昔はノーヘルでした
ワタシが初めて取った運転免許は原付免許。高校生の時でした。バイク=危険、バイク=暴走族というイメージから、高校生をバイクから遠ざけるための「免許を取らせない」「運転させない」「買わせない」という「三ない運動」が盛んだった頃で、学校にバレると即停学とか、卒業まで学校が免許を預かるとか、そんな感じだったようです。
なんで「ようです」なんていう伝聞口調なのかというと、実はウチの学校はそういうのが無かったんですよね。バイク通学は禁止でしたけど、学校外で乗る分にはなんのお咎めもなくて。別の高校に行った友達もみんなそうだったんで、東京は緩かったのもしれません。
緩いと言えば法律も今より緩めで、当時、原付はヘルメットの着用義務がありませんでした。ノーヘルが当たり前だったので、最初に買ったスクーターにはヘルメットの収納スペースどころかヘルメットホルダーも付いてなくて。
でもワタシはバイクと一緒にヘルメットも買いました。転んでケガをするのは自分ですからね。万が一ってことがありますし。
ヘルメット、いきなり役に立つ
バイクを買って間も無く、友達5、6人と近所の駐車場で自慢の愛車を見せ合うお披露目会をすることになりました。入口に近づくともうみんなが集まっているのが見えます。そんな注目を浴びること間違いなしのシチュエーションを前にしたら、カッコつけたくなるじゃないですか。そういう年頃ですし。
リアブレーキをギュッと握ってテールをザーッとスライドさせ、片足を出す。ザッと止まる。脳内に描いた自分の姿は完璧です。アスファルトでは難しいかもしれませんが、そこの駐車場はいい感じに滑りやすい砂利なので、うまくいく気しかしません。
でもそこでひとつ誤算だったのは、タイヤも滑りやすいけど、靴も滑りやすいということ。スライドさせて脚を出したまではよかったんですが、普通のスニーカーでは耐えきれず、接地感のないままズルッと滑って地味にコケてしまいました。カッコ悪いこと、この上ありません。大失敗の苦い思い出です。そしていきなり万が一が到来し、ヘルメットが役に立ってしまいました。
海兵隊払い下げのヘルメットを購入
そんな原付のヘルメット着用が義務化されたのは1986年。すべてのオートバイに、すべての道路でヘルメットの着用が義務化されました。ウチの中古モトコンポが販売されたのは1981年から1985年までなのでノーヘル時代のバイクですが、もちろん今では乗るのにヘルメットが必要です。
まぁでも大丈夫。以前GSX400S刀に乗っていた時に使っていたSUOMYのヘルメットがあるし……と安心していたんですけど、いざ引っ張り出してみたら内装のスポンジが劣化してボロボロでした。粉になって落ちてくるほどで、まったく使い物になりません。
で、何かいいヘルメットはないかと探していたところ、eBayでよさげな一品を発見。米海兵隊払い下げのモーターサイクル用ヘルメット。ミリタリーテイストを目指しているウチのモトコンポには最適です。即ポチり。
海兵隊が使っているM1030というオートバイのメーカーであるHayes Diversified Technologiesの製品で、外箱はボロいし、箱と擦れてできたような跡がありますが、未使用新品とのこと。確かに内装はピカピカだし、何の匂いも付いていませんでした。外側はどうせ傷が付いたりするので気にしません。
市販ヘルメットがベース
Hayes社がオートバイのメーカーと言っても、M1030はカワサキのKLR650をベースにしているのでHayes社がイチから作っているわけではありません。でもすごい点がひとつあって、それはエンジン。なんとディーゼルなのです。KLRはもちろんガソリンエンジンですから、まったく異なります。
ハンヴィーと同じく、燃料統一のためにJP8をはじめとするジェット燃料が使えるディーゼルを採用したんですけど、何とも変わり種なバイクですよね。
で、ヘルメットの方はというと、これもHayes社がイチから作っているのではなく、Winex HelmetsというメーカーのSRXという市販モデルがベースになっています。ただこっちはバイクと違って見た目も内装も違いはなさそうだし、軍のラベルも見当たらないので、外側を艶消しグリーンに塗ってるだけなんじゃないかと思います。
米軍のヘルメットは内側にラベルが貼られていることが多いんですけど、あちこちめくってみてもやっぱり見つかりませんでした。ベースのヘルメットのままみたいです。
オフロード用はカッコいい
M1030がオフロードバイクなのでヘルメットも完璧オフロードスタイル。シールドは付いてないし、そもそも取り付け部もないので、ゴーグル必須な感じです。
