沖縄発の農業スタートアップ、淡路島の渇水対策に取り組む
沖縄科学技術大学院大学(OIST)のスタートアップ支援で誕生
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は4月13日、同学のスタートアップ・アクセラレーター・プログラムから生まれた「EF Polymer(EFポリマー)」が、アグリテック系のスタートアップ「カルティベラ」と共同で、兵庫県淡路島の渇水対策に取り組むプロジェクトを開始したと発表した。
EFポリマーは2019年にOISTのスタートアップ支援のプログラムを通して設立され、主に農業向けの環境に優しい自然由来のポリマーを開発している。沖縄県内では農作物の残渣を活用した液体肥料の開発にも取り組んでおり、2020年末からは沖縄県内でオリオンビールと共同で、ビールの余剰酵母を使った有機液体肥料を開発している。今回、淡路島で開始するプロジェクトでは、保水力の高いポリマーを渇水課題のある農地で活用することで、水資源の効率的な運用を目指す。
近年、淡路島では冬場に雨が降らないことで大規模な渇水が起き、農産物の収穫量が減少するという問題が起こっている。一方で、雨が降る日には極端に降水量が多いことで農作物が根腐れすることも懸念されている。今回のプロジェクトでは、淡路島南部でたまねぎやトマトなどの生産を行うアクアヴェルデAWAJIの農地の一部で実証実験を行なう。
実験では、露地裁倍の農地でEFポリマーが開発した自然由来のポリマーを使用する。また、ハウス栽培プラントではカルティベラの膜式栽培技術を実験することで、総合的な渇水対策に取り組む。農地に適用されたポリマーは保水力が高く、ゆっくりと土の中で水分を放出できるため、雨が少ない時期でも農地を潤す効果が期待できるという。また、激しい雨が降った際にはポリマーが素早く水分を吸収することで、農地に水が溜まったままの状態を防ぐとしている。
カルティベラの膜式栽培とは、特殊繊維を蓄積させた人口培地シートを用いて、根域空間の湿度をコントロールすることにより、空間を疑似土中として植物の湿気中根を意図的に発生・培養させる技術で、少量の水分かつ無排水での作物栽培が可能という。同社は今年2月からOISTのインキュベーター施設に入居しており、今回のプロジェクトはOISTを拠点とした2社のスタートアップがコラボレーションした初めての事例。
本プロジェクトでは、初回のポリマー適用と膜式栽培技術の効果実証を測りながら、今秋には苗床への適用実験を行う予定。