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VCFとTanzuのスタックを取り込み、サブスクリプション型利用やモダナイズのコンサルティングも提供

ヴイエムウェア「VMware Cloud」発表、マルチクラウド活用とモダナイズ支援

2021年04月01日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ヴイエムウェアは2021年3月31日(米国時間)、顧客企業におけるマルチクラウド活用とアプリケーションのモダナイズを支援するモジュール型クラウドサービスの「VMware Cloud」を発表した。仮想マシンベースの仮想化基盤である「VMware Cloud Foundation(VCF)」とコンテナ(Kubernetes)基盤「VMware Tanzu」のスタックを取り込むことで、従来型アプリケーションとモダンアプリケーションの両方に対してマルチクラウド/オンプレミス対応の分散型プラットフォームを提供する。これにより、モダンアプリケーション開発の加速や、オペレーションやセキュリティの一元化と効率化を実現する狙いがあるという。

 この発表に合わせて、サブスクリプションサービスの「VMware Cloud Universal」や、デプロイ環境を問わずVMware Cloudのインフラを一括監視/管理できる「VMware Cloud Console」、従来型アプリケーションのモダナイズを専門家が支援する「VMware App Navigator」といった新サービスも発表している。

ヴイエムウェアが発表したモジュール型クラウドサービス「VMware Cloud」

オンプレミス/クラウドでVMware Cloudを柔軟に活用可能にするサブスクリプションサービス「VMware Cloud Universal」なども発表された

「なぜDXは遅々として進まないのか?」

 プレスラウンドテーブルで発表を行ったVMware COO, Products & Cloud Servicesのラグー・ラグラム氏は、あらゆる企業がデジタルビジネスの実現を目指してデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む中でも「なぜDXは遅々として進まないのか?」と問いかけた。

VMware COO, Products & Cloud Servicesのラグー・ラグラム(Raghu Raghuram)氏

 その理由は、既存アプリケーションとモダンアプリケーションの世界が分断されており、一貫性のある形になっていないためだ。既存のモノリシックなアプリケーションをクラウドネイティブなものにモダナイズするのが難しいだけでなく、クラウド移行によってオペレーションも変えなければならず、そのスキルを持つ技術者も限られる。一方で、環境がオンプレミスとマルチクラウドに分散しているために、オペレーションやセキュリティがサイロ化し一貫性を持たなくなっている。

 「アナリスト予測では、すでに80%の企業がアプリケーションを分散した環境に展開している。データセンター、エッジ、そしてマルチクラウドだ。顧客CIOの声を聞くと、今後数年間の一番大きな課題は、この分散した環境下でどうやって一貫した形でアプリケーションを管理し、セキュリティを適用していくかだという声が多い」(ラグラム氏)

 そこで、従来型アプリケーションの展開環境として実績のあるVCFと、モダンアプリケーションの開発を加速させるTanzuのモジュールを組み合わせて利用できる新しいサービス、VMware Cloudという発想に至ったという。

 「パブリッククラウドとプライベートクラウド、従来型アプリケーションとモダンアプリケーション、そしてIT管理者と開発者の両方に、ここまで適したソリューションはないだろうと考えている。クラウドジャーニー、そしてアプリケーションのモダナイズを実現する最適なソリューションであり、非常にユニークだと考えている」(ラグラム氏)

 こうして統合することで、オンプレミスでもクラウドでも、また従来型アプリケーションでもモダンアプリケーションでも、オペレーションやセキュリティに一貫性をもたらすことができる。さらに、パブリッククラウドに展開すればクラウドネイティブサービスとも連携可能だ。

SDDC基盤のVCFとコンテナ(Kubernetes)基盤のTanzuの両方を組み込んで、幅広い展開と用途に利用できるプラットフォームを構成する

 ラグラム氏はまた、VMware Cloudの特徴として、VCF、Tanzuのいずれでもすでに高い実績があることを強調する。たとえばTanzuの活用によって開発者の生産性は80%向上し、VCFはオンプレミスからパブリッククラウドへの移行期間を46%短縮、さらにオペレーションコストを59%削減可能にするといった数字を挙げた。さらに、30万社がVMwareプラットフォームを利用し、8500万ものアプリケーションがVMwareの仮想マシン上で稼働していると付け加えた。

オンプレミス/クラウドを柔軟に利用できるサブスクリプションサービス

 VMware SVP / General Managerのマーク・ローマイヤー氏は、VMware Cloudの構成要素として新たに発表されたVMware Cloud Universal、VMware Cloud Console、VMware App Navigatorのそれぞれを詳しく説明した。

VMware SVP / General Managerのマーク・ローマイヤー(Mark Lohmeyer)氏

 VMware Cloud Universalは、VMware Cloudの利用と購入を簡素化し、顧客企業が必要に応じて柔軟に展開環境を変更できるサブスクリプション型の購入形態だ。具体的には、顧客はクレジットを購入してプールし、サービス利用に応じてそのクレジットで支払う形をとる。また、オンプレミス環境に対する投資の保護も考えられており、たとえば未使用のVCFサブスクリプションを持つ場合、契約期間中であればそれをVMware Cloud on AWSなどに振り替えられるという。

 なおCloud Universalの適用対象は、コンピュート/ストレージ/ネットワークリソース(VCF、VMware Cloud on AWS、VMware Cloud on Dell EMC)のほか、マルチクラウド管理SaaSである「VMware vRealize Cloud Universal」、さらにTanzu Standard Editionとなっている。

 ローマイヤー氏は、Cloud Universalが適したユースケースとして、ハイブリッドクラウドにおける追加キャパシティのプールと活用、クラウド移行プロジェクトにおける移行タイミングの柔軟化、クラウドバースト、オンプレミス資産のOPEX化などを挙げた。

VMware Cloud Universalの概要

 VMware Cloud Consoleは、オンプレミスとマルチクラウドのVMware Cloud環境を一元監視/管理できるコンソールだ。さらに上述したクレジットも管理し、必要に応じて最適なサービスを購入するといったことも可能である。

 VMware App Navigatorは、アプリケーションのモダナイズをヴイエムウェアの専門家が支援するプロフェッショナルサービスだ。4週間という短い期間で、既存アプリケーションのアセスメントから、モダナイズに取り組む優先順位付け、そのままクラウド移行するか再構築(リアーキテクチャ)するかといった判断を行い、推奨プランを提案するという。「非常に迅速に、ターゲットを絞り込んだモダナイズが可能になる」とローマイヤー氏は説明した。

VMware Cloud Console、VMware App Navigatorの概要

 なお日本市場では、VMware Cloud Universalは2022年度後半(2022年1月28日まで)に提供開始予定。VCFサブスクリプションライセンスの振り替え、VMware Cloud Consoleについては提供開始時期未定。VMware App Navigatorは同日より提供開始となっている。

 「すべての企業がデジタル企業になると言われる中で、顧客企業のCIOは『デジタルビジネスへの変革』に腐心している。そこでは『クラウド移行』と『アプリのモダナイズ』という2つの大きな取り組みがあり、これはわれわれにとって非常に大きな市場になると思っている。そして、この2つを単一のソリューションで満たすことができるのがVMware Cloudだ」(ラグラム氏)

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