspberry piの出会いのように、イノベーションというのは、それまで異質と思えたものの組み合わせで生まれることが多い。それは人の組み合わせについても言えることなので、ここでは次のようなまったく別の領域にいる人たちが出合ってくれたらと思っている。

(1)建設業界、設備関連、テナント、自治体関係者などの人たち
(2)スマホアプリやRaspberry Piのエンジニア、サービス設計者、メーカー
(3)研究者、都市カルチャーのウォッチャー、利用者

 ソーシャルメディアがうまく回るなんて、そうやすやすと問屋が卸すわけではないのだが、「たてもの」と「まち」のイノベーションに興味のある方は、ぜひのぞいてみていただきたい。

■「たてもの」と「まち」のイノベーションに関する情報共有グループ https://www.facebook.com/groups/smartcityinnovation


【お知らせ】よっぴーさんこと吉田アナとQuoraの江島さんと90分のトークやります

 11/29(月)19:30〜のウェブメディア「まえとあと」主催のBasic Insight Vol.5「フィルターバブルとエコーチェンバー」というオンラインで鼎談をやらてもうことになった。1人は、ニッポン放送アナウンサーで漫画、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通する吉田尚記さん。もう1人は、iPhoneアプリ総合ランキングで米国トップ5入りするなどソフトウェア開発者として活躍された、現在は米Quoraのエバンジェリスト江島健太郎さんだ。

 吉田さんと江島さんは「まえとあと」のインタビュー記事内で、「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」について語られている。「まえとあと」でのそれぞれの記事を読むと、今回、これがオンライントークに発展した理由がわかる。参考までに私の話も含めて以下のリンクより。

■東京オリンピックと「そっ閉じ」のまえとあと / 吉田尚記
 https://maetoato.com/3770/
■自分の環境を変えてみたまえとあと / 江島健太郎
 https://maetoato.com/1611/
■デジタル死を考えるまえとあと/ 遠藤諭
 https://maetoato.com/1873/

 ネットの最前線を見ているお二人が、この割りときわどいテーマにどんな視点と疑問点を持たれているのか? そして、それらの出口はどこにあるのか? ほかでは早々聞けない切れ味のいい内容になるはずだ。

 申し込みなどについては、以下からご覧いただきたい。

■Basic Insight Vol.5「フィルターバブルとエコーチェンバー」
 https://maetoato.com/3934/

 

遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長、株式会社アスキー取締役などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。「AMSCLS」(LHAで全面的に使われている)や「親指ぴゅん」(親指シフトキーボードエミュレーター)などフリーソフトウェアの作者でもある。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。その錯視を利用したアニメーションフローティングペンを作っている。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。

Twitter:@hortense667

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