さらに追求したら単純に電源プランを切り替えている
というわけではないことがわかった
検証は、20H1/20H2(Windows 10 Ver.2004/20H2)で実施したが、どうもModern Standbyの場合、単純に電源プランを切り替えているわけではなさそうだ。同じ、Powercfg.exeの隠しコマンドにある「/alieaesh」を使うと、見かけないスキーマが表示されている。
このコマンドは、GUIDで表示されるスキーマのパラメーターをわかりやすくするためにPowercfg.exe内で使われているエイリアス文字列を出力するものだ。
その奇妙なスキーマとは“OVERLAY_SCHEME_NONE”“OVERLAY_SCHEME_HIGH”“OVERLAY_SCHEME_MAX”“OVERLAY_SCHEME_MIN”の4つだ。これを手がかりにいろいろと調べていくと、どうも、これが電源スライダーに関係があるようだ。このあたりについては、動画だがMicrosoft自身による解説がある。
●Channel 9 Defrag Tools #190 - Performance Power Slider(英語)
https://channel9.msdn.com/Shows/Defrag-Tools/Defrag-Tools-190-Power-Slider
つまり、電源スライダーの位置に応じて、電力プランのスキーマにオーバーレイスキーマを適用して一部を変更したものをWindowsの電力管理設定としているようだ。前記4つのオーバーレイスキーマのうち20H2で実際使われているのは、“OVERLAY_SCHEME_MAX”“OVERLAY_SCHEME_MIN”の2つだった。“OVERLAY_SCHEME_NONE”“OVERLAY_SCHEME_HIGH”は、中身が何も定義されていない。定義されているスキーマの内容を見るには、以下のコマンドが使える(要管理者権限)。なお、バッテリーを搭載したマシンでないと何も表示されない。
powercfg.exe /qh OVERLAY_SCHEME_MAX
powercfg.exe /qh OVERLAY_SCHEME_MIN
中身だが、プロセッサー、GPUの電力動作と機種によってはIntelのチップセット向けの設定が入っているようだ。
もともとの電源プランであるバランス(SCHEME_BALANCED)に対して、このスキーマで定義されている項目を適用し、性能重視、バッテリ重視のスキーマを作っているのだと考えられる。
オーバーレイになるSchemeに入っていたのは「プロセッサの電力とパフォーマンスの優先度ポリシー(PERFEPP)」や「GPU の基本設定ポリシー(GPUPREFERENCEPOLICY)」など。これらは、/QHオプションでSCHEME_BALANCED(電力プランのバランス)を見るとすでに定義済みのもの。ただし、オーバーレイ側のものは設定値が違う。
一部、欠けている値があるほか、OVERLAY_SCHEME_MAXには、OVERLAY_SCHEME_MINでは定義されていない「プロセッサ パフォーマンスの向上しきい値(PERFINCTHRESHOLD)」なども定義されている。
電力スライダーは、AC動作時には3段階、バッテリ駆動時(DC)には4段階ある。
OVERLAYで始まるスキーマが4つあるので、それぞれに対応しているのかと思ったら、そうでもない。おそらく、メーカー側で電力スライダーをカスタマイズする場合に備え、4種類を用意しているのだと思われる。
しかし、オーバーレイするスキーマが2つあれば、オーバーレイを適用しないという組み合わせで3段階のスキーマを作成できる。また、バッテリー駆動時の「電力節約状態」は、バックグラウンドタスクの制限などがあり、スキーマとは別に電力管理以外での制限があるため、スキーマでは制御していない、あるいはOverlay_Scheme_minをベースにしていると考えてもいいだろう。
というわけで、ユーザー側からは触りにくくなったが、Modrn standbyでもやはり電力プランやスキーマが使われていることがわかった。この仕組みにはメーカーによるカスタマイズの可能性もあるようなので、手元の機種を調べてみるといいだろう。
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