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ネットワークカメラのハードウェア技術、画像解析のソフトウェア技術の両面で高い検知能力を実現

パナソニック、画像センシングソリューションの強みをアピール

2021年07月13日 11時30分更新

文● 指田昌夫 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 パナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)は7月8日、都内で「画像センシング技術」についての報道関係者向け技術セミナーを開催した。ハードウェア(ネットワークカメラ)とソフトウェア(画像解析)の両面で高い実績やノウハウを持つ同社の、画像センシング技術の強みをアピールした。

会場で披露された「物体認識」のデモでは、パン/チルト/ズーム制御に対応した同社製ネットワークカメラが使用された

パナソニック システムソリューションズ ジャパン 執行役員 パブリックシステム事業本部 システム開発本部 スマートセンシング事業センター センター長の新妻孝文氏、同 スマートセンシング事業センター センシングソリューション部 部長兼サブジェクトエキスパートの半野修氏

人の流れや危険な動作を自動検知

 同社は1957年に監視カメラを開発し、以来60年以上にわたってオフィスや倉庫、交通機関などの監視で多くの実績を持つ。2005年には同市場で世界シェア1位を獲得しており、現在は屋内、屋外問わず豊富な製品ラインアップを展開している。

 一方で画像センシング技術は1981年から研究開発をスタートしており、こちらも40年以上の長い実績を持つ。車のナンバープレート検知や交通事故検知、混雑状況の把握や電車ホームからの人の落下検知など、物体や人間の「状態」や「動き」を検知する技術を高度化してきた。

 本セミナーでは、パブリックシステム事業本部 システム開発本部 スマートセンシング事業センター センシングソリューション部長 兼 サブジェクトエキスパートの半野修氏が、最新の画像センシング技術の例として、「人密集度可視化/人流可視化」「危険検知」「物体認識」の3つを紹介した。

 公共施設やイベントなどで、特定の場所にいる人の数をカウントする「人密集度可視化/人流可視化」の技術は、特にコロナ禍以降、需要が高まっている。

 従来は人の全身画像を検知してカウントしていたため、処理負荷が重く、映像内で人どうしが重なっているとカウントできない課題もあった。そこで、人の頭部だけを検知することにして処理負荷を軽減し、同時に動きを抽出することで人流のリアルタイム計測を可能にした。

 ただし、人の頭部をカウントする方式の場合、植物や金網などを誤認してカウントしたり、雨の日は傘に隠れてカウントできなかったりという問題もある。そこで、現場の画像に即した教師データを作って学習させることで、誤検知を回避しているという。

※訂正:記事初出時、「危険検知」の技術について記載しておりましたが、パナソニック システムソリューションズ ジャパン側からこの部分の発表内容を撤回する申し出があったため、当該部分を削除しました(2021年7月16日 14:00 編集部)

ネットワークカメラで荷物の二次元コードを読み取り省力化

 そして3つめの「物体認識」技術では、物流倉庫の棚卸し現場で、段ボール箱に貼付された二次元コード(QRコード)をネットワークカメラで読み取るソリューションが、デモを交えて紹介された。製品を出荷する企業の物流倉庫を想定したものだという。

 従来の棚卸し作業では、作業者がハンディターミナルのスキャナで1箱ずつ二次元コードを読み取り、入荷伝票との突き合わせを行っていた。この作業を自動化し、作業負荷を大幅に軽減するために、カメラ映像による複数の段ボール箱の一括読み取り方式を考案した。

 だが、倉庫によって周囲の明るさや荷物の積み方がまちまちであるなど、外乱要因は多い。二次元コードを印刷したシールに光が反射して読みづらいケースも想定される。固定カメラの画像では、すべての箱のコードを一括で読み取るのは難しい。

 そこでパナソニック システムソリューションズでは、カメラの画角(パン/チルト/ズーム)や露出を遠隔操作できる同社のネットワークカメラを複数台用いて同時に撮影し、複数の画像から解析を行う方法を考えた。

 具体的には、まず最初に複数の段ボール箱を載せたパレット全体の状態をワイドで撮影して、積み上げられた状態を確認する。そこから個別の箱にズームして、最適な露出で二次元コードを撮影、読み取りを行う。これを繰り返し、伝票のデータと突合することで、荷物が正しく搬入されているかどうかを確認する。「60個の荷物を人出で読み取る作業には10分程度かかるが、このシステムでは1分で自動読み取りができる」(半野氏)という。

 会場で披露されたデモでは、パレットに載ったさまざまなサイズの段ボール箱34個を4台のカメラで同時撮影し、30秒足らずで伝票との照合を終えた。次に、そのうちの1つの二次元コードを塗りつぶして読み取りを実行すると、読み取り不能の箱の場所を画像で示し、作業者がすぐに確認できるようになっていた。「実際の倉庫は非常に暗い場合もあるが、読み取るときだけ照明設備を作動させるといった自動制御も可能だ」(デモを担当したセンシングプロダクト部 商品企画2課課長の大谷一真氏)。

パレットに積まれた34個の段ボール箱に貼られた二次元コードを、4台のカメラで同時に読み取るデモ

34個すべてを読み取り、伝票データとの照合に成功した例と、1つの二次元コードを塗りつぶして読み取り不能にした場合の例。後者では読めなかった箱の位置を画像で表示している

カメラ技術+画像処理の合わせ技

 同社 執行役員 パブリックシステム事業本部 システム開発本部 スマートセンシング事業センター長の新妻孝文氏は、同社の画像センシング技術の強みは「強いハード(ハードウェア)の部分にある」と話す。

 「どんなに優れた画像解析の技術があっても、インプットされる画像の質が悪ければ精度の高い解析はできない。光学的な制御を含めて、画像を読み取るカメラの技術とハード的な画像処理が極めて重要になる」(新妻氏)

 それでは、ソフトウェア的な画像処理の部分で、同社の独自の強みは何なのか。いくら研究の歴史が長くても、過去の画像は非常に粗く、同社の言葉を借りれば精度の高い解析に使えるものではなかった。逆に現在、大量の画像データを抱えているクラウドベンダーなどの強化学習には、及ばなくなっているのではないか。

 こうした疑問に対して半野氏は、「当社には、業務用途別に何が外乱要因になるかなど、長年蓄積してきた画像解析のノウハウがある。目的がはっきりしている場合、このノウハウを既存のデータに加算して学習させることで、はるかに速く、極めて精度の高い画像解析ができる。その結果、現場業務に役立つソリューションを提供できると自負している」と話す。オーグメンテーション(データ拡張)をする際に、最適なデータを持ち合わせているので、十分高精度な解析モデルが作れるというのが同社の主張だ。

 今回デモされた荷物のQRコード読み取りも、条件が悪い場合はカメラの側で改善を試み、できるだけいい状態でデータを解析システムに送るというところがユニークである。ハードとソフトの組み合わせで現場の課題を解決するという点が、パナソニックの画像センシングサービスの優位性と言えそうだ。

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