0歳児と4歳児の保護者をしています盛田諒ですこんにちは。連載をちょっと休んでいるうちに4ヵ月が経ち、赤ちゃんはなんとあと1ヵ月で誕生日です。光陰5Gの如し。赤ちゃんはちょっと前までずりばいをしていたというのに早くもつかまり立ちに移行しています。「それでも4歳児くんのときはもうちょっと早めにつかまり立ちしてたかな」と4年前のことを思い出すことも増えました。
しかし4年前と比べると育児をめぐる環境も本当に変わってきましたよね。特に男親。
育児をする男性が身近になった
私が育休を取って「男子育休に入る」を連載していた2017年、男性育休取得率は3.16%でしたが、今年7月時点ではなんと12.65%。積水ハウスが9月に開催したオンラインフォーラムでは「業務のフローを変革する過程で、性別や職務の差がすでに消えており、男性の育児休暇を特別意識する必要がなく、当たり前なものになってきた」(サカタ製作所)という発言さえ出ていました。
保育園や児童館でお父さんを見かけるのは普通になり、男性トイレでおむつ交換台が使えるショッピングモールも増えました。ツイッターでは男親の目線から描かれた育児漫画や、夫婦で赤ちゃんのお世話にてんてこまいしている姿をよく見かけるようになりました。私の偏った観測範囲から見る限り、赤ちゃんを抱っこする男性が身近になったなあと感じています。
ただ一方、家事育児をしない男性というものへの風当たりは以前にも増して強くなったなとも感じます。最近象徴的だなと思えたのは、NHK NEWS WEBの記事「消せないメール」でした。
「いい夫」のプレッシャーが強い
家事と育児をあまりせずに仕事に打ち込んでいた男性記者が、子どもからのメールで妻の異変に気づき、時短勤務に切り替えたという内容です。記事には「よく書いてくれた」というポジティブコメントだけでなく「ひどすぎる」などネガティブコメントもついていました。
記者の方がしていたことがいいかどうかは、実際の状況がわからないので何とも言えません。ただ、読んでいて気になったのが「私はいい夫ではない」という言葉でした。
反省心をあらわすための自虐だろうと思いますが、記事の中に「家事の多くは妻が担っているし、保育園の送り迎えも妻が多い」とか「妻にとって不幸なことがあった。私の仕事の能力が決して高くなかったことだ」と書いていることで、「いい夫」という言葉にものすごい圧を感じます。
文脈上は「仕事ができて、定時で上がれて、家事も育児もできる夫」がいい夫の理想像になりそうですが、世の中そんなマッチョマンばかりではない気がします。肌感ですが、時間が足りず仕事も家事も育児も満足にできない中、夫婦でどうにかやりくりしているというのが、良くも悪くも普通なんじゃないかと思います。まったく自慢になりませんが、個人的には「んなこと言ったって時間がないんだからしょうがなかろう」ということで夫婦げんかになったことも一度や二度ではありません。
「いい夫」の定義はそれぞれだと思いますが、高い理想はプレッシャーになりえます。「いい妻」「いい母親」という言葉がプレッシャーになるのと同じように、理想と現実のかい離に苦しんで自分を責め、鬱々としてしまうということは男性にも起きうるんじゃないかと思います。というか、今になってようやく働く親の悩みが男女共通になったということかもしれませんが。
残業が過去の遺物になるんじゃないか
ただ、こうした働く親の悩み自体、いまが過渡期なのかもしれないとも感じます。
育児にしても家事にしても、問題の大部分は仕事にとられる時間の長さです。たとえば保育園に子どもを預けられる時間が8時から18時までで、通勤時間に1時間かかるとしたら、家事育児をしながらまともに働けるのは9時-17時、法定労働時間の8時間が上限ということになりますよね(まあそれでも朝晩に慌ただしく家事をしなければいけないんですが)。
そのとき管理職や非正規従業員を含めたすべてのスタッフが「会社のために使うのは8時間まで、あとの時間は自分のために使うんだ」と思っていれば、「みんなが残業している中、定時で上がってゴメン」という意味不明な罪悪感はなくなり、時短勤務や早退も調整しやすくなるはずです。
昔は「残業をなくすなんて無理でしょ、残業代も給料に含まれてるようなもんだし」と思ってましたが、いわゆる働き方改革の推進により、残業時間は確実に減っているようです。
求人プラットフォームのオープンワークが公開している「日本の残業 定点観測」によれば、日本の月間平均残業時間は5年前と比べてなんとほぼ半減しています。直近7〜9月で比べても約34時間から約24時間へと10時間近く減らしていました。
このままいけば、子どもたちが社会に出るころに残業というものは過去の遺物となり、そのぶん自分や家族、地域社会のために使う時間を増やそうぜという方向になっていくんじゃないかという気がします。そのときはまた別の「いい夫」「いい妻」像が出てくるのかもしれませんが。
10年後の親子像は想像もつかない
子どものころ、テレビドラマで「たまには父親らしいことをしないとな」というセリフで出てくるのはせいぜい子どもとキャッチボールをしたり、子どもの肩車をしている父親の姿でした。それがいまではベビーカーを押し、おむつを替え、ミルクを飲ませ、自分が寝そうになりながら子どもの背中をトントンやることが「父親らしいこと」のベースになりつつあります。
わずか4年でこれだけ変わっているわけですから、10年後、20年後の親子像がどうなっているのかなんて想像がつきません。子どもと同じくらい楽しみで、心配で、しっかり見守っていきたい気持ちです。とか、妙にかしこまったこと言ってしまうのもプレッシャーによるものですかね……。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。4歳児と0歳児の保護者です。Facebookでおたより募集中。
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