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EdTech経営者が語る、スキル学習ビジネスにおける経営変化とは

「オンラインで完結OK ウィズコロナで進むビジネススキルアップ最前線」レポート

連載
ASCII STARTUP ACADEMY

 ASCII STARTUPは7月27日、無料のオンラインセミナー『オンラインで完結OK ウィズコロナで進むビジネススキルアップ最前線』を開催した。ウィズコロナの時代、個人の学習やビジネススキルを獲得する手段はオンライン中心へと変化している。そこで、ビジネススキルトレーニングの最先端にいる、株式会社スタディーハッカー、株式会社インフラトップ、株式会社ベネッセコーポレーションの3社にビジネスのスキルアップをどのように進めていくべきかを伺った。

左から、モデレーターを務めたASCII STARTUPの北島 幹雄、講師の株式会社ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部 部長(Udemy事業責任者)飯田 智紀氏、株式会社スタディーハッカー 代表取締役社長 岡 健作氏、株式会社インフラトップ 代表取締役/CEO大島 礼頌氏

 株式会社スタディーハッカーは、短期間で英語力を身につける英語のパーソナルジム「ENLISH COMPANY」、英語コーチングサービス「STRAIL(ストレイル)」の2つのサービスを展開する教育ベンチャー。同社では3年前からオンライン講座を提供していたが、新型コロナの影響で利用者が10%以下から約70%に拡大。

 株式会社インフラトップは、未経験から最短3か月でITエンジニア転職を実現するプログラミングスクール「DMM WEBCAMP」を運営。プログラミング学習のサポートのみならず、専属のキャリアアドバイザーによる転職サポート付きで、転職成功率98.4%、離職率1.4%の求人マッチングの高さが強みだ。(2020年1月時点実績)新型コロナ感染拡大を受けて、4月2日から全講座オンラインでも受講可能になった。

 株式会社ベネッセコーポレーションは、世界最大級のオンライン学習プラットフォーム「Udemy」と2015年より提携し、国内向けのサービス提供を協同運営している。Udemyは、教えたい人と学びたい人をマッチングするCtoCのプラットフォームで、ビジネスの第一線で活躍する現役のエンジニアや起業家、大学講師などさまざまなバックグラウンドをもつ講師から実践的なノウハウが学べるのが特徴だ。コロナの始まった3月頃から、サイトアクセスが急増し、受講者数や学習時間も増加しているという。

 3社に共通するのは、ウィズコロナのほうが、以前に比べて学習効果が上がっていることだ。その理由として、通学の時間が不要になったことで、より長時間の学習が可能になったことが挙げられる。オンライン学習で集中力やモチベーションを維持し、学習効果を上げるためのノウハウは、企業のDXによる効率化や生産力の向上にも応用できそうだ。

 セミナーでは、各社のサービス・環境の変化、経営やDX推進における変化をテーマに、株式会社スタディーハッカー 代表取締役社長 岡 健作氏、株式会社インフラトップ 代表取締役/CEO大島 礼頌氏、株式会社ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部 部長(Udemy事業責任者)飯田 智紀氏の3名によるパネルディスカッションを実施した。モデレーターは、ASCII STARTUPの北島 幹雄。

トピック1「ウィズコロナにおけるサービス・環境の変化」

――まずコロナ禍での学習環境の変化やオンライン化の際に留意した点を教えてください。

岡氏(以下、敬称略):会社近くの教室に通っていた方が大多数だったので、ステイホームで教室に来るのが難しくなり、オンラインにせざるを得なくなりました。最初のうちは抵抗があった受講生も「やってみると意外と便利」とスムーズに受け入れられましたね。仕事の会議や打ち合わせもビデオ会議になり、慣れていったのも大きいように思います。6月から緊急事態宣言が解除されて教室を再開した後も、そのままオンラインで継続したいという人が多数派になっています。

株式会社スタディーハッカー 代表取締役社長 岡 健作氏

大島氏(以下、敬称略):全講座をオンライン化する際、受講生にどんなサポートがほしいかを聞いたところ、「プレッシャーがほしい」という意見がありました。そこで、緩い監視の状態を加えたことが効果につながったように思います。システムには「Remo」を使い、オンライン上に架空の教室を作り、受講生同士が交流し、刺激を受け合えるような仕組みをつくっています。

飯田氏(以下、敬称略):Udemyはオンラインサービスなので、各国で緊急事態宣言が出るたびに、トラフィックが一気に跳ね上がります。学びを止めないようにするため、エンジニアリングの力が試されました。また、これまでデジタルリテラシーの差や心理的なハードルがあったのが、コロナ禍で強制的にデジタルリテラシー上がり、オンライン学習の需要が増えた気がします。受講生だけでなく、「こういう講座が必要じゃないか」と世界中から新しい講師も出てきました。会社が企画すると新しい講座が始まるまで数ヵ月くらいかかりますが、すぐに公開されるのがCtoCの利点ですね。ステイホーム中は、親子で学ぶプログラミングやヨガなど、これまでは比較的需要が低かったジャンルも再認識されるようになり、講座のトレンドにも変化がありました。

――いずれもオンラインによって成績が上がっていますが、最初からオンラインのほうが良かったのでしょうか?

