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アリババクラウドが新AIサービス 商品の分類や切り抜き、車両の損傷識別を自動化

2021年10月13日 10時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2021年10月12日、アリババクラウド・ジャパンサービスは新しいAIサービスの拡充について記者発表会を開催した。最新GPUを搭載したインスタンスや分散学習に最適な独自のAIエンジンのほか、日本でニーズの高いECでの商品分類や車両の外見損傷識別、プライバシー保護を実現するAIサービスをリリースした。

AIソリューションで日本企業のDXを支援

 冒頭、登壇したカントリーマネージャーのユニーク・ソン氏は、日本の顧客やパートナーに対して謝辞を述べた後、日本に提供できる価値として「ワールドクラスのクラウドプロバイダーという選択肢」「最高のコストパフォーマンス」「(アリババグループの研究開発期間である)DAMOアカデミーの持つ最先端の技術」「アリババグループとの架け橋」という4つをアピールした。

アリババクラウド・ジャパンサービス カントリーマネージャーのユニーク・ソン氏

 アリババクラウドは2017年に日本進出して以来、さまざまな実績を積んできたという。ゲーム企業をサポートする「Japan SME Gaming Support」やアジアのスタートアップを支援する「Project AsiaForward」、日本のスタートアップを支援する「AGT(Acceralation Growth Together」などを展開。毎年3桁成長を続けており、ユニーク氏は「今後も日本への投資を続け、強化していく」と明言した。

 昨今、日本では多くの企業がDXを進めているが、アリババクラウドもさまざまなDXソリューションを提供している。特に注力しているのがAIの分野。画像識別ソリューションではアリババグループが所有する20億枚の画像を学習し、膨大な画像の中から瞬時に目的の画像を検索できる。また、AIを用いたCTスキャンでは、新型コロナウイルスの感染兆候をわずか1分以内に分析できるという。今回の新サービスの発表も、日本でのAI需要の高まりを受けたものだ。

NVIDIA A100搭載インスタンスや分散型のクラウドAIエンジン「AIACC」

 具体的なサービスについては、シニアソリューションアーキテクトのジャ・ジーシン氏が説明した。

 まず機械学習の推論・学習、HPC、グラフィックス仮想化などに利用できるGPUアクセラレーテッドインスタンスを投入。最新のNVIDIA A100、A10、人気の高いT4シリーズを含む最新のNVIDIA GPUが搭載されている。NVIDIA A100を搭載するgn7シリーズでは、最大8基のGPUをNVLINKスイッチで同時接続し、高いパフォーマンスを誇る。

A100を搭載したGPUインスタンス

 また、大規模分散型のディープラーニングを実現する独自のクラウドAIエンジン「Apsara AI Acceleration(AIACC)」では、既存の学習環境を維持したまま、AIACCパッケージと数行のコード変更で、分散学習における学習や推論の効率をアップ。学習の性能はHorovodに比べて20%から数倍の改善、推論の性能も数倍以上改善されるという。

 実際、スタンフォード大学で実施される分散深層学習の世界的ベンチマークであるDAWN Benchでは2020年にトップランク成果を達成。学習・推論において高い性能が実証されたのみならず、コストも最安になったという。

 また、ジャ氏が作成したレントゲン画像からコロナウイルスの感染兆候を診断するプログラムでの学習を調べても、AIACCによって学習速度が約70%の向上が見られたという(GitHubで公開済み)。

ECの商品登録や車両の外見損傷識別をAIで自動化

 APIでAI機能を呼び出すタイプのコンピュータービジョンサービス「Vision AI Services」も強化された。

 「EC商品識別AI」は、画像認識を中心にしたECビジネス向けの包括的なAI支援ソリューション。たとえば、画像の商品を自動的に識別し、1万以上の商品カテゴリに分類。「衣類>女性服>ワンピース」といったカテゴリの階層も自動的に作成できるという。また、画像に対して8000点以上の商品属性から自動タグ付けを行なったり、検索可能な商品キーワードも自動作成してくれる。数千、数万の商品に対するタグ登録も数分で完了し、商品登録を圧倒的に省力化してくれる。

商品の自動分類 カテゴリの階層化も可能

 さらに画像の商品を背景から切り取るいわゆる「セグメンテーション」の機能も利用できる。複数のオブジェクトが存在するような複雑な画像でも、主体を自動検知し、商品だけを正確に切り取ることが可能になっている。

画像のセグメンテーション機能

 「車両外見損傷識別AI」は文字通り画像から車両の外見損傷を特定し、ダメージのカテゴリや損傷部位、損傷の具合をAIが自動判定してくれるというもの。ヘッドライト、ウイング、バンパー、サイドミラーなど15種類以上の損傷部位、スクラッチ、テント(へこみ)、デフォメーション(変形)、ガラス破損、ひび割れ、亀裂など30以上の損失タイプを自動的に識別するという。

 「車両プライバシー保護AI」は画像内の車両の背景やナンバープレートにぼかしをかける機能で、個人のプライバシーを保護する。日本のニーズを受けて投入されたAI機能で、国土交通省の道路運送車両法規定にあるナンバープレートに対応しているという。

車両の外見から損傷を識別するAI

車両の画像からプライバシーにあたる情報をマスクする

 アリババクラウドでは、こうしたAIソリューションを15カテゴリ、200以上も用意した「Vision APIプラットフォーム」を用意しており、年間固定料金で利用できる。SDKも豊富で、日本のアリババクラウドからのサポートも受けられるという。

 さらにAIの開発や運用をKubernetes上で実現するための「Cloud Native AI Suite」も提供される。GPUの仮想化による動的なスケールイン・スケールアウトのほか、AIダッシュボードやCLIツール「Arena」による一括管理、データ仮想化技術「Fluid」によるアクセス速度の向上などを実現する。「KubeFlow」によるコンテナをベースとした機械学習処理のパイプライン構築、ワークフロー制御、モデルデプロイ、推論の負荷分散まで可能。ダッシュボードによる可視化も可能で、エンドツーエンドでのMLOpsが実現するという。

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