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〈後編〉ITジャーナリスト高橋暁子とマカフィー執行役員青木大知が語る

大人が知らない子どものお小遣い稼ぎ&誹謗中傷の実際

2020年11月16日 11時00分更新

文● せきゅラボ

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大きな波紋を広げたネットでの誹謗中傷事件と、スマホ&ニューノーマル時代のお小遣い稼ぎなどについて、引き続きITジャーナリスト高橋暁子さん、マカフィー執行役員 青木大知さんに語っていただいた

ネットでの誹謗中傷と子どもたち

── 次は「ネットでの誹謗中傷」についてお伺いします。今年夏、某リアリティショーを発端にして、誹謗中傷を苦とした自殺事件が起きました。それに伴ってネットでの誹謗中傷について深刻に受け止められる風潮になりつつあると思います。子どもたちはあのような事件をどう受け止めたのでしょうか?

青木 リアリティショーに限りませんが、視聴者にとって誹謗中傷の対象となりやすい出演者は、基本的に「テレビの中」の存在で、直接どうこうできる相手ではありません。反面、誹謗中傷する場所はネットやSNSといった「テレビの外」です。

 匿名性が高いので、誰でも誹謗中傷できてしまうし、オンラインだから拡散もしやすい。そして誹謗中傷を積極的に書く人もいますが、見る人のほうが圧倒的に多い。見る人が多ければ、やはり書く人にとっては魅力的な場になってしまっていると思います。いずれにせよ責任が伴いますし、誹謗中傷をしないためには倫理観や道徳観が重要だと思います。そういったことを今後は高橋さんが手がけているような情報教育で指導していく必要があるでしょう。

 テクニカルな視点では、誹謗中傷のような一見、匿名で実行可能そうな行為でも、IPアドレスを追跡すれば「書き込んだ人物を特定できる」ことを教えておくべきかもしれません。警察の要請があればISPも協力することで、より迅速・正確に特定できます。子どもたちには「実際にはネットに匿名性はない」ことを説明する必要があると思います。

 なお、ちょっと前に「note」に投稿したコンテンツから簡単に投稿者のIPアドレスを知ることができ、それを検索することでそのユーザーのネット動向が明らかになってしまう、という事件もありましたね。

高橋 誹謗中傷については以前から大きな問題です。講師としてお邪魔した学校でも「匿名で誹謗中傷されている」「生徒から誹謗中傷被害の相談が来ている」という相談は、かなり以前からありました。もはや、学校における人間関係のトラブルには、SNSでの問題が必ず含まれるといって間違いありません。

 人間関係に齟齬が生まれ、うまくコミュニケーションもできないために生まれた鬱屈した気持ちを吐き出す場として、個人に対する誹謗中傷が選択されてしまうことは少なくありません。しかし今回のリアリティショー出演者の誹謗中傷のようなケースは、「著名人だからそういうことをしていい」というような意識があったのかもしれません。

 「リアリティショーの中でこういう風に描かれていたから、そこに乗っかっていい」とか、「匿名だから好き放題書いてしまえ」といったことが重層的に重なり合って起きた事件だと思います。

 実際にはまったく被害を受けていないし直接の利害関係もないのに、テレビに出ている有名人を叩くことですっきりする。人が苦しむことによって自分の鬱憤が晴らせるとか、そういう思いがあるんですよね。

 自身の本当の問題には目を向けず、匿名の中で安全圏から攻撃してすっきりする。しかもそれがスマホの画面のなかでちょこちょことできてしまうので、その行為のあとどうなるのか、ということを想像できない面もあるようです。その結果、どんな事件が起こってしまうのか、他者をどれほど傷つけるのか……。トラブル減らすには、これらを事例で知ることが必要です。

 鬱憤を晴らしたいときに他人を攻撃するのではなく、どうすればいいのか? また、もしそういった行為をしてしまったときにどう対処すればいいのかを、リテラシー教育のなかで話していけたらと思っています。今回の件については、政府の対応は迅速で良かったと思うのですが、今後は教育も進めていくべきときだと思います。

政府(総務省)が提言する「インターネット上の誹謗中傷への対策

実社会でも「ネット上での評価」がものを言う時代

青木 誹謗中傷をした側も、された側も、今後の生活に影響がある可能性があります。ここ20年ぐらい、子どもたちを含め我々の生活のなかで「オンラインディテクション」「リファレンスチェック」が評価のポイントの1つとなっています。たとえば企業で新規採用をする場合に、その人となりをネットで検索することで知ることがある程度可能です。

 「デジタルタトゥー」という表現がありますが、過去に自分がブログやSNSなどで書いたことがネット上に残っており、それを知られることで第三者に評価されることがあります。そして言われなき誹謗中傷の被害を受けた場合でも「その人がデジタルにおいてそういう評判があった」という痕跡になってしまい、それを第三者がどう受け取とったかによって自分の評価に加わるという悲しい現実もあります。

 実際とは違う姿がオンラインから得られ、評価されてしまうのです。これは日本だけの問題ではなくて、海外でも同じですし、悪意ある人は偽装するケースも出てきているそうです。

── 偽装、ですか!?

青木 わかりやすくいえば、自分の学歴を偽るなど行為ですね。ネットでの評価を上げるために、SNSのフォロワーを買うこともできる時代に、どうやってオンラインの人物を評価すればいいのでしょうか? ネットでの人物評をまったく参考にしないというポリシーを貫ければいいのかもしれませんが、なかなかそういう風にはいかないですよね。

 こういった「ネットでの評価」についても子どもたちは学んでいいかもしれません。自分の評価がすべてオンラインで行われてしまった結果、死を選ぶようになってしまうのは大きな問題だと思います。現在はオンラインでの評価の強さがあまりにも目立ってしまっているのですが、「ネットで叩かれて辛いけど、ネット以外での評価もある」いうことがわかれば、誹謗中傷を受けた人にとっても心強いのではないかと思います。

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