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山中新社長が今後の方向性を説明「“ITサイロに橋を架ける”のがヴイエムウェアの役割」

「今後、組織とビジネスを2倍に」ヴイエムウェア国内事業戦略

2021年04月23日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 ヴイエムウェアは2021年4月22日、国内事業戦略についての記者説明会を開催した。1月の社長就任後、初めての事業戦略説明を行った山中直氏は、顧客の成功を継続的に支援する3つの柱として「People」「Process」「Technology」を挙げ、それらの観点から「デジタル時代の人材開発」「ビジネス戦略推進室の設立」「業界ごとのDigital Foundation」に取り組む方針を示した。

アプリとクラウドのモダナイゼーション実現に向けて「3つの取り組み」を行う方針を示した

ヴイエムウェア 代表取締役社長の山中直氏

「“ITサイロに橋を架ける”のがヴイエムウェアの役割」

 山中氏は2021年1月18日付で日本法人社長に就任した。「それからの3カ月間は、日本法人としての新たなアイデンティティとビジネスの方向性について議論をしてきた」と語る。

 「ヴイエムウェアは、顧客やパートナー、社員とともに、テクノロジーの力で、新たな時代へつなぐ懸け橋の役割を担いたい。“ITサイロに橋を架ける”のがVMwareの役割である」

 今後の取り組みとしてあげた3つのうち、まず「デジタル時代の人材開発」では、アプリやクラウドのモダナイゼーションを図るための顧客/パートナーの人材育成に貢献すると語った。

 「(アプリモダナイズのワークショップである)『VMware Tanzu Labs』に対する関心が高まっている。これは、企業が自ら変革しなくてはならないと考えている意識の表れだと捉えている。当社のエンジニアと連携して、アジャイル開発の方法論、サービスの立て付けを検討しながらアプリを開発する手法、文化や考え方を持ち帰ってもらい、社内で展開してもらっている。また、日本では70%のITプロフェッショナルがパートナーに在籍しているという特徴がある。顧客とパートナーが連携しながら、変革に取り組むがことが日本では大切であり、一緒になってVMware Tanzu Labsを活用してほしい」

 さらに、国内の自治体や行政機関に向けたセキュリティ/デジタル人材育成のための支援体制を強化したことにも触れ、その第1弾として2021年3月に、北海道との連携協定を締結したことを紹介した。「日本の社会の変革に貢献したいと考えており、今後、取り組みを広げたい」。

 同時に、ヴイエムウェア社員のスキル変革も強化していく方針だと述べ、「VMware Japan Field Innovation Program」を正式に立ち上げたことを報告した。「イノベーションを提供するうえでは、われわれ自身がイノベーションをリードできるように変わらなくてはならない。テクノロジーを通じて、なにをどう変えるのかといったことを、エンジニアだけでなくセールス、スタッフまでを含めて、スキルを高め、テクノロジーをいい方向に利用できる基盤を作りたい」。

 続く取り組みの「ビジネス戦略推進室の設立」では、デジタル変革(DX)を推進する顧客/業界ごとに、専任のストラテジストやアーキテクトをアサインし、CIOと戦略レベルで協働できる体制を実現すると説明した。

 「約10人の体制でスタートし、トップには政府CIO補佐官を務めた経験者を配置している。国や自治体の動き、日本の企業の動きにあわせて、DXの支援を推進していくことになる」

 3つめの取り組み「業界ごとのDigital Foundation」では、業界ごとに異なるアプローチでデジタル変革が進むグローバル事例を参考に、日本市場向けにカスタマイズしたアーキテクチャーを提唱するという。山中氏は「まずは金融、電力、ガバメントといった業界にフォーカスしている」と語った。

企業に対する「2方向のプレッシャー」と「Digital Foundation」

 新型コロナウイルスの感染拡大による社会や経済の混乱は続いているが、その一方でデジタルテクノロジーを通じてビジネスの競争優位性を高める動きが急速に進み、従業員体験にも注目が集まっている。山中氏はそれを指摘したうえで、「企業経営者はコロナ禍をアゲインスト(向かい風)と捉えるか、フォロー(追い風)と捉えるか、その見極めが重要になっている」と語る。

