本記事はソラコムが提供する「SORACOM公式ブログ」に掲載された「ソラコム主催「ラズパイコンテスト」結果発表! 」を再編集したものです。
こんにちは、ソラコムのテクノロジー・エバンジェリスト 松下(ニックネーム:Max)です。
ここでは、2021年4月~5月に開催した「ラズパイコンテスト」の結果をお知らせします。数多くの作品をお寄せいただき、まず感謝したいと思います。ありがとうございます!
それではコンテストの概要と共に、各賞の発表と進んでいきたいと思います。
ソラコム主催「ラズパイコンテスト〜IoTで業務改善、ライフハックを始めよう〜」とは?
Raspberry Pi(通称: ラズパイ)はセンサーと接続できる小型のコンピューターで、個人の電子工作からビジネスにまで幅広く利用されています。通信機能を内蔵していることから、センサーとクラウドをつなげる「IoT デバイス」としても用いられ、IoTプラットフォームSORACOMとの組み合わせ例を「IoTレシピ」として紹介することも多くあります。
そのラズパイとIoTプラットフォーム「SORACOM」を使い、「生活を便利に」「業務を改善」する仕組みを作り、その手順について書いたブログの中から、優秀な作品を作られた方に賞品をお送りするコンテストです。
2021年4月~5月のおよそ1.5ヵ月間で、Raspberry PiとSORACOMを使い、テーマに沿ったIoTシステムの作成と、その様子をブログ記事として公開いただいた後に、作品として応募いただきました。コンテストの詳細は、こちらブログをご覧ください。
スポンサーにはメカトラックス株式会社、株式会社ケイエスワイ、特別協力には日本ラズベリーパイユーザーズグループが、そしてメディアスポンサーにはQiita(Increments株式会社)、fabcross(株式会社メイテック)のご協力をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
それでは気になる結果発表です!
「ソラコム賞」受賞作品
ソラコムが選んだ作品は、Qiita ID “@akahira” 様による、ラズパイとSORACOMで子豚の出産通知を作ってみたです!
子豚の出産の時期になると出産時の事故を防ぐために夜中に起きて確認が必要な場合もあるらしく、とても大変であるという話を聞いたので、ラズパイとSORACOMを使って子豚の定期チェックと出産通知を行なうシステムを作ってみました
畜産農家の切実な悩みをラズパイ、そしてAIを活用したIoTで挑んだ様子が描かれています。特に工夫されている点が「設置」や「撮影位置の目安として作った矩形線」など、現場ならではのノウハウもありました。
カメラによる物体認識はAIや機械学習でも良く話題となりますが、豚の飼育場所である豚舎のようにネットワークの準備が困難な場所において、SORACOMを活用することで「物体認識 × 通知」という実用的なIoTシステムになったことが最大の評価となりました。
以下、選考メンバーからのコメントをご紹介します。
豚の出産を通知するという、これまで人が寝ないで確認していたであろう作業を、技術でカバーする試みがとても良い内容だと感じました。カメラで撮影した画像に、日時や温湿度を文字で入れるといった、実際の利用者シーンが考慮されてるのも素晴らしいと思います。豚舎というWi-Fi環境がない場所で、SORACOMを使う理由に納得感がありました。今回は子豚の確認となりましたが、同様に解決できそうなことがありそうです。
プログラムを書かずに画像のみで機械学習ができるLobeの具体的な活用方法と、温湿度や時刻といった付随情報を画像に書いてしまうという発想と実装のロジックが面白くて実用的です。カメラは設置や位置調整が重要と聞いてはいましたが、その様子を共有いただけたのは大きかったです。また、データ保存先にGoogle Driveを、そして通知にはLINEと、管理そして利用者の負担を減らしているのも、システムの継続性として非常にポイントが高かったです。
Qiita ID “@akahira” 様には、ソラコムより「Fitbit Charge4 GPS搭載フィットネストラッカー」をお贈りします。豚はカメラで、ご自身はスマートウォッチで健やかな生活を送っていただければと思います。受賞おめでとうございます!
