「NASEF JAPAN 国際教育eスポーツサミット 2021」レポート
eスポーツ×教育で自主性やコミュニケーション能力、語学力を向上! NASEF JAPANが目指す次世代の人材育成とは
2021年03月31日 09時00分更新
日本の教育現場へのeスポーツの導入は?
次に行なわれたのは、4人のパネリストによる「e スポーツ×(日本+世界)=教育の可能性」についてのクロストークセッション。登壇者はクラーク記念国際高等学校の笹原 圭一郎氏、阿南工業高等専門学校の小松 実氏、全国高等学校eスポーツ連盟(JHSEF)の大浦 豊弘氏、NASEF JAPANの松原 昭博氏。
まずは各登壇者が日々学校の中で取り組んでいるeスポーツの実情について語られた。
笹原氏は、クラーク記念国際高等学校の教員として高校生と相対している体験から、自信のなさからあまり他者とコミュニケーションを取ることが得意ではなかった生徒が、ゲームをきっかけに色々な話をすることができるようになったのを見てきたという。
自分の居場所がここにあると見つけられ、安心して学校生活を送れるようになったのだ。そのほか、eスポーツから集中力や自己管理能力、ネットリテラシー、マナーといった力を身につけていることを感じた。ただ、コーチング、つまり指導者がきちんと生徒達を導くことが重要だという理解も得られた。
それにより、生徒達が進路としてプロプレイヤーだけでなく配信技術者として情報・メディア系に、企画・運営の体験から経済・経営といった進路を見つけ出せているとのこと。こうした、ゲームで得られた実績と成果、経験を武器に社会から求められる人材を育てることがクラーク記念国際高等学校におけるeスポーツ教育としている。
小松氏は、阿南工業高等専門学校の教授として生徒達の指導をされている。最初はeスポーツ大会の企画運営、イベントの出展からスタートすることで学生のマネジメント力を高めることから始めた。その後、全国大会出場を目指す生徒のみが参加できるアスリート部門も立ち上げた。
これにより、ネットワークやプログラミングなどに関する電気通信技術関連を学ぶことができているそうだ。同時にチームで動くことや考え抜くといった社会人としての基礎力も高まっているという。それらに加えて自分に自信が持てるようになったり、大会出場などで社会人に加えて外国人との交流ができ貴重な経験を得られたという学生自身から声も上がっているとのことだ。
全国高等学校eスポーツ連盟の大浦理事は、連盟の設立経緯と活動内容を説明した。連盟ではこれまで全国高校eスポーツ選手権を3回開催しているが、連盟設立以前は大会を開催するために学校現場に足を運ぶものの、なかなか許可が出なかった。そのため、2019年11月に連盟を立ち上げeスポーツの教育的価値を啓発するようになったという。
同時にゲーム依存症の問題は避けてとおれなかったため、スポーツドクターとして活動している脳神経外科医の協力を得て医学的見地から対応に取り組みアピールしているという。
NASEF JAPANの松原昭博氏は、まず同団体の方針について語った。NASEF JAPAN目指すところとして、次世代の人材育成を挙げた。eスポーツそのものを広めるのではなく、それを手段として人材育成を目的としているということである。
ゲームは子供たちがやりたがっていることであるという現実から、それを押さえつけるのではなくむしろ活用していこうというわけだ。そうして競技を行なっていくなかで、社会性や英語学習、チームワークを育んでいく。それと同時にプログラミングについての知識を深めたり、論理的思考を身につける。大会を関わることで創造性といった才能を発掘することも目的とする。そうした3種類の育成を考えているという。
こうした話の中で出てきたのが、生徒達の自主性の高まりであった。最初は「学校でゲームをしていいの!?」と生徒達は驚くばかりであったが、eスポーツによる学習によって学校に馴染めなかった子が明るくコミュニケーションを取れるようになったり、表に出るのは苦手でも配信といった技術的な部分に興味を持ちそうした活躍をするようになったりといった例が挙げられた。
さらにeスポーツ部を立ち上げるため、校長先生といった方々に直談判をするといった生徒も現われてたという。このようにゲームをきっかけに様々なことに挑戦したり新しい世界を見つけたりという成果が実際に出ているそうだ。
また、eスポーツはサッカーや野球といったリアルスポーツと比較してハードルが低いという話も出てきた。ジェンダーの違いがあっても障害を持った人たちでも対等になれるというメリットがあるからだ。