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Apple M1搭載で大幅性能アップの「iPad Pro」&カラフル7色「iMac」特集 第36回

【iPad Pro 2021レビュー】ハードウェアはMacを超えたが、ソフトウェアはまだ届かない

2021年07月10日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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 新しいiPad Proは基本的なデザインもサイズ感も、2色しかないカラーバリエーションも、前世代から変化がないものとなった。見た目ではほとんど区別できない。その印象からは、CPUの世代だけが繰り上がったマイナーなアップデートだと思われがちだろう。ところが、中身は以前とはまったく異なるマシンに生まれ変わっている。

 iPadとしての基本的な機能と外観を除けば、旧モデルと同じ部分を探すのが、むしろ難しいほどだ。この記事では、iPad Pro 12.9インチの新モデルを実際に使用してのレビューをお届けする。なお、現行iPad4機種のベンチマークテスト結果については、すでに別記事「現行iPadベンチ総チェック! 1つの例外を除いてM1搭載iPad Proが圧倒」で報告したので、併せてお読みいただきたい。

中身の違いをスペック表で確認する

 新しいiPad Proの大きな特長を3つ挙げるとすれば、M1チップ搭載による高パフォーマンス、ミニLEDバックライトによる高コントラスト比を実現したXDRディスプレー、5Gに対応したCellular通信機能ということになるだろう。これはアップルのiPad Proの「概要」ページに「M1/XDR/5G」というキーワードが並べられていることからも明らかだ。

 とはいえ旧モデルと比べた場合、スペック上変化しているのがその3点だけというわけでは、もちろんない。ちょっと大げさに言えば、まったく変わっていない部分を探すのは難しいと思えるほど、仕様も細かい部分まで変化している。そこで、まずはスペックを比較するところから始めよう。比較したのは、同じ12.9インチのiPad Pro新旧モデルと、現行モデルの中ではもっともiPad Proに近いと思われるiPad Airの3機種だ。

 上から順番に確認していくと、まずチップがA12Z BionicからM1になったのが、大きく絶対的な相違となっている。見落としがちなのは、最大のストレージ容量が旧モデルの1TBから2倍の2TBに拡張されたこと。この2TBという仕様は、M1搭載モデルを含む13インチのMacBook AirやiPad Proと同じだ。マシンの心臓部のSoCがMacと同じM1になり、最大ストレージ容量も同じになったということは、コンピューターとしての基本部分では、少なくとも13インチのMacBookシリーズと肩を並べるものになったと言って間違いない。

 本体サイズは幅と高さ、つまり画面を正面から見た際のサイズについては、新旧モデルで変わっていない。しかし、厚さは旧モデルの5.9mmから6.4mmへと0.5mmほど厚くなっている。また重量も41gほど重くなり、Wi-Fiモデルで682g、Cellularモデルで684gとなった。厚さや重さの違いは、新旧モデルを時間をおいて別々に手にした場合には気づきにくい程度だが、同時に触って比べてみれば、はっきりと感じられるはず。

 この厚さと重量の増加は、XDRディスプレーを実現するためのミニLEDバックライトのためかもしれないし、M1チップを搭載したからかもしれない。あるいはバッテリー容量が36.71Whから40.88Whに増加していることとも無関係ではないのかもしれない。どれが原因でどれが結果なのかも判然としないが、パフォーマンスとディスプレー品質を、いずれも大幅に向上してバッテリーの持続時間を維持していることを考えれば、この程度の厚みと重さの増加はやむを得ないと言える。

 旧モデルの厚みは、iPad Airの6.1mmよりもわずかに薄かったが、新モデルではiPad Airよりも厚くなった。それだけの厚みがあれば、iPad Airに搭載したTouch IDをその気になれば新しいiPad Proにも搭載できたはずだと思われる。それを見送って、旧モデル同様のFace IDとしたのはなぜだろうか。1つ考えられるのは「iPad AirとiPad Proでは用途や対象ユーザーが異なることを意識した結果ではないか」ということ。とはいえ、これでiPadシリーズのほかのモデルやiPad Airの後継機でのTouch IDの採用が今後どうなるのか、見通せなくなった。もしかすると、現行iPad Airのみのものとなってしまうのかもしれない。次にiPadの何らかのモデルが登場すれば、動向も見えてくるだろう。

 これも見た目は変わらないが、本体側面にあるUSB-Cタイプのコネクターは、Thunderbolt/USB 4仕様となり、転送能力が強化された。もちろん、接続する機器もThunderboltやUSB 4に対応していなければ意味がない。このポートが真の実力を発揮するためには、まだそれほど多いとは言えないMac用のThunderbolt対応機器がiPadでも利用可能になるか、iPad専用のThunderbolt機器が登場するのを待たなければならない。いずれにせよ、特にiPadの場合には、単に外部ストレージを増設するればいいというものでもない。その高速データ転送能力を十分に活かすためのアプリケーションも含めた対応が求められる。

 M1チップ搭載によるパフォーマンス向上と並んで、あるいは用途によってはそれ以上に恩恵の大きいのは、やはりディスプレーの品質向上だ。すでに多くの説明がなされている通り、これは主に全部で1万個以上のミニLEDの採用によって実現されたもの。スペック上の最大輝度は600ニトとなっているが、「概要」ページによると「フルスクリーン輝度」は1000ニト、「ピーク時の輝度(HDR)」は1600ニトにも到達するという。また、コントラスト比は100万対1を実現している。こうした数字を示されても、よほどディスプレーのスペックに詳しい人でないとピンと来ないかもしれない。しかし、これらの数字はいずれもアップルが誇るディスプレー単体製品「Pro Display XDR」(58万2780円〜)と同等のもの。タブレットか専用製品かにかかわらず、現在一般ユーザーが購入可能なディスプレーとしては、間違いなく最高品質のものだ。もちろん、サイズや解像度(画素数)ではPro Display XDRと比べるべくもないが、そのレベルの高品質で明るいディスプレーを手軽にどこにでも持ち運べるようになった意義は、とてつもなく大きい。

 ただし、ミニLEDによって高コントラスト比を実現するしくみには、原理的な欠点も避けられない。それについては、少し後で述べる。

 実際のディスプレー品質は、もはや人間の目で正確に評価できる領域を超えてしまった言うこともできる。それでも、新しいiPad Proの画面に表示された写真などを見れば、誰でも美しいという印象を持つだろう。たとえて言うなら、液晶画面というよりも「印画紙に印刷された写真を、非常に明るい照明の下で見ている」ように感じられる。もちろんコントラストにも深さを感じる。

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