「メカトラックス賞」受賞作品
メカトラックス株式会社は、福岡を拠点とするラズパイ周辺機器の開発を行なっている会社です。ラズパイに3G/LTEといった通信機能を付加できる拡張ボードや、間欠動作による低消費電力化など、ラズパイをIoTで活用するプロと言えるでしょう。また、IoTのプロが集まるパートナープログラム「SORACOM パートナースペース」の認定済みパートナーでもあり、IoTのビジネス活用を推進しています(メカトラックス社 SPS認定済みパートナーページ)。
そんなメカトラックスが選んだ賞は 池田 大 様(Qiita ID “@daikunjp”)による、SORACOMとラズパイで郵便受けの中身を確認できるようにするです!
こちらの作品でもカメラを利用しています。定期的な画像撮影とそのアップロードに徹することでシンプルな構成に仕上げています。カメラで課題となる光量も、LEDライトを併用することで解決しています。
メカトラックス様からのコメントをご紹介いたします。
電源まわりはIoTのシステムを検討する際に後回しになりがちですが、間欠動作を工夫して実装し消費電力を削減されていて素晴らしいです。極端な話、SORACOM使えば通信とクラウド周りはかなり柔軟に対応できますが、物理的な制約が多いハードウエアをどう実装していくかは今後も重要課題と考えています。本ブログでは不採用でしたが(涙)、賞品のslee-Pi3も触っていただき、IoTハードウエアに対する弊社の設計思想なども共有いただけると嬉しいです。受賞おめでとうございます。
ソラコムの選考メンバーからのコメントを抜粋でご紹介します。
― ポストへの投函状況を可視化するアイディアはいくつかありますが、カメラを利用することでどのような郵便物が届いているかも見ることができるところに新しさを感じました。
― SORACOMの通信(データ通信サービス SORACOM Air)だけではなく、可視化の部分にSORACOM Harvest FilesやLagoonと複数のサービスを使い、クラウドの準備の手間を減らしている点が、始めやすさにつながっていると思いました。
― 照明として使っているLEDライトが、モバイルバッテリーの自動電源OFFを回避する役割も担っているとは、非常に面白い発想です。
池田様には、メカトラックスよりラズベリーパイ用電源管理/死活監視モジュール「slee-Pi3」をお贈りします。電源管理の部分はぜひslee-Pi3で、というメカトラックス様からの熱いメッセージとして、ご活用ください。受賞おめでとうございます!
「ケイエスワイ賞」受賞作品
株式会社ケイエスワイは電子部品の総合商社として “Raspberry Pi Shop” を運営されている会社です。ラズパイをお使いの方であればお世話になったこともあるのではないでしょうか。
そんなケイエスワイが選んだ賞は Qiita ID “@jasbulilit” 様による、Raspberry PiとSORACOMで娘のお迎えを効率化!お迎え予告システムを作ってみたです!
SORACOM LTE-M ButtonというIoTボタンを活用しています。私は最初「お子様にボタンを持たせて、必要時にボタンで呼び出してもらう」ものだと思っていたのですが、なんと発想が逆だったんですね!
お子様側に「そろそろ迎えに行くよ」というのをLEDでお知らせする仕組みとなっています。IoTボタンで遠隔地のLEDを点灯させるという、応用が利きそうなIoTシステムとなりました。
ケイエスワイ様からのコメントを紹介いたします。
昨今共働きの家庭が多い中、日常の一コマではありますが、どこのご家庭でも悩みの種になりうるポイント。今回のテーマ「普段の生活を豊かに」にもマッチしたアイデアだったことも選定の決め手となりました。ボタンを一押しするだけという手軽さや、お子さんが触れることから壊れにくさへの配慮がある点、実際に使用して改善に繋がっていることも選定理由の一つです。小型化に向けてzeroでの改良を検討しておられるとのこと、今後も楽しみにしています。
ソラコムの選考メンバーからのコメントを抜粋でご紹介します。
― 実際に作った作品を、お子さんが学童に持っていききちんと実証実験をして、お子さんからのフィードバック(小さめのサイズを希望する)を受けるなど、実際のユースケースがイメージできました。
― 学童という場所では通信環境が無い、もしくはお子さんが通信設定するには難しい場合がある中でSORACOMを使う理由がとても明確でした。
― クラウド側の構成において、ボタンからのデータ伝達用として「クラウドアダプタ ― SORACOM Funnel」を、そしてLED制御を担うラズパイへのプッシュ送信をAWS IoT Coreというゲートウェイサービスと「データ転送 ― SORACOM Beam」によるMQTT通信の組み合わせで実現しているのは、各サービスの特性を100%活かせていると感じました。
Qiita ID “@jasbulilit” 様には、ケイエスワイよりMEMSレーザー プロジェクター モジュール for Piをお贈りします。消費電力は高くなってしまうと思いますが、通知の部分でLEDよりも表現力の高いモジュールを使ってみるのもいかがでしょうか?
