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業務を変えるkintoneユーザー事例 第96回

目指せ生産性向上200%!SIerと外部人材を活用して事業部門がシステム構築

現場が課題を見つけてkintoneで内製化 日清食品が目指す新しいIT部門のあり方

2020年12月21日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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業務部門は現場で自分の欲しいものを作る IT部門は?

 これまでのIT部門では、業務部門から上がってきたたくさんの要望をとりまとめ、その一部を社外の専門家に相談。さらにその一部が実現するという仕組みだった。そのため、業務部門から見ると、IT部門は仕事をしていないように見えているという課題があった。

 そこで、成田氏は業務部門は現場で自分たちが欲しいものを作り、IT部門は仕組みの提供と活用の支援を行なうというように、関係性を変化させることにした。

コストセンターでボトルネックだったIT部門の立ち位置を変えた

「われわれの考える内製化とは、IT部門に限らず、エンドユーザーである業務部門自らが課題を見つけ、解決策を考え、実際に解決することを通じて、デジタル化に取り組む文化を醸成することです。最初は、想像もできないという感じですが、kintoneを使って、業務改善をしていると、自然とこういう流れになってきます」(成田氏)

 情シス部門がプロジェクトをとりまとめたり、ガバナンスをコントロールしたり、業務部門の課題を洗い出す。その上で、業務部門がkintoneアプリを作成するのだ

 成田氏は、業務部門から相談のメールが来たら、最初の打ち合わせの前にアプリを作ってしまうそう。打ち合わせで見せてしまうと、とても驚くとのことだが、当たり前だ。さらに、一緒に画面を見ながら打ち合わせしつつ、その場で改善してしまうとさらに驚くという。

 そこから業務部門に使ってもらってフィードバックをもらって改善するというプロセスを数回繰り返すと、使えるアプリになってくるという。実際に業務で利用できるシステムが1~2週間でできるスピード感は、業務部門にすごく喜んでもらえるそう。

「そうすると業務部門側の反応が変わってきます。実は他にもこういう課題があってなんとかならないか、と提案してくるのです。そうすればしめたものです。だんだん彼らも触りたくなり、自分たちでもやらせてもらえませんか、と言ってきます。そうしたら、情シス部門でサポートをするので、あなたたちで作ってください、一緒にブラッシュアップしていきましょう、という流れです」(成田氏)

内製化とは業務部門自らがデジタルで課題を解決する文化を醸成すること、と成田氏

SIerや複業人材からも知恵とノウハウを借りる柔軟さ

 日清食品グループではkintoneのディープなカスタマイズをノーコードで行なえる「gusuku Customine」も導入している。そして、開発元のアールスリーインスティテュートにサポートをお願いしたそう。kintoneのアカウントを作り、定期的にウェブ会議をして具体的なアドバイスをもらうのだ。

 しかし、アプリやカスタマイズの開発は依頼しないという。「われわれが手を動かす上での知見を提供していただいています。これによって生産性が非常に上がっています」と成田氏。ノウハウを自社に蓄積する賢いスタイルといえるだろう。

「kintoneを導入してもいろいろ苦労されている会社さんもいます。われわれが活用していく中で、そういった落とし穴にはまらないように、うまいことやっていきたいなと思いました」(成田氏)

 そんな美味しい話があるのかと思ったら、なんと成田氏は他の企業で活躍しているkintone担当を複業人材として招いたのだ。

「私はkintoneを日本で一番活用しているのは星野リゾートさんだと思っています。そこで、星野リゾートでkintoneを担当している前田さんにお願いして、複業で入っていただきました。前田さんが初めてkintoneを触った時の状況や、そこからkintoneをどういう風に活用して、どういう風にスキルを上げたのかという経験をいただいて、我々のガバナンスのルールを組み立てたりしました」(成田氏)

SIerと複業人材を活用し、業務部門の相談役として情シス部門が活躍するようになった

 大胆だが、これ以上ない効率的な施策だ。確かに、情報システム部が業務部門の支援をするとか、SIerや複業人材からアドバイスを受けるのは、どちらかというとコストダウンにもつながるので、大企業でなくてもチャレンジできる施策だ。社内にkintone文化が醸成されてしまえば、その後のDXは雪だるまが転がるように進んでいく。そのフックとしてはとても参考になる内容で、勉強になったセッションだった。

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