シチズン時計は7月30日、独自素材の「スーパーチタニウム」を使用した月着陸船部品の試作品が完成したと発表した。
スーパーチタニウム製の試作部品は、コーポレートパートナー契約を結ぶispaceの民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」における、ランダー(月着陸船)の着陸脚の一部パーツとして採用予定だ。HAKUTO-Rは2022年の月面着陸を目指し、ランダーとローバーの開発を進めている。
スーパーチタニウムは、シチズン時計独自のチタニウム加工技術と表面硬化技術「デュラテクトDLC」を組みわせた素材。硬さはステンレスの5倍以上、重さはステンレスの約60%という軽さを誇る。
今回、スーパーチタニウムで作られたのは、着陸脚の回転軸および連結部分の試作部品。月面着陸時の衝撃に耐えるため、着陸脚の素材は軽く、強度のあるものが必要で、可動部である回転軸と連結部分には、硬さにくわえてなめらかさも求められる。
試作部品にも使用されているデュラテクトDLCは、傷に強いのはもちろん、表面が非常になめらかなことが特長だという。DLC(Diamond-Like Carbon)は一般的にも使用される技術だが、シチズンのデュラテクトDLCは中間素材に徹底的にこだわることで密着性を向上させており、表面加工がはがれにくく耐久性に優れているとのこと。
50年間、腕時計の実用性と審美性のために培ってきたチタニウム加工技術が、軽さ、強度、摩擦が少ないなめらかな素材である点から宇宙機にも応用できそうだと判断され、ランダー部品の試作品の完成に至ったという。
シチズン時計は、チタニウム技術50周年記念フラッグシップモデルの「SATELLITE WAVE GPS F950」を今冬に発売予定だ。世界限定550本で、予定価格は55万円。
ケース素材にブラックチタン(デュラテクトDLC)、バンド素材にデュラテクトサクラピンクを採用したモデルで、ケース径は47.5mm。光発電エコ・ドライブにより定期的な電池交換を不要としたほか、衛星電波受信機能、位置情報取得機能、自動時刻受信機能も備える。フル充電時(パワーセーブ作動時)の稼働時間は約5年。
そのほか、「JIS1種耐磁」「衝撃検知機能」「針自動補正機能」により正確な時刻表示を可能にする独自技術のパーフェックスや、文字盤にあたる光による発電量を7段階で表示するライトレベルインディケーターを搭載する。防水性能は10気圧。