オフロード用のヘルメットってアゴが尖ってるのが多いですけど、何でなんですかね? 内側にぶつけないようにとか、このぐらい余裕がないとゴーグルを付けにくいとかなのかな。かぶってみると普通のフルフェイスより口のところが広いぶん、窮屈な感じが緩和されて、自分的にはお気に入りです。
バイザーの中央は前後に2cmぐらいスライドできるようになっていて、出っ張り具合を調節できるようになっていました。オフロードだと木の枝を避けるのにいいのかな。あんまり出過ぎても邪魔になりそうですよね。
バイザーで隠れていて気づかなかったんですけど、バイザーの下にベンチレーションのスライドが付いていました。開けると少し涼しいはず。
色と形が相まって、ミリタリーな雰囲気抜群です。モトコンポの色に合わせてタンに塗ろうかとも思ったけど、せっかくオリジナルの塗装なのでこれはいじらない方がいいかな。
サイズはMとLがあったのでLにしました。頭の周囲は57cmぐらいなので日本製のヘルメットならMなんですけど、欧米人って頭の前後が長いから同じ外周サイズでもMだと左右がキツかったりするんですよね。耳やこめかみの上あたりを締め付けられたりして。ひと回り大きいLにしたらサイズ感ピッタリでした。
スネル規格とDOTに合格
ヘルメットの安全基準はいろいろあるんですが、このヘルメットはスネル(SNELL)規格とDOTの承認を得ています。スネル規格はスネル財団という非営利団体が定めているもので、民間の規格ですが「世界でもっとも厳しい」とされる基準です。
スネルは人名で、アマチュアレースのドライバーだったウィリアム・“ピート”・スネル氏から名付けられています。
スネル氏はレース中に事故にあい、ヘルメットが割れて頭部外傷により亡くなってしまいました。その事故を悔やんだ友人たちがヘルメットの安全性を高めるためにスネル記念財団(現スネル財団)を設立し、定めたのがスネル規格。設立は1957年のことなので、もう60年以上にわたって研究や開発、テスト、安全教育を続けています。
スネル規格は少なくとも5年ごとに更新され、最新は昨年のM2020DとM2020R。Dは強度、Rは衝撃回避・吸収に重点を置いた規格になっています。
DOTはDepartment Of Transportationの略で、アメリカ合衆国運輸省のこと。国が制定した規格です。アメリカではDOTマークが付いていないと販売できないそうですが、基準の厳しさはスネルが格段に上らしいです。
払い下げ品といえばNSN
見た目は色以外普通のヘルメットですが、米軍払い下げ品なのでいつものように米国国防総省の物品管理番号NSN(National Stock Number)が割り当てられています。
NSNなどのデータは製品にラベルが貼られていたり直接書かれていたりすることが多いんですけど、このヘルメットはどうやら外箱に貼られているだけのようです。ハンヴィーの部品なんかもそうなので、バイクの備品だからかもしれません。
NSNは1765-88-050-0005。メーカーとパーツ番号を示すMFR/PN(Manufacturer)は17654-7822で、17654はHayes Diversified Technologies Inc.のCAGE(Commercial And Government Entity)コード、7822がこのヘルメットに割り当てられたPN(Parts Number)です。
正式な名称は「HELMET, LARGE, MOTORCYCLE」。M67854-02-F-3071はコントラクトナンバー。DLA(Defense Logistics Agencyーー米国防兵站局)の契約番号です。HAYES社はカリフォルニア州へスペリアにあるようですが、ヘルメット自体はMade in Koreaでした。
ちなみにMサイズのモデルは「HELMET, MEDIUM, MOTORCYCLE」と名称が異なるので、NSNやパーツ番号も変わってきます。NSNは1765-88-050-0004、パーツ番号は7820。不思議なことにNSNは1つ違いなのにパーツ番号は2つ違っています。NSNはどんどん詰めて割り振っちゃうけど、パーツ番号はM/LみたいにMとLの中間サイズができたりした時のために空けてあるのかもしれませんね。
ゴーグルが欲しくなりました
それにしても海兵隊の写真や動画を見てもみんなゴーグルをしてるし、ゴーグルがないと目がショボショボになっちゃいますよね。
ゴーグルのベルトがズレないようになってるみたいだし、やっぱりゴーグルを使うのが前提ですよね。欲しくなっちゃうなあ(フラグ)。
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