業界人の《ことば》から 第451回
スタバ1杯と同等料金で毎日、家の苦労を解決するYohana Membership
松岡陽子氏「10年後も、AIがすべてを解決する環境にはならない」
2021年09月20日 09時00分更新
今回のことば
「AIスピーカーは、音楽をかけてくれたり、アラームをかけてくれたりするが、毎日の苦労を解決してはくれない。それは、AIがテクノロジーとして、そこまで届いていないからである。10年後も、AIがすべてを解決する環境にはならない」
Google Nestにも携わった松岡氏
パナソニックの子会社であるYohana. LLCが、「Yohana Membership」という新たなサービスを開始した。
Yohana. LLCは、2019年10月にパナソニック入りし、現在、常務執行役員 くらし事業戦略本部長を務めている松岡陽子氏が、創業者兼CEOを兼務して設立。同社が展開する新サービスについても、松岡氏が陣頭指揮を執ることになる。
1971年生まれの松岡氏は、中学校までは日本で育ち、その後、米国に渡った。渡米した理由は、テニスプレーヤーになるためだったが、相次ぐ怪我によってその夢を断念。得意な数学や科学の道に進むことを決断し、一緒にテニスができるロボットの開発を、新たな夢に掲げ、様々な人たちを助けることができるロボットやウェアラブルデバイス、AIなどの開発、活用に挑んできた。
愛称はYoky(ヨーキー)。カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)科学学士号を取得、マサチューセッツ工科大学(MIT)では電気工学とコンピュータサイエンスの博士号をそれぞれ取得。1998~2000年まではハーバード大学工学・応用科学部で博士研究員、2001~2006年まではカーネギー・メロン大学教授、2006~2011年まではワシントン大学教授を務め、ロボットによる人体および脳のリヒバリ機器の開発などに携わった。
教授を務めている期間中には、感覚運動神経工学センター(Center for Sensorimotor Neural Engineering)と、ニューロボティクス研究所(Neurobotics Laboratory)を設立し、人間の身体の感覚および運動能力を回復させるデバイスの開発を指揮。ロボット工学と神経科学における研究成果が認められ、天才賞と呼ばれるマッカーサー賞を受賞した経歴を持つ。この賞で得た助成金を元手にして、身体面および学習面の課題を抱える子どもたちのために、読字に関する障害を取り除き、すべての子どもの潜在力を解き放つことを追求するヨーキーワークス財団(YokyWorks Foundation)を立ち上げている。
一方、産業界においては、未来に向けた技術を開発するGoogle Xのイノベーション責任者兼共同創業者であったほか、スマートサーモスタットをはじめとして、家庭内で利用するIoTデバイスを世の中に送り出したNestの最高技術責任者(CTO)を務め、アップルの経営幹部や、ウェアラブルヘルステクノロジーのベンチャー企業であるQuanttus(カンタス)の最高経営責任者(CEO)などを歴任。Googleヘルスケア部門の副社長を経て、2019年にフェローとしてパナソニックに入社した。最近までは、米ヒューレット・パッカードのボードメンバーも兼務で務めていた。
松岡氏は、「ロボットやハードウェア、AIを使いながら、人を助け、生活を豊かにするためのモノづくりをしてきた。Yohanaは、働く親とその家族が、家族全員の幸せを最優先し、お互いと向き合う時間を大切にするためのサポートに特化した、新しいウェルネス企業である」とする。
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