岡:もともとオンラインでも十分な効果が見込める領域だったということだと思います。そのことがステイホームの期間に強制的にオンライン化したことにより、はっきりした。本当はオンラインで勉強するほうが楽なのに、学校に通って対面で話をするのが当たり前だったから、変わるきっかけがなかっただけです。すぐに適応できる人は今後もオンラインを継続するでしょうし、今まで通りのほうが好きな保守的な人も、オンラインだからと言って学習効果が落ちることはないと思います。

大島:いきなりオンラインに切り替えるのは心理的なハードルがあるとは思います。同じサービスを提供しても、コロナ前と後で、学習量が増えた人が40%いますが、減った方も30%いらっしゃいます。もちろん最大限サポートはしますが、高いモチベーションを維持できるかどうかは最終的には個人次第ですね。

飯田:もともとオンラインはオフラインを補助するモノだったのが、今は主従関係が少しずつ、変わってきています。すぐに対応できる人は、自ら動くことができる自律型人材。習慣化して学び続けられている方は、テレワークで可処分時間が増えたぶん、学習効果も上がっています。

株式会社ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部 部長(Udemy事業責任者)飯田 智紀氏

――オンラインとオフラインの比率は現在どのくらいですか?

大島:来校される方は10分の1になり、ほとんどはオンラインに移行しています。

岡:弊社ではサービスによって半数〜75%ですね。学習効率がいいのはオンラインですが、モチベーションをもらう部分、リアルな表情を細かく見たいときはオフラインがいい。オンラインとオフラインのどちらがいいのかをフラットに比較して選べるのがいいですね。

――オンラインでの学習効率を上げるための手法、そのための行動様式みたいなのはありますか?

岡:習慣化が大事です。会社に行く、学校に行く、というのは、モチベーションの有無にかかわらず、その場に行けば、強制的に仕事や学習ができます。その強制力がなくなったときに、どのように継続していくか。とくに英語は、モチベーションだけでは続けられません。トリガーを決めるとか、習慣化を意識する工夫が必要です。自律型人材は、この習慣化が得意なのだと思います。

大島:弊社の場合、学習量を担保するための仕組みが必要だと考えました。具体的には、生徒の学習進捗状況を可視化し、ペースが落ちたらアラートでなるような仕組みでサポートしています。コミュニティの差により、生徒のやる気が高まったり、自走力につながったりすることもあり、そこにはRemoが一役買っていると思います。コロナ以前は、コミュニティを推進していなかったんです。その理由は、プログラミングを習得するペースは個人差があるので、進捗が遅い生徒がレベルの合わないコミュニティに入り、モチベーションが下がってしまうことを避けるためです。コロナ後は、そこを変えてみたところ、今のところいい効果がでています。

飯田:Udemyでは、時間ができたことで、長尺のコンテンツの受講者が増えました。積読のようになっていた生徒が取り組めるようになったのは大きな変化です。一度、学ぶ面白さに気付くと、習慣化につながるのではないでしょうか。

トピック2「経営やDX推進における変化」

――経営やDX推進もこれまでとは変わってきているのでしょうか。

岡:教育ビジネスでは、講師同士もオンラインでつながれるようになったのは大きな変化ですね。例えば、他校の優秀な講師の授業のノウハウを簡単にシェアできるようになり、社内のナレッジがよりリアルに共有しやすくなりました。これまで対面の模擬授業では、講師と生徒とのコミュニケーションのスキルがうまく伝えられなかったのですが、オンラインだからこそ逆にリアルにできるようになったように思います。

大島:PM(プロダクトマネージャー)のポジションの重要度が上がったように感じています。テレワークによって、情報が散在しやすくなる組織になったため、いかにうまく情報を集めるかは、PMの技量が試されます。

株式会社インフラトップ 代表取締役/CEO 大島 礼頌氏

飯田:職種を問わず、デジタルリテラシーとして何を持っておかなくてはいけないのか、を誰もが共通認識として持ったのは大きな変化でしょう。

――このようなオンライン化が進むなかで、オフラインの価値とは何でしょうか?

大島:オフラインは、偶発的な何かを生む場所ではないかと考えています。ロジカルに考えて求めるものというよりも、新しいアイデアが偶然生まれる場所、何かの出会いを期待してイベントに出かけるような感覚です。それ以外は、もしかしたらほとんどオンラインで済むのではないでしょうか。

岡:温度感や熱量を伝えたいとき、遊びなどはオフラインがいいですね。効率を考えるとオンラインのほういいのは明らかになったように思います。

飯田:ベーシックな信頼関係、チームビルディングなどは一度オフラインで関係性を構築したうえで、オンラインに移行すると強くなると思います。デジタルのコミュニケーションだけでは、体格などがあまり伝わらないから、一度リアルに会うことで発見があると、相手により興味が出てくる。オフラインとオンラインを行き来することで、より他者に興味を持てるかもしれません。

――アフターコロナにおける、スキルアップビジネスのDXとしては、どのようなものが考えられますか。

飯田:学習履歴からインサイトを見出し、学習効果を可視化すると、より最適化された学びを提供できるのではないかと考えています。ただし、最適化がいきすぎると、偶発的な発見がなくなってしまうので、ときどき新しい要素を仕掛けるなどの工夫が重要になりそうですね。

大島:ポテンシャルを測る手段としてのスコアリング。テストの成績ではなく、日々の学習が蓄積されてスコアになっていくことで、学習スタイルやパーソナリティなどの傾向が見えてくるかもしれません。

岡:教育は、学習者の自律度、学ぶ姿勢に大きく依存します。その部分が不足している方には手助けが必要です。オンライン化で効率的な学習は可能ですが、人的な介入はどうしても必要。とはいえ、マンパワーには限界があるので、併用することで、バランスが取れていくのではないでしょうか。

――みなさん、本日はありがとうございました。

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