国内VDI活用事例も紹介、コールセンターを“全面在宅勤務化”したチューリッヒ保険も登壇
デル、「VDI当たり前時代」に取るべき戦略や技術トレンドを紹介
2020年09月04日 07時00分更新
国内のクライアント仮想化導入率は約3割、さらに2割が導入を検討
最後に登壇したのは、IDC JapanでPCやクライアント端末市場を担当する渋谷寛氏だ。クライアント仮想化に関する最新の市場動向を紹介するとともに、“ネクストノーマル時代”(IDCではニューノーマルをこう表現している)に企業が取り組むべき働き方と、エンドユーザーコンピューティングの新たな方向性などを考察した。
IDC調査によると、2020年の国内クライアント仮想化導入率は27.7%であり、これに加えて19.9%の企業が導入を検討しているという。導入率を業種別に見ると、金融分野が41.5%と最も高い。渋谷氏は、多くの業種で導入が進んでいるが、やはり情報セキュリティに関心の高い金融業界での導入が突出しているのが現状だと説明する。
また、国内モバイルシンクライアント市場は2019年に過去最高の出荷台数を記録しており、さらに国内シンクライアント市場全体におけるモバイル型の構成比は4割を超えている。グローバルではこの数字が3%未満であることを考えると、日本ではモバイルシンクライアントのニーズが非常に高いという。在宅勤務が増加したことも背景として、2020年の国内シンクライアント市場におけるモバイル型の構成比率は68%に達すると予測している。
国内のHCI市場については、支出金額が年平均成長率11.2%(2019~2024年)と右肩上がりで成長していく。そのなかでも、VDIは主要なワークロードのひとつと位置づけられている。ワークロード別の構成比では、VDIが2019年の22.8%から2021年には25.1%に上昇すると予測されている。VDI単体の年平均成長率は10.6%だ。
VDI用途でのHCI採用においては、まずVDIのパイロットユーザー向けに小規模で構築(スモールスタート)し、その後ユーザー数の増加にあわせて徐々に拡張していく傾向が見られるという。また、新規でVDIシステムを構築するケースが多く既存の運用体制に制約されないこと、VDIユーザーがサーバー仮想化環境に導入するケースが増加していること、などの傾向が見られるという。
コロナ禍による経済環境の混乱を受けて、IDCでは国内クライアント仮想化市場に対して基本的シナリオ/楽観的シナリオ/悲観的シナリオの3つを発表している。基本的シナリオでは、2020年はマイナス成長となるものの、2021年から回復基調に転じ、その後も堅調に推移する予測を立てている。
製品分野別に見ると、シンクライアント端末とクライアント仮想化ソフトウェアは2019~2024年で出荷台数/ライセンス数を微減させるが、一方でクライアント仮想化ソリューションやDesktop as a Service(DaaS)、モバイル仮想化の売上額はそれぞれ2ケタ成長が見込まれている。なお、2024年においても、クライアント仮想化ソリューション市場の約8400億円と比べてDaaS市場は1540億円と、2割に満たない規模にとどまる予測だ。
渋谷氏は、国内市場におけるクライアント仮想化の促進要因として「ネットワークセキュリティ強化やゼロトラストモデルへの対応」「在宅でのユーザーエクスペリエンス向上といったリモートワーク関連テクノロジーの進化」「企業/組織におけるリモートワークの拡大」といったポイントを挙げる。一方で、阻害要因としては「就業規則やガイドラインの未策定」「バンデミックや自然災害の急拡大による経済/社会の危機的状況」が考えられると指摘した。
今後に向けた提言として、デジタルワークスペースの最適化とともに、デジタルワークスペースを「使い倒し」、使いこなすことが大切だと述べた。さらに、ユーザー企業のリーダーとIT企業のキーマンが連携することも重要だとしている。