TurboWriteの影響をチェックしてみる
ベンチマークの最後は「HD Tune Pro 5.75」を使って、TurboWrite 2.0の容量を超えた際のライトパフォーマンスを見ていこう。「980」1TBモデルのTurboWrite総容量となる160GBを超える200GBで「File Benchmark」を実行している。
「970 EVO」は40GBを超えたところで、1000MB/sec前半まで落ち込むが、「980」では160GBまで、2500MB/secのライトパフォーマンスを維持している。ただ、TurboWriteのSLCキャッシュ容量を超過すると、その性能は500MB/sec以下にまでダウンしている。
通常の使い方で発生する状況はあまりないが、500MB/secを切る速度まで低下してしまうのは残念だ。もちろん普段使いでもわかるような数十GBで、SLCキャッシュを超過してライト性能がダウンしてしまうよりは良いのは確かだが、低下時でも1000MB/sec程度の性能は欲しかった。
実ファイルのコピーを試してみる
実パフォーマンスのテストとして、124ファイル、63.7GBのフォルダーと、41.9GBの1ファイルのコピーをPCIe4.0 NVMe M.2 SSDのメインストレージ(Cドライブ)と、Dドライブの「980」と「970 EVO」間で実行。完了までに要した時間を計測した。
「970 EVO」は、両ファイルともにキャッシュを超過するため、データコピーの途中で書き込み性能は1160MB/sec程度までダウン。そのため「980」よりも、コピー処理に最大13秒も余分に時間が必要になっている。読み込み性能を測る「D」ドライブへのデータコピーでは、ベンチマークの結果がそのまま反映され、「970 EVO」が、若干高速に完了している。
「980」はヒートシンク装着が安心
テストセッションの最後は「980」の温度を見ていこう。「980」は従来モデルと同じく、NANDフラッシュメモリーだけでなく、コントローラーの温度もモニタリングできる。ここでは「HWiNFO64」を使って、ファイルコピー時(4回連続実行)の温度を記録し、最高値を抽出している。
さらに低コストPC自作の際に組み合わせるエントリーマザーボードのなかには、M.2ヒートシンクを標準装備していないモデルもあるので、ヒートシンクを装着しない状態でも計測している。
テスト環境は、CPUクーラーにオールインワン水冷ユニットを搭載しているため、M.2スロットへのエアフローは、ほとんどない状態になっているが、NANDフラッシュメモリーはヒートシンク装着時で56度、非装着状態でも64度と余裕を残している。
ただ、コントローラーは半端なく発熱しており、ヒートシンク非装着状態では、2分程度のファイルコピーで94度まで上昇している。追加で「CrystalDiskMark」のシーケンシャルを64GiBで連続実行すると、ヒートシンク非装着時のコントローラー温度は100度を超えてしまった。サーマルスロットリングは発生しないが、製品寿命のためにもヒートシンクを装着しての運用をおすすめしたい。
エントリーモデルとしては価格にもう一声欲しい「980」
今回試してきたSamsung初のDRAMレスNVMe M.2 SSD「980」の1TBモデル「MZ-V8V1T0B/IT」。SLCキャッシュ容量超過時に500MB/secを下回ってしまう最低書き込み性能や、高めのコントローラー温度といった気になる点はあるが、実測リード3500MB/sec台、ライト2700~2800MB/secのパフォーマンスはエントリーモデルとしては優秀だ。
ただ、現状では1TB=1万円台から中盤の価格帯は選択肢豊富で、DRAM搭載ながら1TBモデルが1万4000円前後まで値下がりしているADATA「XPG SX8200 Pro」や、Crucialのメインストリーム向けで、1TBで1万5800円前後の「P5」などがある。
「980」発売直後の価格は1万4480円前後であろうが、今後価格が落ち着き1万3000円台前半まで下がれば、高いシーケンシャルアクセス性能で低コスト、高コスパなNVMe M.2 SSDの定番筆頭になる可能がある。そういう意味でも、あえて激戦区のエントリークラスに参戦したSamsungの意気込みを買いたいところだ。
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