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作曲、卸、営業、FX、テレワーク、ジム、飲食、木材を進化させる多彩なスタートアップビジネス

スタートアップ8社がピッチセッションで熱弁、「ANOBAKA Conference」

 「ANOBAKA Conference」が2020年12月4日、渋谷ストリームホールで開かれた。ベンチャーキャピタル(VC)のKVPが親会社のKLabからMBO(経営陣による買収)で独立し、ANOBAKAと社名変更して最初のイベントで、投資してきた80社以上のスタートアップから厳選8社が登壇し、持ち時間5分でビジネスプランを披露して投資家にアピールした。会場とオンライン視聴の参加者投票数と投票内容で「事業内容の魅力度ナンバーワン」と「投資検討の可能性ナンバーワン」が表彰された。各社のプレゼンを紹介する。

動画クリエイター向けAI作曲クラウドサービス「SOUNDRAW」

 トップは、AI(人工知能)作曲の曲を動画クリエイターに提供するクラウドサービス「SOUNDRAW(サウンドロー)」の楠太吾社長。テーマやムード、長さなどを選ぶだけでAIが楽曲を自動生成する。直感的な操作のUI(ユーザーインターフェイス)でテンポや楽器、曲の構成や尺を自由に変更・編集して盛り上げる場面にピッタリ合わせた動画のBGMを作り、コマーシャルなど商業利用ができる。

SOUNDRAW 楠太吾社長

 ストック素材サービスでBGMを探してもピッタリな曲はなく、編集・納品後に「ハイテンションな曲にして」と修正を求められる苦労から動画クリエイターを解放する。6月からβ版、9月から正式版を提供して国内外100人以上の課金ユーザーを獲得した。2021年に2000人以上を目指してマーケティング活動や作曲家を集めるための資金調達をしている。

 イベントでSOUNDRAWは「投資検討の可能性ナンバーワン」に選ばれ、楠社長は「チームは質にこだわって世界でもトップレベルのプロダクトに仕上がっている。世界で通用するサービスにしたい」と喜びを語っている。

SOUNDRAW

B2Bマーケットプレイス「orosy」:スペースエンジン

 2番目は、B2B(企業間取引)マーケットプレイス「orosy(オロシー)」企画・開発・運営のスペースエンジンの野口寛士・代表取締役CEO。卸仕入れ取引を効率化できる事業者専用の卸・仕入れサービスで、ECのメーカー直販(D2C)でオンラインブランドを製造するサプライヤーと小売店舗のバイヤーをマッチングする。

スペースエンジン 野口寛士代表取締役CEO

 サプライヤーは卸価格や条件をorosyに登録して卸販売を始め、バイヤーで高感度商品を希望する店舗はorosy内で商品検索して条件に従って仕入れて販売する。野口CEOは「メーカーと店舗をつなぐB2Bの卸売で消費者は利用できない」とし、EC作成サービスの「STORES」や「BASE」でECサイトを運営するクリエイター商品の販売を支援する。「『Shopify』が乗り出して激戦になってきた。僕らは日本の商材を集めて輸出したい」と今後の抱負を語った。

スペースエンジン

FXや仮想通貨の自動売買プラットフォーム「QUOREA」:efit

 3番目は、AIを活用した外国為替証拠金(FX)と仮想通貨の自動売買プラットフォーム「QUOREA(クオレア)」を運営するefit(エフィット)の宮原勝利代表取締役CEO。資産運用を支援する投資ロボットを投資初心者でも簡単に利用できるサービスで、金融機関がパッケージ化した投資ではなく、自分にあった投資ロボットを選んだり作ったりして活発に個人投資家が投資できる環境を目指す。

efit 宮原勝利代表取締役CEO

 ロボットは既に3000以上になった。宮原CEOは「今は一般投資家向けにB2C(企業と消費者の取引)モデルだが、証券会社にロボットを販売して(B2C事業を支援する)B2B2C事業に乗り出したい」と次の戦略を語った。

efit

セールエンゲージメントツール「Srush」

 4番目はセールステック企業でセールエンゲージメントツール「Srush」を運営するSrushの樋口海・代表取締役で、12月14日にベータ版をリリースしたサービスをこの4日に初めてピッチした。

Srush 樋口海代表取締役

 取引関係にある顧客を定期訪問する営業手法のルートセールスを支援し、顧客との関係性を数値化する国内初のツールとアピールした。営業活動データを自動収集してAIがスコアリングして次のアクションを示す。

