2021年6月16日、F5ネットワークスジャパンは買収したVolterra(ヴォルテラ)のビジネスについてのプレス説明会を開催。長らく中央集権型のアプリケーションのデジバリとセキュリティを手がけてきた同社が、分散アプリケーションの隆盛にどのように対応してきたのかが説明された。
アプリケーションのデリバリ&セキュリティの戦略は一貫している
ロードバランサーのアプライアンスからスタートしたF5だが、ITシステムのクラウドシフトを受け、さまざまな事業者の買収を手がけている。3年前にはOSSのWebサーバーとしてシェアを拡大するNGINXを買収し、昨年には悪性ボットやマニュアル攻撃を排除するShapeSecurityを買収してきた。登壇したF5 ネットワークスジャパン 代表執行役員社長 権田 裕一氏は、こうした近年の買収がエンドユーザーに快適にセキュアにアプリケーションを届けるための「デリバリ&セキュリティ」の戦略で一貫している点を強調する。
今回、買収したVolterraはアプリケーションの分散化に対応するエッジ向けのソリューションになる。従来、F5は中央集権型の重厚長大アプリケーションへのアクセスとセキュリティを高い信頼性で支えてきたが、次世代のデータ駆動型アプリケーションはエッジ分散化される傾向にある。また、下りトラフィックが主体だった従来型のアプリケーションに比べ、エッジ間の通信もメッシュ化されるため、トラフィックも双方向化されるという。
こうした「Edge 2.0」の環境を支えるのがVolterraになる。「オンプレであれ、クラウドであれ、エッジであれ、アプリケーションのデリバリとセキュリティを確保し、一貫してマネジメントできるプラットフォームがVolterra」と権田氏は語る。
IoT、MEC、マルチクラウドの用途を想定
続いて登壇したVolterra事業本部 本部長 山崎朋生は、アプリケーションの分散化が起こった背景として、軽量化された仮想マシンやコンテナの技術が洗練され、コスト的にも見合うようになってきたこと。また、高速・低遅延な通信技術がでてきたことで、レスポンスの遅延を抑えられるエッジの処理が現実的になってきたことを挙げた。特にユーザー側において、デバイスの手前にあたる「カスタマーエッジ」は重要度を増しているという。
今回提供されるVolterraは分散クラウドの環境において、セキュアで高速なアプリケーション配信インフラを提供するSaaS。インフラ・アプリのエッジを担うkubernetes環境の「VolterraStack」、ネットワークとセキュリティ機能を搭載する「VolterraMesh」、管理や操作を行なう「VolterraConsole」の3つのコンポーネントから構成されており、異なるクラウド間やオンプレミスとの接続可能なグローバルネットワークで結ばれている。
山崎氏はVolterraの用途として3つのユースケースを紹介した。製造業や流通業向けのIoTゲートウェイとして動作させる場合では、ゼロタッチでのプロビジョニング、アプリケーションやセキュリティポリシーの一斉配信、USBデバイスのリスト管理などを実現し、従来より高度なアプリケーションの管理・制御が可能になる。
また、キャリア向けのMEC(Multi access Edge Computing)の用途では、多拠点のリソース管理、セキュリティの機能を提供。マルチクラウドの環境では、レイヤ3~7までの一貫した接続性やセキュリティを異なるクラウドサービスでも確保でき、Volterraコンソースから統合的に管理することが可能になる。
エッジ向けの接続性やセキュリティという観点では各種CDNサービス、IoTではキャリアのマネージドIoTサービス、MECではAWS Wavelengthなども一部競合してくる部分はあるが、「広い範囲で利用できる点が売り」(山崎氏)とのこと。分散クラウド環境においても、安定したデリバリ環境と高いセキュリティを実現していくという。