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iOSやmacOSの進化が見えた! 「WWDC21」特集 第13回

WWDC2021 トピックの時間配分から浮かび上がるアップルのプライオリティ

2021年06月21日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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 少し時間が経ってしまったが、今年2021年のWWDCのキーノートを視聴しての感想、今後への期待などを述べてみようと思う。まずは、いつも通り、全体を通しての時間配分や話題の登場順などを明らかにし、そこに表現されているアップルが考えるプライオリティを浮き彫りにすることから始める。その後、個々のトピックについて、印象的な部分を取り上げ、それらの意義を考えていく。

トピックの時間配分から浮かび上がるプライオリティ

 いつものように、WWDCのキーノートは、YouTubeにアップされているので、だれでもいつでも観ることができる。今年のキーノートは、1時間47分に迫る長丁場だ。ただぼーっと観ているだけでも疲れるが、今のところ確実なことはここにしかないわけなので、確かなことを知りたいという人は、ぜひ各自で直接視聴していただきたい。

 今回のイントロダクションは、一般のユーザーやデベロッパーと思われる人々のショートインタビューをコラージュしたものから始まる。その後の登場するティム・クックの開会宣言のようなものを含めて、イントロだけで5分もあった。それとエンディング部分を除くと、大きく10個のトピックに分かれている。区切りがあいまいな部分もあるので、さほど正確ではないが、それぞれのおおよその時間配分を分秒単位で挙げておこう。

●WWDC21発表内容の時間配分
・iOS:29分5秒
・AirPods:3分16秒
・iPadOS:11分1秒
・Privacy:4分34秒
・iCloud:3分52秒
・Health:10分11秒
・watchOS:6分56秒
・Home:5分40秒
・macOS:13分26秒
・Developer TechnologiesとApp Store:11分10秒

 これらの中で、名前の後ろに「OS」と付いているものは、全部で4つある。順番に挙げれば、iOS、iPadOS、watchOS、そしてmacOSだ。WWDCの目的を簡単に言えば、アップルが販売する製品に搭載されているOSの新機能や、それを利用するためのAPIをサードパーティのデベロッパーに紹介、解説をして、アプリの開発を促進することにある。それを思い出せば、キーノートについても最も重要なトピックがOSに関するものであることは明らかだ。時間配分を見ても、やはりほかのトピックより長めになっている。

 一方、名前にOSと付かないほかのトピックは、1つのOSだけにとらわれず、各種のアップル製品が搭載する多種のOSに横断的に組み込まれているものが多い。もちろん個々のOSと無関係ではあり得ない。とはいえ、アプリのデベロッパーは、選択したデバイスのOSをターゲットにして開発することになるので、各OSのトピックが、いろいろな技術への入り口となる重要なものであることは間違いない。

 とりあえず、OSと名の付くトピックとそれ以外のものの、それぞれの合計の比率を確認しておこう。4種のOSの合計が1時間28秒、OS以外の合計が38分43秒で、比率にすると前者が61%、後者が39%となる。

 OSの合計がほぼ1時間になるところを見ると、これはOS全体で1時間を確保するという設計の結果だったのではないかと思えてくる。いずれにしても、順番が交互になっているからか、あれこれとバラエティが豊かだった印象は強い。それでも結局はOSが約6割で、やはりそれだけ重視されていることがわかる。

 次に各OSの時間配分を見てみよう。この結果をぱっと見れば明らかなように、当然ながらiOSのプライオリティがかなり高い。

 以前から述べているように、各トピックのプライオリティは、時間配分だけでなく登場順も考慮して考える必要がある。その点でも、キーノート全体の最初に登場して、OS全体の半分近くを占めるiOSの重要度に疑問を挟む余地はないだろう。iOS→iPadOS→watchOSは、登場順に時間配分も短くなっていく。これは、これら3種のOSのプライオリティの違いを補強する事実と考えられる。もちろん、それらのOS専用アプリの数と質の差を反映したものと見ることもできるだろう。

 時間配分では、iOSの半分にも満たないが、iOSに次ぐ約22%を占めるmacOSが、OSとしては最後に登場した。それには、単純な順番によるプライオリティ付けとは異なった意味合いもあるように思える。最初だけでなく、最後にも重要なものを持ってくるという意味合いもありそうだし、全体としての最後のトピック、Developer Technologyの直前に置かれていることにも意味があると考えられるからだ。というのも、WWDCはあくまでアプリ開発者のためのイベントであり、1つにはアプリ開発者が普段から仕事としてもっとも長い時間使用するのは、おそらくmacOSだということ。そしてもう1つ、全体で最後のトピックとなった開発ツールやApp Storeの管理の話は、ほとんどmacOSを使って操作することが前提となっている。そこで最終盤にmacOSの話から開発ツールの話につなげるのは自然な展開と考えられる。

 比較すること自体に、それほど重大な意味があるとは思えないが、OS以外のトピックの時間配分も見ておこう。

 上でも述べたように、最後のDeveloper Technologyが重要であることは、時間配分からも間違いない。それ以外では、登場順はともかくとして、HealthとHomeの配分が大きいことに気付くだろう。両方合わせれば、OS外のトピックの時間の約4割を占めている。これは、現在のアップルデバイスの利用者の感心の高い分野であると同時に、アップルとして力点を置いている分野を反映したものと考えられる。巣ごもり需要だけが要因ではないだろうが、健康や家庭内での快適な機能の確保は、外から流入する情報以上に、これからますます重要になっていくと予想できる。

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