デルとEMCジャパンの合併により、2020年8月1日付で設立されたデル・テクノロジーズ日本法人。9月10日、同社 代表取締役社長の大塚俊彦氏、CTOの黒田晴彦氏が出席し、デル・テクノロジーズとして初めてとなる事業方針説明会がオンライン開催された。
大塚氏は、それまでのEMCジャパン社長と兼務するかたちで、2019年8月5日付でデル社長にも就任していた。ただし、就任後に開催予定だった社長会見が突然中止となったこともあり、両社を統合した立場としては初めての記者会見となった。
デルとEMCジャパン、両社の強みをフルに生かすための「融合」
米本社のDell Technologiesは、2016年9月に発足している。現在はグローバル180カ国に約15万人の社員が在籍し、売上高は925億ドル(約9兆8000億円)に達するなど「テクノロジーカンパニーとしては世界最大規模」だと大塚氏は説明する。サービスプロフェッショナルが約3万4000人、営業専任チームにも約4万人が在籍するなど「最前線の人材を大幅に強化し、顧客満足度を高め、多くの市場でナンバーワンシェアを獲得している」(大塚氏)点も強調する。
また、2020年度における年間R&D投資額は44億ドル(約4700億円)だった。CTOの黒田氏は、このR&D投資額が前年度比で7%増加していることを紹介し、さらに2019年のDell、EMC、VMwareを合わせた米国特許取得件数は16位相当になること、IEEEが2017年に行った、特許価値を考慮したランキング調査では3社合計で2位になったと述べた。
「R&D推進においては、将来を見据えて対象とする技術分野を検討している。『Realizing 2030』という調査研究を公表しており、経済の未来や生活の未来を支える技術について紹介している。ここでは、未来の経済を形作るテクノロジーとして5G/6G、IoT、AI、ブロックチェーン、仮想通貨の5つを、また生活を形成するテクノロジーとしてはセンサーとIoT、モバイルエッジコンピューティング、5G、AI、XR(VR/AR)を取り上げている」(黒田氏)
国内においては、米本社の合併後もデルとEMCジャパンの2法人が存続してきたが、統合と融合を目指した取り組みを進めてきたという。まず、2017年から2019年8月までのチャプター1では、“バーチャル型ワンカンパニー体制”を敷いて統合を開始。既存ビジネスの「継続性」を重視し、両社の強みを統合してシナジーを最大することを目指した。そして2019年8月以降、現在や今後も含むチャプター2においては、チャプター1で築いた土台を生かしながら融合と革新を進め、ポテンシャルをフルに発揮することを目指すという。
「両社の持つケーパビリティやビジネスモデルの『融合』は、まだ道半ばだ。ここを統合から融合へと進めたい。広いマーケットを効率的にカバーするデルの特徴と、大規模顧客を対象にハイタッチでアプローチし、深い提案によって価値創造するEMCの得意手法を融合させることで、シナジーが生まれる。どちらかに寄せるのではなく、両社の強みをフルに生かすアプローチを取っている」(大塚氏)
こうした取り組みを通じて、国内におけるビジネス規模は、2016年からの3年間で2倍に拡大したという。また、国内市場におけるPCシェア(台数ベース)は13.2%から19.1%に、x86サーバーシェア(売上)は10.4%から15.5%に、外付けストレージシェアは10.3%から14.6%に、それぞれ増加している。大塚氏は、2020年度(2020年2月期)の売上高も「前年比2ケタ増を達成した。最初のケタは1ではない(=20%以上の増加である)」と述べ、今年度も市場成長率を上回る成長を目標にすると語った。
なお同社では2021年度下半期(2021年8月~2022年1月)に、東京・大手町の「Otemachi Oneタワー」(2020年完成予定)に本社を移転することを発表している。この新本社について、大塚氏は「新たな働き方を実現するオフィス環境を目指す。キーワードは『ハイブリッド』で、在宅勤務と新たなオフィスのいいところを取り、働き方の融合を図りたい」と述べた。