 ビジネスのデジタル化が求められる中で、日本企業には「同時に直面する2方向のプレッシャーがある」と山中氏は指摘した。それは、“2025年の崖”に対応するためのレガシーアプリケショーンのモダナイズ、新たな働き方への対応、デジタルサービスの迅速な提供、デジタル競争に勝ち抜くための人材確保といった「経営者が求めるデジタル化」のプレッシャーと、プラットフォームの多様化を背景とするサイロ化の解消、自動化による運用効率化、開発スピードの迅速化、人材やスキルの不足、新たなセキュリティリスクへの対応といった「IT部門が直面する課題や挑戦」というプレッシャーだ。

 この2方向のプレッシャーを解決するために、山中氏は「Digiral Foundation」が必要だと訴える。すなわち“DXの取り組みを支える基盤”だ。具体的には、ハードウェアの抽象化から始まり、ハイブリッド/マルチクラウドの抽象化、そしてコンテナによるアプリケーションの抽象化と、テクノロジーを進化させながらさまざまなレイヤーで抽象化していく取り組みにより実現できるものだとする。

デジタル化に取り組むなかで、企業は2方向からのプレッシャーにさらされている

 「(ヴイエムウェアのソリューションでも)ハードウェアの抽象化から、クラウドの抽象化、アプリケーションの抽象化というように、一段上のレイヤーでの抽象化に取り組んでいるところである。抽象化によってITサイロに架け橋をかけて、最適な選択肢を提供し、デジタル変革を支援することができる。これがDigital Foundationであり、この基本姿勢はこれからも変わらない」

 山中氏は、ヴイエムウェア設立以来の取り組みを「第1章:サーバー/デスクトップ仮想化」「第2章:Software Defined Data Center/Digital Workspace」「第3章:Hybrid Cloud/Multi-Cloud」、そして「新たな章:App Modernization」の4つに分けて説明。「今後3年間をかけて、日本市場においてDigital Foundationを提供することになる。顧客やパートナーとともに、3年後に向けたカスタマージャーニーを描き、その第1歩はなにかという議論を顧客やパートナーとしていきたい」と語った。

ヴイエムウェアが考える「Digital Foundation」と対応するソリューション群

新たな章「アプリケーションのモダナイズ」に向けて

 ヴイエムウェアでは2012年から「Any Cloud, Any Application, Any Device」のビジョンを掲げてきた。そして、近年ではここに「Intrinsic Security」も加わっている。山中氏は、このビジョンに沿ってそれぞれのソリューションを進化させてきたことを説明する。“Any Application”を実現するVMware版のKubernetes/コンテナ基盤、Tanzuポートフォリオで徐々に成果が生まれていること、また“Intrinsic Security”領域に今年中盤以降フォーカスし、「すべてのプラットフォームにセキュリティファンクションが入り、そこから得られるセキュリティ情報をEDRやXDRに集約して、ひとつのセキュリティポリシーでプラットフォームを管理することになる」と述べた。

 さらに今後、大きな変革が想定されるアプリケーションのモダナイゼーション領域においても、顧客と伴走しながらマルチクラウド環境におけるモダナイズを支援すると語った。

 「レガシー、モダンアプリケーションを一貫したアーキテクチャーで実装し、一貫した運用管理、一貫したセキュリティを可能にする。抽象化レイヤーを、サーバー、データセンター、クウラド、アプリケーションにまで引き上げることで、論理的な大規模なデータセンター、あるいは大規模なクラウド環境を提供できるのが、VMwareが実現するDigital Foundationの姿になる」

 なおヴイエムウェアでは4月21日、東京・浜松町にあった本社オフィスを田町に移転している。浜松町では7フロアまで拡張していたが、社員同士で横の関係を広げたいという要望があったため、田町では3フロア構成にしたという。移転計画は以前からあったものの、コロナ禍を受けてオフィスデザインを見直し、会議室の7割にリモートテクノロジーを導入して「社内と社外のメンバーが包括的な会議ができる環境を準備している」という。

 「今後は組織を2倍にして、ビジネスも2倍にすることを目指す。それに向けて、場所を問わない働き方を支援し、新たな企業文化やアイデンティティを醸成する場にしたい」

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