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山谷剛史の「アジアIT小話」 第173回

アフターコロナのあと中国はどのような新たなITサービスが盛り上がったのか

2020年12月31日 09時00分更新

文● 山谷剛史 編集● ASCII

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スマートシティやQRコードの活用で
地域を細かく分けてロックダウンを実施した中国

 2020年、中国は全土的な新型コロナウイルス感染拡大の危機をITを活用して脱し、4月にはマスクを着用しつつも元の生活に戻り始めていた。

 具体的な状況としては、

・ロックダウン→スマートシティにより地域を小分けして実施。健康状態がわかるQRコード「健康コード」を導入
・ロックダウン下での買い物→デリバリーとECとライブコマースで配送
・学校→スマートフォンを活用したオンライン授業
・仕事→在宅でのリモートワーク
・医療現場→AIでCTスキャンの画像を高速分析で感染確認、ロボットによる消毒作業、5Gによるリモート診療
・マスク等医療物資製造→スマート製造でニーズに応え高速製造

といった具合だ。

 もう少しだけ詳しく書くと、最初は武漢など湖北省の都市を中心に、がっつりとロックダウンが敷かれた。すでに構築されているスマートシティを活用し、感染者がいる場所だけロックダウンをするようにして、人々は緑黄赤で感染リスクのある場所にいたかが確認できるQRコード「健康コード」を帯同した。

 ロックダウン下で人々はデリバリーやECサイトでの買い物に頼った。デパートは客が来なくなり商売もあがったりなので、ライブコマースを活用して化粧品などを販売し、店員がオンラインで化粧品販売コンサルをするようになった。車や不動産企業では、なんとか売ろうとVRを導入して、体験してもらう場を作った。旅行も当初は国内旅行すらままならない状態だったので、VRやライブストリーミングを活用して現場からの旅行動画を配信し、それを人々は同じタイミングで共有して盛り上がった。

 オンライン教育については、数年前から学校にITインフラを導入し教師に授業動画を撮影・配信するよう政府が指示していたことや、国民的チャットアプリ「微信(WeChat)」で教師学生保護者との連絡が可能となっていたことから、多人数同時のビデオチャットサービスなどを急遽導入し、オンライン教育への移行はすんなりと進んだ。

学校で新しいリモート授業が模索され続けている

 中国のITによるコロナ対策の一部だが、大きな柱としてはざっとこんなところだ。詳しくは拙著「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)も合わせて読んでいただきたい(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク)。

 で、前置きは長くなったが、当記事は同書の後に、中国のITサービスはどう成長したかという話である。

ロックダウン下で一大ブームになった「ライブコマース」
マンション単位での食品まとめ買いがシステム化

 中国におけるコンシューマー市場におけるアフターコロナのITトレンドとしては、ロックダウンを経て市民権を得た「ライブコマース」が挙げられるだろう。有名人ならいいものを特別価格で販売してくれるだろうとばかりに、ECサービスの台風の目となり、6月18日の618セールと11月11日の双11の2大ネットセール日には、各配信者がどれだけ売上高を記録するかが話題になった。

百貨店の化粧品販売にライブコマースが活躍

 ともすれば、配信者とマルチチャンネル ネットワーク(MCN)が注目を集め、中国各地の地方政府がMCN産業を立ち上げようとする動きがある。またオンライン旅行予約サービスでも導入され、中国旅行業界でカンフル剤となったりアリエクスプレスでライブ配信を導入する動きがあったり、後述するが農村からの農作物販売に活用されたりといった、新しい市場への導入も見られる。

農民が農作物をライブコマースで配信

 一方でメインのEC市場はすでにレッドオーシャン状態で、一部の配信者が売上の多くを占める寡占状況になっている。ライブコマースでの詐欺や数字水増しなどの悪材料の増加も冷や水をかけている状態で、中国での関連ビジネスへの投資や報道は早くも熱が下がっている。

 余談だが、アリババは2020年の双11に合わせ「新零售(ニューリテール)」に続く概念の「新制造(新製造)」と、新制造の企業「犀牛智造」を発表。新型コロナ下において、インターネットでのオーダーメイドのマスク量産で活躍した各社の工業向けインターネットを、アリババは新制造という名称でアピール。アリババのECサイトに出店するショップが注文を受けると、小ロットから生産するというものだ。

 また、「社区団購」も2020年を代表する新サービスだ。これは日本語で言い換えると「大規模マンション住民向け生鮮まとめ買いサービス」と呼ぶべきもので、アリババ、京東(ジンドン)、滴滴(Didi)、美団(メイトゥアン)などネット大手がこぞって参入し、値下げ競争を展開するホットなサービスだ。

新型コロナを期に社区団購がブレーク

 これは専用アプリから生鮮食品を購入すると、大規模マンションの代表(管理室など)がまとめて注文をして、翌日その代表のところに倉庫からまとめて届くという仕組み。これにより野菜を購入するのでも、農家から地方市場、中央市場、小売へといったステップが大幅に省略され、安く手に入るわけだ。

 新型コロナでは住民が外出できないことから、各住民の欲しいものリストを代表が集めて、近所のスーパーや市場でまとめて購入していた。アフターコロナではそれをシステム化したサービスが続々と登場し、住民の認知とネット大手の参入の掛け算で普及が進んでいる。

 オンライン教育(K12)もさまざまなサービスが登場した。ライブストリーミングや会議システムによる学習ほか、学力に合わせて自分で学習できるAIの導入が鍵になっている。また家で講座を受けられるインストラクターや、AIがオンラインで教えるフィットネスサービスも続々と登場。振り返れば中国での感染拡大中には、Nintendo Switchのリングフィットアドベンチャーが飛ぶように売れていたが、消費者心理としてはその延長で中国サービスを利用したのかもしれない。

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