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山谷剛史の「アジアIT小話」 第173回

アフターコロナのあと中国はどのような新たなITサービスが盛り上がったのか

2020年12月31日 09時00分更新

文● 山谷剛史 編集● ASCII

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5Gの活用で都市部と農村部の格差は埋められるか

 ネットインフラ絡みでのニュースではIoTの話がよく出た。先行する小米(シャオミ)をはじめとしたスマートホーム製品が身近になった感がある。公園では運動データや園内データを表示するデジタルサイネージが設置されたほか、タッチパネルのデジタルサイネージやネットワークカメラ、各種センサーが一体化した電柱が中国各地の都市で導入され始めた。

運動して遊べる機器を導入したスマート公園

 農村もまたネットインフラ導入が良く報じられた。新型コロナでは武漢で緊急で作られた病院「火神山医院」などには、5G基地局が建設され、会議システムやCTスキャンの画像データ送信などで活用されたが、一部の農村では集落に5G基地局を建てて学校や農場で用いられた。

 中国の学校ではオンラインで教える環境はあり、農村部でも教師と生徒の間でオンライン授業は実現されていた。5G導入により、沿岸部の大都市の学校とリンクしてリモート授業を受けることができるシステムを一部の学校で導入した。高解像度で大画面でもぼやけず授業を表示できるようになった。特に役立つのが音楽の授業。遅延の小ささにより、遠方の学校を繋いで合唱が可能になったという。

 また5Gの恩恵で、農場からのライブコマースで農作物を販売するという報道をよく見るようになった。それ自体は4Gでも可能なことなのでややプロパガンダ的な部分は否めないが、5Gの導入で、技術格差や所得格差を減らそうとしているのは確かだ。また、都市部の病院が農村部の人々を診察する遠隔医療を導入したというニュースも見るようになった。

 いずれもゼロから作り出したわけでなく新型コロナ対策のソリューションの積み重ねから自然と農村向けにアレンジしたものと言えるだろう。今のスマホやパソコンは性能によってできることが明らかに違う時代ではなく、安価なスマホやPCだって、ゲーム以外はそれなりに使える時代だ。クラウドサービスを活用することにより、中国の都市部と農村部の格差が埋められていっている。

 2021年の中国ITは、この2020年を基点にさらに発展していくだろう。業界自体がバブル崩壊とともにユーザー数を減らすということもあるだろうが、できることはもっと増えていくはずだ。

 

山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」(星海社新書)、「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)などを執筆。最新著作は「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク

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