最大5472ポートのSCコネクタを収容、完全フロントアクセス/壁面設置可能など運用面での特徴も
コーニングの高密度光配線キャビネット、アット東京が国内初導入
2021年10月29日 07時00分更新
光ファイバケーブルなど光接続ソリューションを提供するコーニングインターナショナルは2021年10月28日、データセンター向け光配線盤「コーニングCentrix超高密度光配線キャビネット」がアット東京のデータセンターに国内で初めて導入されたことを発表した。完全フロントアクセス/薄型のキャビネットに最大5472ポートのSCコネクタを高密度収容するのが特徴。ケーブル挿抜作業を円滑化するためにSCコネクタを採用するなど、アット東京の求める運用要件に基づき大幅にカスタマイズしたという。
同日、アット東京中央データセンター(CC1)で行われた記者発表会には、コーニング、アット東京の両者が出席し、Corning Centrixの特徴や今回の要件、採用の経緯などを紹介した。
“超高密度”コーニングCentrixキャビネットの特徴
米国で1851年に設立されたコーニング(Corning)は、ガラスやセラミックの材料科学、および光学物性をコア技術とするグローバルメーカー。1970年から低損失光ファイバを、2004年からFTTH用光ファイバコネクタを手がけるなど、通信事業者や企業、無線ネットワーク向けに光接続ソリューションを提供するオプティカルコミュニケーション事業を1つの柱としている。
今回アット東京が導入したコーニングCentrix超高密度光配線キャビネットは、サーバールーム内で光ケーブルによる構内配線接続を行う光配線盤。幹線光ケーブルを引き込み、内部のカセット型パッチパネル内で分岐、SCポートを介してサーバーラックなどに延びる光ファイバコードやジャンパコードへと接続される。
幅1400×奥行450×高さ2200mmの薄型キャビネットには、最大5472ポート(最大456カセット)が収容可能。カセットを引き出すだけでジャンパコードを接続することができ、完全フロントアクセスによる作業効率の高さを特徴としている。
さらに、キャビネット内に多数のケーブル留め具が用意されており、大量のケーブルを整理/保持することによって、ケーブル同士の絡まりや干渉によるキンク(折れ、よれ、ねじれ)も防ぐという。
アット東京が示した50項目以上の要件に対応
コーニングインターナショナル 光通信事業部の興梠貴治氏によると、ベースとなるCorning Centrixはもともと北米や欧州など世界中で展開してきたソリューションだが、今回はそれをアット東京の要件に応じて大幅にカスタマイズした“日本向けソリューション”だと語る。「ここまでのカスタマイズ品はコーニングとしても初めて」(興梠氏)。
アット東京が提示した要件とは、たとえば「光ケーブルやジャンパコードをキャビネットの上下どちらからでも引き込めること」「12芯単位で作業ができること」「SCコネクタで2000芯(ポート)以上が収容できること」「なおかつ省スペースであること」など、50項目以上に及んだという。
アット東京 技術・サービス本部の出原達也氏は、データセンターにおける大容量通信/光配線ニーズの増加とともに収容スペースの効率化が課題となっており、昨年(2020年)4月ごろから新たな光配線キャビネットの検討を重ねてきたと説明する。よりサイズが小さく高密度収容に有利なLCコネクタやMPOコネクタではなく、SCコネクタを要件とした理由について次のように語る。
「ハイパースケーラーのデータセンターとは異なり、アット東京では顧客に対して光ケーブル1芯単位で『構内接続サービス』を提供しているため、コネクタの挿抜作業が多く発生する。そこで、工具なしでも挿抜ができるSCコネクタの採用にこだわった」(出原氏)
また光配線収容スペースの削減は、データセンター事業者として販売できるラックスペースの増加につながる。従来の光配線キャビネットはフロント/リアアクセス型で前背面に作業スペースが必要だったが、今回のコーニング製キャビネットは完全フロントアクセス型のため、従来デッドスペースだった壁面沿いにも設置可能となった。これにより、サーバールームのスペース利用を効率化できる。
なおアット東京によると、今回のコーニング製キャビネットは従来の光配線キャビネットと同等のスペースで約2倍の芯数が収容できる。
今回の超高密度キャビネットについて、コーニングの興梠氏はターゲットとするマーケットはデータセンター事業者、通信キャリア、ハイパースケーラーだと説明する。まずはアット東京を中心に展開を進めたいと語った。