もともとヒグチさんの描く文字のファンだったという西塚氏は、その文字の魅力について「日本人は英語のアートワークをかっこいいと思いがちだが、ヒグチさんの作品は日本語が入っていてもその世界感がまったく崩れることなく、作品と文字が一体となって独特の世界感を作り出している」と説明します。しかし、その「作品」をフォントにするためには様々な課題もありました。ひとつは「ヒグチさんの文字が持つ躍動感を、どうフォントに落とし込むか」ということ。正方形の中に文字を入れようとすると、躍動感がなくなってしまう。かといって日本語として縦書きもできるようにするには、枠に収めなければならない。一文字一文字、ヒゲの長さや位置を調整していったと言います。
もうひとつの課題は絵文字でした。どうすればヒグチさんの作品のような色鉛筆や水彩を使ったタッチが出せるのかや、正方形の枠に収まる絵文字をどう組み合わせれば、作品の中にあるような装飾を作り出せるのか、試行錯誤したそうです。
一方で、ヒグチさんの作品の世界感を、本当に汎用可能なフォントにしてしまって良いのかという葛藤もあったそう。その点はヒグチさんご本人にも確認したそうですが、すでに作風を真似た商品などはたくさんあるが、作品は唯一無二のものなので、それが凌駕されることはあり得ないということで、「ヒグミン」の製品化が決まりました。