Apple M1搭載で大幅性能アップの「iPad Pro」&カラフル7色「iMac」特集 第36回
【iPad Pro 2021レビュー】ハードウェアはMacを超えたが、ソフトウェアはまだ届かない
2021年07月10日 12時00分更新
高コントラスト比を実現するミニLEDの効果と限界
新しいiPad Proが採用した「ミニLED」という表現は、小さいものはすぐにマイクロだのナノだのいう昨今では、かなり控えめなものに見える。実際にどの程度「ミニ」かというと、1世代前のiPad Proに採用されていたバックライトのLEDと比べて、120分の1のサイズになっているという。確かにその程度であれば、「マイクロ」というほどではなく、ミニと呼ぶのが適当だろう。
このミニLEDは、正方形(田の字)を描くように並んだ4つを1組として、「ローカルディミングゾーン」を形成しているという。
このローカルディミングゾーン(local dimming zone)というのは聞き慣れない言葉だ。意味としては、「場所ごとに暗くできる領域」ということになる。つまり、このLED4つを組み合わせた領域ごとに、バックライトの明るさを変化させることが可能ということだろう。画面上で本当に暗い部分、つまり完全な黒を表現する際には、液晶でバックライトの光を遮断するだけでなく、バックライトそのものを消灯すれば、それだけ真の黒に近い黒が表現できる。それによって、可能な限り最大のダイナミックレンジを確保し、100万対1という驚異的なコントラスト比を実現できる。
このようなミニLEDは、画面全体で「1万個以上」、それを4つ組み合わせたローカルディミングゾーンでは「2500以上」が使用されている。スペックで確認すると、正確にはディミングゾーンは2596個であることがわかる。これと、12.9インチモデルのピクセル解像度2732×2048から計算すると、ディミングゾーンとしての解像度は、59×44だと判明する。
これは、独立して明るさを調整できる領域の解像度にほかならない。2732×2048という液晶のピクセルの解像度に比べて、かなり荒いという印象が避けられない。
実際に、1つのディミングゾーンでどれだけのピクセルをカバーしているのかを計算してみると、縦方向は46.3ピクセル、横方向は46.4ピクセルとなる。
実際には、おそらくキリのよい区切りになっていると思われるので、縦横とも48ピクセル程度をカバーし、端の部分ではバックライトが液晶パネルの表示領域をはみ出すような構造になっているのだろう。いずれにしても、100万対1という高いコントラスト比は、縦横とも48ピクセル単位でしか得られないことになる。言い換えれば、全体では59×44領域単位となる。つまり非常に繊細な画像では、細部まで100万対1という高いコントラスト比では表現しきれないということだ。
とはいえ、少なくとも旧モデルと同等以上のコントラスト比は常に実現できるわけで、これで特に表示品質に問題が生じるわけではない。それでも新しいiPad ProのXDR(eXtreme Dynamic Range)は、「条件付き」だということは認識しておくべきだろう。
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