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TIS、インキュベーション施設を西新宿から豊洲に移転

「TISインテックグループイノベーションハブ」を開設

 TISインテックグループのTIS株式会社は、2021年4月1日、インキュベーション施設「TISインテックグループイノベーションハブ(以降、TIH)」を豊洲ベイサイドクロスタワー32階にオープン。同社インキュベーションセンターがこれまで西新宿にて運営してきたコワーキングスペース「bit&innovation」を豊洲新オフィス内へ移転した形だ。床面積は約600平米と、bit&innovationの250平米の約3倍に拡大し、200人規模のイベント開催も可能になる。

 4月某日、開所したばかりのTIHに訪問し、約5年間でのインキュベーション活動の変化、共創で生まれた新事業について、TIS インキュベーションセンター 主査の中村 雅春氏に伺った。

TIS株式会社 テクノロジー&インキュベーション本部 インキュベーションセンター主査 中村 雅春氏

 TISにインキュベーションセンターが組成されたのは2015年。その翌年の2016年の9月末にコワーキングスペース「bit&innovation」を開設し、TISグループ、大手企業、スタートアップの3者によるコラボレーションを促進する場として、ピッチイベントやセミナー、勉強会などが定期的に開催されてきた。

 「社会環境の変化から、弊社もこれまでのようなSI・受託事業だけでなく、自社サービスの開発が求められるようになってきました。自社単独でも新規事業を創れないことはないけれど、新しいアイデアや技術をもつスタートアップと共創すれば、より短い期間に、価値の高いものが生み出せます。同時に、事業会社様のオープンイノベーションの支援もしていくことを目的に『bit&innovation』を開設しました」と中村氏。

TISインテックグループイノベーションハブ(TIH)

 インキュベーションセンターの新豊洲オフィスへの移転にともない、bit&innovationに代わる新たなインキュベーション施設として開設されたのがTIHだ。基本のコンセプトはこれまでと同じだが、bit&innovationは、一般の起業家や学生も会員登録すれば、ふらりと立ち寄って作業などに利用できたのに対し、TIHでは会員制を廃止し、基本的には、同社グループ社員からの紹介制としている。

 その理由は、豊洲オフィス内にあるため、オフィスと共通の23階のセキュリティゲートを通らなくてはならないという事情によるもの。TIHは、個別に作業をするコワーキングスペースというよりも、同社グループ社員や事業会社とのPoCや打ち合わせ、またはイベント開催など、交流や共創といったイノベーション活動により特化した施設だ。

 TIHは、広々としたミーティングスペースと、ガラス張りのセミナールーム1室、プロジェクトルーム3室で構成される。ミーティングスペースは、スライドレール式のホワイトボードパネルでゆるやかに区切られており、パネルを移動して1つの大空間にすれば、200人規模のイベント会場として使える。またパネルで仕切ることで、同時に複数イベントの開催も可能だ。ウェブカメラや大型ディスプレーが設置されているので、オンラインイベント、他拠点との中継、オン・オフハイブリットのイベント開催など柔軟に対応できる。

広さ約600平米で200人超のイベントに対応。東京湾に面したバルコニーがあり、夏には東京湾と隅田川の2つの花火大会が眺められる

可動式のパーティションやウェブカメラが設置され、ミーティングからオンラインイベントまでフレキシブルに対応

 プロジェクトルームは、進行中の共創プロジェクトのPoCや作業をする場所として、現在すでに、大学の研究機関との共同研究や事業会社との新事業に使用されている。

小規模なイベントにも使えるセミナールーム

 現在はコロナ禍のため、当面は、TISインテックグループ内のイベントや勉強会、または無観客でのオンライン配信を実施していく予定だ。

 「スタートアップのピッチイベントはもちろん、事業会社から『リバースピッチをしたい』という要望が出ているので、コロナの自粛期間が明けたら、ぜひリアルで実施したいですね。29階の社員食堂は夜に酒類の提供も出来るので、イベント後のネットワーキングもできます」

インキュベーションセンター発の新サービス「XR Campas」がリリース

 2016年からの活動の中で、いくつかのコラボレーションは事業化に至っている。たとえば、2020年11月に株式会社日本カードネットワークとの合弁で設立した「tance株式会社」もそのひとつ。tance株式会社では、日本カードネットワークの加盟店向けに、店舗の業務効率化やDX化を支援するサービス配信を行なうアプリケーションプラットフォームを提供する。このプラットフォームには、インキュベーションセンターがソーシングしたスタートアップのサービスも搭載される。

 TIS社内ではすでにオープンイノベーションが浸透しており、インキュベーションセンターの支援なしに各事業部が自走できるようになってきたことから、2019年以降は、インキュベーションセンター自身が事業を創るというミッションも追加。2021年にようやくローンチするサービスのひとつがXR技術を使った空間コミュニケーションサービス「XR Campas」だ(参考記事:360度カメラで撮影した空間の中をアバターで自由に見学できる「XR Campus - ツアー」)。ほかにもいくつかのプロジェクトが動いているそうで、これから続々と新しいサービスがリリースされる予定とのこと。

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