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「男性育休フォーラム2021」をオンライン開催

積水ハウスが「男性の育休」テーマにした大規模調査、見えてきた課題とは

2021年09月22日 12時00分更新

文● 貝塚/ASCII

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パネルディスカッションの模様。左から、パネリストを務めたジャーナリストで東工大准教授の治部 れんげ氏、日本ユニシス 代表取締役社長 CEO・CHO の平岡 昭良氏、積水ハウス 代表取締役社長 執行役員 兼 CEOの仲井 嘉浩氏、フローレンスの代表室長 前田 晃平氏。サカタ製作所 代表取締役社長の坂田 匠氏はリモートで参加した

育児休暇を推奨している企業は、どんな取り組みをしている?

 育児休暇を推奨している企業は、どのような取り組みをしているのだろうか。パネルディスカッションの中から抜粋して紹介しよう。

 フォーラムを主催した積水ハウスでは、前述の内容に加えて、今年の4月から、産後8週までの期間は、状況に合わせて1日単位でも休暇を取得できるようにしている(性別不問/分割回数不問)。手続きに関しては、家族のミーティングシートと取得計画書を用意し、これを提出することで、休暇の取得ができるようにした。

 B to Bでビジネスに関連するソリューションを提供する日本ユニシスは、1993年の4月から2歳未満の子を持つ社員を対象とした育児休暇制度を運用しており、平均取得日数は99日という。取得率は26.7%で、代表取締役社長の平岡 昭良氏は「もっともっと上げていきたい」が、「平均取得日数にこだわってきた」と話す。その理由について、「フレックスタイム、短時間勤務、勤務時間中の中抜けといった、会社が用意している多用な制度を、社員それぞれのライフプランに応じて利用してほしい」と語ったほか、「会社から離れた子育てや、家事などに関わることで、さまざまな社会課題に触れ、それの解決に向かうことも、テクノロジーの可能性を引き出し、持続可能な社会を作っていくという日本ユニシスのパーパスを達成していくことにつながる」と、育児休暇の取得が、企業全体の方針にも寄与することに触れた。

 長期の育児休暇を取得する場合、多くの人が心配を覚えるのは、復職後の業務ではないだろうか。同社は、復職時の社員の安心感にも配慮している。キャリアプランについて事前に上司と相談できる制度を設けているほか、夫婦参加型のワークショップを開催しており、会社を含めた3者で、育児休暇を取得する社員のキャリアプランを相談することができる。さらに、「パパネット」という社内SNSを運用。子を持つ親同士が部署や年齢をまたいで交流できるだけでなく、育休中も社員とのコミュニケーションを絶やさないことで、安心して復職できる環境を作っているようだ。

 新潟で金属製の屋根用金物を製造しているサカタ製作所では、2015年の1月から、2歳未満の子を持つ社員を対象とした育児休暇制度を運用している。

 同社では、収入の減少を心配する社員をフォローするため、育児休暇を取得する社員の収入のシミュレーションをする機会を設けている。育児休暇を取得するタイミングによって、収入の減少の幅に差が出るため、最適なタイミングのアドバイスをすることもできるのだという。

 また、同社の代表取締役社長 坂田 匠氏は、「男性が育児休暇を取得することに関しても、強く推奨するメッセージを全社に向けて発信している」と話すが、同時に「当たり前になっているので、男性が育児休暇を取ることを褒めるということもない」と、同社の方針にも触れた。

 この理由について、「残業を無くす取り組みの中で、業務の属人化を解消したために、特定の人が業務を休むことで問題が発生することがなくなっており、男性が育児休暇を取得することも当たり前になっている」と話す。

 つまり、働き方改革にまつわる取り組みによって、男性が育児休暇を取得することに関するハードルが、そもそも消えていたために、男性の育児休暇を推奨するにあたって、殊更に新しい方針を打ち出す必要がなかったということになる。

いずれの企業も、育児休暇が取りやすい仕組みを導入していたり、復職後を見据えたフォロー体制を築いている

 認定NPO法人として「訪問型病児保育」「障害児保育」「小規模保育」などを提供しているフローレンスの代表室長 前田 晃平氏は、2022年の4月から施工される予定の育児・介護休業の法改正について、「私自身も、昭和時代の生まれで、『24時間働けますか?』という会社で仕事をしたこともある。組織の中で一生懸命働いている人は、昇進もしたいし、会社からの期待に応えたいという気持ちを持っている。組織の倫理や規範から外れることで、収入が減少したり、結果的に家族に迷惑をかけることを恐れている」と、これまでの育児休暇にまつわる事情に触れた。

 その上で、「これまでの社会や政治からのアプローチは、『育児休暇を取りやすくする』意味合いが大きかったが、企業から、個人に育児休暇の取得を推奨するアプローチができるようになったのが大きなポイント」と、法改正のメリットを述べた。

 男性育休フォーラム2021は、私自身にとっても、育児休暇に関する考え方を改めるきっかけとなった。私にとって印象的だったのは、「業務のフローを変革する過程で、性別や職務の差がすでに消えており、“男性の”育児休暇を特別意識する必要がなく、当たり前なものになっていた」というサカタ製作所のケースだ。

 業種や職種、企業の規模によっても、この体制を実現するハードルの高さは大きく変わってくると思う。だが、そもそも“男性の育児休暇”と性別を強調してこのテーマが語られる理由は、「育児をするのは女性」という意識が、これまでの社会に根付いていたからに他ならない。「性別に関わらず、誰もが自分の子育てに参画する」という意識が強ければ、“男性の”という枕詞も必要ないはずだからだ。その意味で、サカタ製作所のケースは真のダイバーシティーを実現しているひとつの例と言えるのではないだろうか。

 男性育休白書 2021 特別編は、積水ハウスの公式サイトで誰もが閲覧できる。9月19日は、家族で育休について話し合ってみてはいかがだろう?

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