受賞おめでとうございます!
「日本ラズベリーパイユーザーズグループ賞」受賞作品
日本ラズベリーパイユーザーズグループは、小型PCボード「Raspberry Pi」を皆で触り、その知見を共有してラズパイの発展を支えていくことを目的とした団体です。英国にあるラズパイの開発元と密に連携して、日本の活動をグローバルに広げています。
そんな日本ラズベリーパイユーザーズグループが選んだ賞は山下 雅稔 様(Qiita ID “@moburo”)による、【工事無し】簡単にICカードでスマートロックを作るです!
スマートロックと言えば、例えば既存の扉に後付けして鍵のノブ部分を回転させるといった製品を思い浮かべます。この作品は「鍵自体を共有する仕組み」をラズパイで実現しています。暗証番号を入力することで開くキーボックスのスマート化ということですね。
日本ラズベリーパイユーザーズグループ様からのコメントを紹介いたします。
ローコストで “鍵管理” という目的を達成できているのはポイントが高いと感じています。今後の課題は、記事内でも言及されていますが、物理的破壊をへの対策でしょう。3Dプリンタにてケースを作られていますが、Fusion360の元ファイルがあると、嬉しい方がいるのかもしれませんね。
ソラコムの選考メンバーからのコメントを抜粋でご紹介します。
― (動画を見た後の感想として) これ欲しいですね!暗証番号をわざわざ覚えなくて良いため「鍵の共有」がスマートに実現できています。
― カードリーダーとラズパイの組み合わせという可能性を感じました。人間の記憶に頼らない仕組みづくりに応用できそうです。
山下様には、日本ラズベリーパイユーザーズグループよりRaspberryPi 他詰め合わせをお贈りします。受賞おめでとうございます!
さいごに
ラズパイはセンサーの情報をクラウドに集約するための「デジタル化」を簡単に実現できます。加えて、受賞となったスマートロック作品のモーターのように、現場を動かすこともできます。そこに「どこでもつながる通信」が組み合わせることで、あらゆる場所のデジタル化と現場を動かすプロダクトを作ることができるんだなと、これらの作品の中から感じていただけると嬉しく思います。
およそ1.5ヵ月という期間で数多くの、そして販売できるんじゃないか?と思えるほどの品質の作品が集まるとは、嬉しい限りです。本当にありがとうございました!
そして、今回の発表に刺激された方に朗報です。ラズパイマガジン/日経Linux/日経ソフトウエア主催の「みんなのラズパイコンテスト2021」が開催されており、今回はIoT賞が新設されているとのこと!
みんなのラズパイコンテスト |ラズパイマガジン、日経Linux、日経ソフトウエア 主催
「みんなのラズパイコンテスト」は、小型PCボードのラズパイ(Raspberry Pi)を使った作品やアイデアを募るコンテストです。Raspberry Piを利用した電子工作、アプリ、ケースなどのハードウエア/周辺機器などを対象にしています。
応募締め切りは2021年10月7日です。ソラコムも協賛していまして、コンテストの環境構築支援としてIoT SIMカードとUSBドングル型モデムの無償提供をしています。詳しくはみんなのラズパイコンテスト2021のページをご覧ください。ご応募お待ちしています!
IoTで必要なデバイスが1つから購入できるSORACOM IoTストアでは、ラズパイがセットになったIoT体験キット(簡易監視カメラキットや距離測定センサー)を提供しているほか、IoTで解決したい事から始められる「IoTレシピ」も無償で公開しています。皆さんのIoT体験に、そしてIoTシステム開発の土台としてご活用ください!
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