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現場に負担を一切かけない原価管理システム「GenKan」

多品種少量生産の中小製造業の原価削減を一気に加速

連載
このスタートアップに聞きたい

 株式会社KOSKAは、製造業の原価管理をIoTで自動化することで製造業の収益を改善するシステム「GenKan」の開発、販売を行っている。

 「GenKan」を利用すると、工場などの現場で日々行われている製造工程から発生する原価をリアルタイムで把握し、見積もりとの相違がどこで発生しているのか可視化できる。2020年10月19日「GenKan」正式版リリースに合わせて、株式会社KOSKAのCEO/代表取締役曽根健一朗氏とCOO/執行役員王軒の王軒氏に「GenKan」について話を伺った。

RFIDタグとカメラセンサーで製造原価の7割を占める加工費を把握する「GenKan」

 現在世界を覆っているコロナ禍は、中小の製造業にも深い影響を及ぼしている。得意先からの受注が主で、販路拡大や販売価格の値上げがしづらいため、コスト削減や多様な顧客の要望に応えていかなくてはならない。その結果として多品種少量生産という形態が当たり前となると同時に、製造原価の把握が難しくなってきているのが現状である。

 一次請けとなるような製造大手ではIoT技術を駆使することにより、製造現場で起こっているすべてをデータ化、解析することによってコスト削減を進めようとしている。しかし、中小企業が同じことをやろうとしても、システム導入・運用にかかる負担、特に現場の作業者にかかる負担が大きすぎて、せっかくの技術の導入を諦めてしまっているところが少なくない。

 GenKanは、「現場作業員の負担を増やさないこと」を基本コンセプトに、中小製造業における原価の7割を占めると言われる加工費のリアルタイム把握を目指すシステムである。

 導入する際、現場に新たに入ってくるのはRFIDリーダーと作業場所を写すカメラセンサーだけ。あとは作業者が日常的に使っている作業指示書にRFIDを貼り付け、対応する製品名とロット番号をシステムに登録すれば事前準備は完了となる。

 作業員はRFIDリーダー上に作業指示書を置き、通常通りの製造業務を行えば、カメラセンサーが作業にかかった時間を計測し、自動的にコストを計算してくれる。すべての工程はシステム上にリアルタイムで反映され、どの製品のどの工程にどれだけの工数がかかっているのか把握できる。毎日の作業において突然特定の工程に大きな時間がかかるようになった、といった状況をリモートで知ることができるため、余分なコストを長期間放置することなく、即時に対処できるようになるという。

多品種少量生産の現場をデータ化する

 株式会社KOSKAでは、設立から一貫して製造業の原価管理に絞ったシステム開発・販売を行ってきた。従来は大量生産現場もターゲットに入っていたが、今回正式版をリリースした「GenKan」は、中小製造業における多品種少量生産にフォーカスを当てている。

「会社の規模が小さくなると、7、8割の企業で多品種少量生産をやっている。1つの現場で複数の製品を同時生産しており、そのためいつ・誰が・何を作ったかを把握するためには、作業員に詳細な日報を書いてもらったり、直接現場に見に行くしかない。DXでやろうとしても、現場の人が情報を入力しないと結局システムに反映されない。特に受注型で小規模の会社では現場作業員にそういう余裕はない。

 その前提に沿って、原則、作業員さんは一切何も書かない、入力しない。GenKanではセンサーによって受注ごとの稼働状況などの現場を管理するには必要な情報をすべて取り、その結果どのくらいの労務費がどの工程でかかっており、どの製品にコストを割り当てるべきものなのか判別できるようになっている」(王氏)

株式会社KOSKA COO/執行役員 王 軒氏

「ある板金業界の社長の方に言われたんですが、今月の受注量に比べて現場にあふれている製品の数がなんか多いような気がする、といったことが頻繁にあるが、結局実態はよくわからない。今どの製品がどう進捗しているかすらあやしい、と。

 多品種少量生産の現場では、納期までの20日とか1か月などの期間に、作業場には複数の製品に向けたさまざまな部材が山積みになる。さらにその受注も並行して行われる。そういう状況において、ではどの製品にどのくらいの時間をかけたのか、実際の工数はどのくらいだったのか、といったデータを取ろうと思ったらかなり難易度が高くなる。結果的に、ほとんどやっていないというのが実情です。見積もりも、工数を見積もって出すわけですが、それが正解だったかどうかは全くチェックできない。これが基本的な製造業の現場で起こっている現状です。

 ぱっと見でどの製品がどのくらい進捗しているのかがわかる。これだけでもそもそも今まで全然できなかったことですが、GenKanでは出荷が終わった瞬間に原価が出せる。見積もりに対して原価がどうだったかを追える。そうすると営業さんにとっても週当たり、月当たりなどで見積もりと実際がどのくらいずれていたかをKPI化していくことができ、その後の営業活動に活かすことができる。そういう仕組みを提供しています」(曽根氏)

株式会社KOSKA CEO/代表取締役 曽根 健一朗氏

シンプルなサービスだから海外展開にもマッチする

 今回サービス提供が開始された「GenKan 中小企業向け導入プラン」は初期費用0円、月額費用4万8000円で7つの製造工程のデータを取得することができるサービスである。もちろん取得したデータを閲覧するダッシュボードと呼ばれる管理ソフトの利用料も込みとなっている。さらに多くの工数のデータが取りたい場合は、1工程毎に月額費用3000円で追加することができる(1工程当たりセンサ2台まで)。

 また、現場に一切の負担をかけないというシステムコンセプトは、海外に工場を展開している事業者にもマッチしている。事前の作業工程見直しや運用トレーニングを必要とする原価管理システムをリモートにあり文化も違う海外工場に導入するのは非常に困難だ。しかし「GenKan」ならば事前教育はほぼ不要。残念ながらコロナの影響で止まってしまっているが、海外でのトライアルも予定されていたとのこと。今後の展開に期待したい。

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