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独自CPU「M1」で処理性能&バッテリー駆動時間が大幅向上 新Mac特集 第21回

【M1搭載Mac miniレビュー】小型デスクトップの新パフォーマンススタンダード

2021年03月22日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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M1搭載Mac mini

 アップル独自のCPU、M1チップを搭載して同時に登場した3機種の中で、唯一のデスクトップ機がMac miniだ。ほかの2種類のMacBookとは明らかに異なるタイプの製品となる。これまでのMacBook AirやMacBook Proに関する記事でも述べてきたように、M1チップの最大の特長は、低消費電力と高性能を両立させたこと。もちろん、デスクトップ機でも消費電力は少ないに越したことはないが、M1チップをMac miniに搭載することは、MacBookとは違った意味を持つのは明らか。その点で、M1搭載モデルの中では今のところ異色の存在と言える。

 また今回のMac miniの構成を検討していくと、これまでは基本的に1モデルしかなかったMac miniのラインナップを、今後拡充しようというアップルの意図が見えてくるようにも思える。それは、今後のApple Siliconの発展の方向性とも密接に関わってくる。そのあたりも含めて、新生Mac miniの魅力を探っていこう。

旧モデルと比べてどう変わった?

 まずは、Mac miniの直近の旧モデルと比較してみよう。と言っても、「旧モデル」という呼び方は正確ではない。なぜなら、M1搭載のMac miniが発売された後でも、6コアのインテルCore i5搭載のminiは、Macの現行ラインナップに残っているからだ。これは、今回のM1搭載モデルが、少なくともこのインテル製6コア搭載モデルを置き換えるものではないことを示している。それはちょうど、インテル製のCPUを搭載したMacBook Pro 13インチの4ポートモデルが、2ポートのM1搭載モデルと並んでラインナップに残っているのと同じことだ。

●スペック表

Mac mini
(インテル)2018
Mac mini
(M1)2020
プロセッサー 3.6GHzクアッドコアIntel Core i3  6MB共有L3キャッシュ 3.0GHz 6コアIntel Core i5  9MB共有L3キャッシュ 3.2GHz 6コアIntel Core i7  12MB共有L3キャッシュ Apple 8コアM1チップ 8コアGPU 16コアNeural Engine
グラフィック Intel UHD Graphics 630
外部ビデオ 最大3台  Thunderbolt 3経由の4096 × 2304、60Hz × 2台  HDMI 2.0経由の4096 × 2160、60Hz × 1台 最大2台  Thunderbolt 3経由の5120 × 2880、60Hz × 1台  HDMI 2.0経由の4096 × 2160、60Hz × 1台 "Thunderbolt経由で接続した最大6K解像度、60Hzのディスプレイ1台 HDMI 2.0経由で接続した最大4K解像度、60Hzのディスプレイ1台  USB-C経由でDisplayPort出力  アダプタ(別売り)を使用してThunderbolt 2、DVI、VGA
メモリー 8GB 2,666MHz DDR4 SO-DIMMメモリー オプションで16、32、64GBを搭載可能 8GBユニファイドメモリー オプションで16GBに変更可能
ストレージ ベースモデルは128GB PCIeベースSSD 上位モデル、オプションで  256GB、512GB、1TB、2TB SSDを搭載可能 256GB SSD オプションで512GB、1TB、2TBに変更可能
サイズと重量 高さ:3.6cm 幅:19.7cm 奥行き:19.7cm 重量:1.3kg 高さ:3.6cm 幅:19.7cm 奥行き:19.7cm 重量:1.2kg
拡張性 4つのThunderbolt 3(USB-C)ポート 2つのUSB 3ポート(最大5Gbps) 2つのThunderbolt/USB 4ポート 2つのUSB-Aポート(最大5Gb/s)
ワイヤレス 802.11ac Wi-Fi(IEEE 802.11a/b/g/nに対応) Bluetooth 5.0 10/100/1000BASE-TギガビットEthernet(RJ-45コネクター) オプションで10Gb Ethernet(Nbase-T Ethernet)に変更可能 802.11ax Wi-Fi 6(IEEE 802.11a/b/g/n/acに対応) Bluetooth 5.0 10/100/1000BASE-TギガビットEthernet(RJ-45コネクター)
オーディオ 内蔵スピーカー 3.5mmヘッドフォンジャック マルチチャンネルオーディオ出力に対応するHDMI 2.0ポート 内蔵スピーカー 3.5mmヘッドフォンジャック マルチチャンネルオーディオ出力に対応するHDMI 2.0ポート

 スペック表を見比べると同じなのは本体サイズだけで、ほかはことごとく異なっているように見える。まず目につくのは、搭載可能なメモリー容量だろう。インテルモデルでは、標準で8GB、最大は64GBとなっているのに対し、M1搭載モデルでは標準で8GBは同じでも、最大は16GBに限られている。これはM1が、チップ内蔵のユニファイドメモリーを採用しているからで、同時に発売されたほかのM1搭載モデルと同じ事情によるもの。

 またインテルモデルは、SO-DIMMメモリーを採用し、着脱可能な2スロットを用意して、その気になればユーザーの手でメモリーモジュールを交換することも可能となっている。当然ながらM1搭載モデルでは、そのようなことは不可能だ。以前と同様、底面には着脱可能なように見えるプラスチック製のカバーがあるが、少なくとも以前のようには簡単に外れないようになっている。

 内蔵可能なSSDの最大容量は、いずれも2TBでこの点は同じ。インテルモデルの基本サイズは、2018年に登場した際には128GBだったが、現在購入可能なモデルは最小が512GBで、オプションで1TB、または2TBが選べるようになっている。

 もっとも大きな違いはThunderboltポートの構成と能力にあるが、それについては、少し後で改めて述べることにする。

 とりあえずスペックには目をつぶって、これまでのインテルモデルと今回のM1搭載モデルの価格だけを比較しても、M1搭載モデルはインテルモデルよりも下位に位置することになる。すぐ後で見るように、純粋なCPU/GPU性能だけを取ってみれば、M1搭載モデルがインテルモデルを凌駕しているが、それはMac miniシリーズの過渡期にあって、下位と上位のパフォーマンスが逆転している状態と捉えるべきだ。それでも、今回のM1搭載モデルは一般ユーザー向けで、従来からあるインテルモデルはプロユーザーを意識した製品という位置付けは変わらない。

 その位置付けの違いは、些細なことながら、ボディカラーにも現れている。6コアCPUを搭載した2018年モデルは、それまでのminiの明るいシルバーから、MacBook Pro仕様を思わせる暗いスペースグレーに変わった。そして、今回登場したM1搭載モデルは、再びシルバーの仕上げとなっている。これは、おそらく2021年以降には登場するApple Silicon搭載miniの上位モデルが、スペースグレーの仕上げで登場することを暗示していると考えてもいいだろう。その結果、Mac miniのラインナップは拡充されることになる。もちろん、インテルモデルが残るのではなく、今後登場する上位のApple Siliconモデルが、それを置き換えることになるはずだ。

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