月額5万円で24×365の正常性監視、またサポートエンジニアの完全在宅勤務化についても紹介
セゾン情報、クラウド監視サービス「SAIMON」の本格展開開始
2020年09月23日 07時00分更新
セゾン情報システムズは2020年9月17日、カスタマーサービスセンターの事業戦略に関する記者説明会を開催した。昨年から提供しているマルチクラウド監視運用サービス「SAIMON(サイモン)」の本格展開開始を発表するとともに、テクニカルサポートシステムのクラウド化によるサポートエンジニアの完全在宅勤務化を行った取り組みについて紹介した。
時代変化に応じて顧客のリテンションを重要視、顧客窓口を集約
セゾン情報では2020年4月から、これまで社内で事業ごとに細かく分散していた顧客サービス部門を「カスタマーサービスセンター(CSC)」に集約した。現在は、金融/流通顧客のシステム運用監視サービスから「HULFT」「DataSpider」といった製品のテクニカルサポート/カスタマーサポートまで、顧客対応の窓口はこのCSCに一本化されている。
CSCのミッションについて吉原氏は、サービス/サポートのスピードとクオリティを向上させ、顧客のリテンションにつなげることだと説明する。かつてのように、システム運用を一度受託すれば10年、20年と継続して取引ができた時代ではなくなり、ITシステム/製品そのものも“所有から利用へ”と動きつつある。こうした時代においては、常に顧客へのリテンションを図り、「“次”も選んでいただけるサービス」を提供し続けなければならないという考えだ。
そのためには、丁寧で迅速、安定した品質のサポート/サービスを提供するだけでなく、「多様化する顧客ニーズを先取りし、社内に対して“顧客の代弁者”としてそれを伝え、製品やサービスに反映させる」ことが重要だと、吉原氏は説明する。
24×365の正常性監視/異常通知サービスを月額5万円で、SAIMONの特徴
CSCにおける新たな取り組みの1つめとして紹介したのが、マルチクラウド監視運用サービスであるSAIMONの本格展開開始だ。昨年4月から一部顧客に提供を開始し、現在は4社8システムの運用監視を行っている(受注済みのものを含めると6社16システム)。顧客から好評を得ていることから、「2020年内に20システム」への拡大を当面の目標としている。
SAIMONは、マルチクラウド環境(AWSとAzure)にあるさまざまなコンポーネントを対象に、24時間365日の正常性監視(死活監視、ログ監視)と異常通知を行う「監視サービス」と、この監視システムの導入や設定変更などの運用を代行/支援する「運用サービス」を組み合わせたものだ。もちろんオプションとして、セゾン情報の専門エンジニアによる障害対応や復旧のサポートサービスも受けられる。
顧客管理者への異常通知手段は、メールのほかSlackや電話を用意している。電話についてもオートコールシステムを採用しており、異常発生から時間をあけずに通知をすることができる。また、ダッシュボードを通じて管理者がセルフサービス型で稼働状況を把握することもできる。
SAIMONは、オープンソースソフトウェア(OSS)のシステム監視ツール「ZABBIX」と、クラウドサービス監視SaaSの「Datadog」を組み合わせて構成している。これにより、オンプレミスシステムからクラウドサービスまで幅広い監視対象に対応しており、一般的な監視製品の導入に比べて大幅なコスト削減ができるとしている。また、ZABBIXを通じてオンプレミスの統合監視ツールとの連携も可能であり、ハイブリッド/マルチクラウド環境を包括的にカバーできる。
もうひとつ、SAIMONでは検知された異常の内容に応じて特定の復旧コマンドを自動実行させたり、ダッシュボード経由でリモートから復旧操作を実行したりすることもできる。障害対応の迅速化だけでなく、障害発生のたびに管理者が出社して状況を確認、対応するといった無駄を省くことができるという。
さらに吉原氏は、これから訪れる“ネクストノーマル(ニューノーマル)時代”においては、IT運用監視業務もまた、場所に依存せず在宅でもできる必要が生じると指摘。どこにいても障害検知から状況把握、初動対応を行うことができ、さらに必要に応じてセゾン情報のCSC側で業務を代行できるSAIMONの活用を訴えた。
SAIMONの利用価格(税抜)は、初期費用が15万円から、基本サービスの月額費用が5万円となっている。オプションサービスは別途見積もり。また基本サービスならば、顧客企業の発注後5営業日で提供開始できる点も強みだと、吉原氏は説明した。
テクニカルサポートの完全在宅勤務を実現、大きな効果も
もうひとつ、CSCにおける最新の取り組みとして、HULFT/DataSpiderのテクニカルサポートセンター業務において完全在宅勤務化を実現したしたことも紹介した。同センターには、サポートエンジニア(L1、L2)やテクニカルアドバイザーが在籍し、日本語/英語/中国語で、保守契約顧客に対する24時間365日の対応を行っている。
両製品は金融/運輸/製造/公共など社会インフラを支えるシステムにも組み込まれており、緊急性の高い問い合わせもあること、またメインフレームからクラウドまでの幅広いプラットフォームで活用されていることなど、テクニカルサポートには高いサービス品質が求められると、吉原氏は説明する。
同テクニカルサポートセンターでは、顧客サービス基盤として2014年にセールスフォースの「Service Cloud」を導入。また東京オリンピックの開催を見越して、2019年からはCTI(電話システム)のクラウド化を進めてきた。さらに、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令されたため、プロジェクトを前倒しして2020年6月に「Amazon Connect」を導入している。これらのシステム導入によって、完全在宅勤務でも支障なくテクニカルサポート業務が行える体制が整った。
システム導入後、顧客のFAQ利用率は約5倍に増加したほか、問い合わせに対する当日解決率も30%から70%へと大幅に向上。また、同センターのスタッフにおける従業員満足度(ES)も、システム統合による作業簡略化が進んだ結果、50%から80%へと向上している。「問い合わせ案件数は右肩上がりに増えているが、サポートコストは横ばいを維持している」と、コスト効率化の効果も出ていると語る。
目標としていた完全在宅勤務化も実現している。吉原氏によると、以前のテクニカルサポートセンターはオフィス内で40~45席ほどを使っていたが、この日出社していたのは2人だけ。「ほとんど在宅勤務で、24時間365日の運用ができている」と述べた。
テクニカルサポートセンターでは、サービスレベルの目標値や実績値をWebで公開している。たとえば「当日解決率:50%」「翌営業日解決率:70%」という目標に対し、たとえばHULFT窓口では「当日解決率:72.2%」「翌営業日解決率:85.5%」を達成している(2020年3月現在)。こうした実績を積み重ねることで、ミッションである顧客のリテンションを図り、継続して使ってもらえる製品/サービスを実現していくと語る。
吉原氏は最後に、今後を見据えて現在取り組んでいる内容について説明した。従来、顧客とサポートセンターは電話やメールでのやり取りが中心だったが、これからは顧客側も在宅勤務というケースが増え、電話がしにくくなることが考えられる。そこで、5月から「画面共有サポートサービス」の試験提供を開始している。「メールでのやり取りだとなかなか伝わりにくいが、画面を見せれば一発でわかるということはよくある」(吉原氏)。顧客からも好評を得ており、9月末までの提供予定だったものを延長する予定だと述べた。