ニューノーマルは進歩を生むか
── 大谷はコラムで、ニューノーマルやアフターコロナの世界についてコラムを書いています。
大谷 「私が4月に書いた、仮想的なストーリーも真実味を帯びてきました」
佐々木 「読者として、興味深く読みました。少し話を広げると、『例えば、リニアモーターカーはいるのか?』といった社会インフラについての考え方も変わってくるはずです。感染症対策を考慮に入れると、地方に移動するコストはこれまでにないほど高くなるでしょう。また、郊外や地方でリモート勤務をする人が増えると、集約型の都市はどうなるのか? 5Gを導入して通信環境を整え、町おこしする自治体も出てくるかもしれません。
正直、都会での子育ては大変です。そこから少し離れた場所で、ライフスタイルの一部として働ける環境を用意する。それが今後の企業が人材を獲得する際の条件のひとつになるでしょう。こういった整備が不十分な企業からは、優れた人材が流出してしまうという危機感を企業側は持つべきです」
大谷 「これまでITの記者は東京にいなければ、仕事ができませんでした。しかしインターネットを使えば、福岡でも札幌でも東京でも情報に壁がなくなります。言語の壁はありますが、それを乗り越えられるなら、海外の情報にもアクセスできる。国内出張もなくなっていくでしょう。経済合理的に考えたら、出張するメリットは少ないですから。対面のミーティングはその多くが、会ったほうが失礼にならないぐらいの理由だったと気付きます」
青木 「弊社の場合も、そういうミーティングが多かったように思います。また、会議は部屋のサイズに左右され、そこに拘束される面もありましたが、オンラインであれば、大人数でも問題ないですし、必要な人が短時間で自由に出入りすることもできます。ミーティングの効率を上げられる可能性があります。
また、ウェブ会議で録画してしまえば、『言った、言わない』のトラブルが減るメリットもあります。世の中全体のカルチャーは変えにくい面がありますが、メリット・デメリットを見極め、会議のあり方を考え直すいいタイミングです」
大谷 「いまはその実績を1年、2年と積み上げ、評価する時期なのでしょう」
佐々木 「とはいえ、機密情報の取り扱いという意味では、フェイス・ツー・フェイスの重要性も依然としてあります。私の場合、昨年は海外にのべ4ヵ月程度出張しました。コロナ禍以前は、現地に赴いて直接話すのがノーマルだったし、特にサイバーセキュリティにおいて信頼関係を結ぶためには対面が常識でした。文書に残したり、明言できたりしない内容を表情や雰囲気からくみ取って状況を探る……といったことも実際にしていました。録画されたウェブ会議では、話題にしにくい内容もある、という皮膚感はあります」