 アポイント調整や訪問先へのルート検索などの作業は自動化して事務作業から営業マンを解放する。大手のCRM(顧客関係管理)のように案件管理が目的で作業負担が重いツールではなく軽くてライトなツールで、樋口代表は「営業担当者が顧客と向き合う時間を作り、最初に相談される信頼関係を築くツール。セールスエンゲージメントの分野は米国で急成長しており、コロナ禍でますます重要になっている」と語っている。

Srush

オンラインフットネススタジオ「SOELU」

 5番目は国内最大級オンラインフットネススタジオ「SOELU(ソエル)」を運営するSOELUの蒋詩豪・代表取締役が登壇した。

SOELUの蒋詩豪代表取締役

 ヨガやピラティス、トレーニングプログラムをインストラクターとビデオ通話で指導を受けられるライブレッスンを提供して7期目に入った。5時から24時まで1日100クラス以上開講しており、自宅からいつでもスマートフォンやタブレットで受講できる。インストラクター以外に自分の姿は見られないシステムでプライバシーに配慮し、ジムやスタジオより低価格で30日100円キャンペーンで試せる。

 運動が習慣化できない課題を克服するため、手軽さ、強制力、中毒性の3要素を備えたフィットネスにした。会員の継続率も高く、ユーザー属性は40代までの女性から40~50代も増えて男性も多くなった。インストラクターの脱退率は1%未満。蒋CEOは「3年間競合ゼロからコロナで増えてきたが、後発が追いつけない仕組みを3年間作ってきた。500億円市場のオンラインフィットネスで50%以上のシェアを取り、2030年までに100万人を獲得したい」と話した。

SOELU

テレワーク・リモートツール「roundz」

 6番目はテレワーク・リモートツール「roundz(ラウンズ)」を運営するroundzの合田翔吾・代表取締役が登壇した。

roundz 合田翔吾代表取締役

 リアルタイムで同僚とつながり、テレワークでやりにくくなった「今ちょっといい?」と隣にいるように話しかけるツールで、「声のバーチャルオフィス」を掲げ、既に200社以上が導入している。あえてカメラを使わないが相手のステータスを自動検知して話しかるタイミングが分かり、テキストチャットやWeb会議よりも気軽で軽快なボイスチャット機能でチームの会話を促進する。

 合田代表は「常駐デスクトップアプリでワンクリックで会話がスタートする。朝の声かけで1日会話がしやすくなる。上司はチームの様子がわかって安心でき、新人はチームになじみやすい」と説明した。

roundz

メニューグルメサイト「SARAH」:sarah

 7番目はメニューグルメサイト「SARAH」を運営するイートテック企業のsarahの高橋洋太・代表取締役。外食の店舗単位ではなく、コンビニエンスのデパ地下の中食も加えたメニュー単位の投稿や検索が可能で、「渋谷のポテトサラダ」とメニューで探してこのひと皿出会える。さらに約70万投稿、MAU(月間アクティブユーザー数)170万人の口コミを基にしたメニュー単位のデータでトレンドを探る外食ビッグデータ分析サービス「Food Data Bank」で企業の商品企画やマーケティングを支援している。

Sarah 高橋洋太代表取締役

 高橋代表は「POS(販売時点情報管理)データは何が売れたかは分かるがなぜ売れたかはわからない。プリンなら口コミ分析で食感に言及がある『堅いプリン』が伸びていると分かる」と説明した。このほか飲食店向けメニュー電子化サービス「SmartMenu」も提供中だ。テーブル上の機械にタッチした顧客のスマートフォンにメニューが表示され注文ができるサービスで、モバイル決済機能だけでなくSARAHデータと連携してリピート客を増やす活用ができる。

SARAH

木材ライブラリープラットフォーム「eTREE DASH」:森未来

 イベント最後の8番目に登壇したのは木材ライブラリープラットフォーム「eTREE DASH」を運営する森未来(SHIN-MIRAI)の浅野純平・代表取締役CEO。全国の木材情報データベースを閲覧して、実物が欲しい場合は木材サンプルを注文できるオンラインとリアルの木材ライブラリーサービスで、7月27日に正式版の提供を始めた。

森未来 浅野純平代表取締役CEO

 木造建築の設計士やインテリアデザイナーはどこにどんな木材があるのか分からず、サンプル集めも時間がかかり、全国の製材所や材木店は提供エリアが限られ他の地域で販売できずにいた。木材情報とサプライチェーンが断絶した状況を改善して、新しい木材流通の構築を目指している。浅野純CEOは「IT業界出身だが森林の課題に出会って使命感をもってやっている。森林を持続可能にして次世代に伝えたい」と語った。ピッチイベントでeTREE DASHは「事業の魅力度ナンバーワン」に選ばれている。

eTREE DASH

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