山もちらほら赤くなり、秋が深まってきましたね。3歳児くんの保護者をしてます盛田諒ですこんにちは。先日、数少ない友だちの1人である小林くんが遊びに来ました。子は飛行機のレゴをもらって大興奮。小林くんが帰ったあとも「小林くんが飛行機くれたね」とくりかえし話していました。子どもとしては小林くんのことを飛行機をくれる人だと思っている可能性がありますね。
あとになって気づいたのですが、これは子どものころ親が「〜〜くん」「〜〜さん」と言っていた、いわゆる「大人のつきあい」ではないですか。実際大人のつきあいなんですが、イメージとは全然違っていました。でも子どもの目から見れば、小林くんと私は大人に見えているわけですよね。
そうしたら私は子どもからしたら父親に見えているわけですよ。いやそんなん当たり前ですやんって話ですが、自分の父親と今の自分ではもうイメージが違いすぎるんですよね。鏡に映った自分の姿に「いやアンタ父親ってほんまかいな」とエセ関西弁が出てしまうほどのギャップがありまして。このギャップがあるからこそ、私はいわゆる「父親の自覚」が持てていないのかもしれません。
●普通の親というモンスター
結局のところ親もただの人だし、家庭もただの場所にすぎない。大人になって幻滅とともにそう気づかされることが増え、親や家庭に対するイメージは亡霊のように消えていったものと思っていました。ところがいざ自分で家庭を築く段になると、親や家族のイメージは消えるどころかむしろマシュマロモンスターのように巨大な姿で戻ってくるんですよ。
何かにつけて親の目が気になるというか、親ならどうするってことを考えてしまうというか。たとえば自分の子どもに対する態度からして、親の影響丸出しなんですよね。
私の母親は遠慮がちな性格で「いいよ、いいよ」というのが口ぐせ。子どもが私のドーナツを食べたがったときに「全部食べていいよ」と言って丸ごとあげてしまったりするのは母親の影響です。父親は世間で話題になっていることをいつもベラベラ解説している「歩くワイドショー」と言ったような性格。私がよく知らないことを子に訳知り顔で話してしまうのは父親の影響です。
これが原因で妻との関係を悪くしていることも多いです。私は謝ればその場がおさまるというときでも、自分が間違っていると思えなければ意地でも謝らないという非常に面倒くさい性格なのですが、それはひねた性分に加え、互いに持論を曲げなかった両親たちの影響を強く感じます。
やはり妻と言い合いになったとき「普通の夫婦の会話がしたい」ということがあります。この「普通の夫婦」というのも恐らくは同じで、ありもしもない架空の夫婦をイメージに思い描いてるんですよね。そこで無意識にイメージしているのがやっぱり自分の親の姿。良きにつけ悪しきにつけ、親のイメージを通して今の家族を見てしまっているわけです。
●親をまねるのではなく、親になる
そうしていまだに親の影響を受けている私を、子どもは親として見ているわけです。子どもが子どもを育てているような状況で、子どもがあわれに見えてきます。親にとって子どもはいつまでも子どもだとよく言いますが、子どもにとって親はいつまで親なのかなあと。私はいつまでありもしない親や大人のイメージを持ちつづけることになるんですかね。
親を意識することなく、あくまで自分自身として子どもに向き合うこと。親のまねをするのではなく、自分を親として認めること。それが親になることなのかもしれない。私が親になるっていうことは、ようやく親離れができるようになることを意味しているのかもしれないなあと思いました。抽象的な話ですが、鏡に写った自分自身を認めるようなものかもしれないです。
そう考えると、「あっいま親を意識してるな」と気づいたとき、いったん行動を止める時間を作れたらいいのかなあと思うのですが、なかなか難しいですよね。そのうちにだんだんと父親の自覚ができてくるのかもしれませんが、もうしばらくはイメージに振り回されつづけるんじゃないかと思います。3歳児くんよ、いまお父さん修業中なんだ。すまねえがもうちょっと辛抱してくれい。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。3歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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