3歳児くんの保護者をしてます盛田諒ですこんにちは。梅雨の長雨がなかなかやまないですね。やまない雨はないと言うけどじれったい。政府はどこかに出かける話をしていますが、今はまだ「Go To」という気分にもなれません。
●ペダルの原理を知る子ども
そんな中、久しぶりに晴れ間が出て7月らしい暑さになった先週末、近所の交通公園に行き、子が自転車に乗る練習を手伝いました。公園では自転車を貸してくれます。子は普段ペダルのない「へんしんバイク」に乗っていますが、「これがいい」とペダルつきを指したため、初のペダルチャレンジとなりました。
子ははりきって自転車にまたがり、両足をペダルにのせるのですが、なかなか前に進めません。補助輪つきなのでバランスは問題ないんですが、ペダルをこぐのが思った以上にむずかしいんですよね。周りの子を見ながら足を動かしますが、ペダルは後ろ向きに空回りして、うまく進みません。
そこで教習所の教官よろしく隣に立ち、子にペダルをこぐ方法を教えることになりました。まず子が足をのせたペダルを手で回し、ペダルが回って前に進む感覚を教えます。「うわー!」と楽しそうにしていたので、まずは成功。
次に、足をのせたペダルが上に来たとき、「いま!右足にグッて力入れて」とタイミングを教え、自分でこいでもらいます。しかしこれがむずかしく、「いま!」というタイミングで後ろに空回り。「あっ!今度は左足!じゃないわやっぱ右足!いや左足!」などと言って、子どもを笑わせることになりました。お父さんウケようとしてるわけじゃないんだ。これでも必死なんだ。
それでもたまに、わずかですが、前進するときがあります。
「すごいすごい!いま進んだのわかった?」
そう言うと、子はニコニコしながらうなずき、またペダルに足を置きます。「これどうするの?」と言われるたびペダルに手をかざし、少しずつ自転車は進んでいきます。子は一周ごとに麦茶を飲み、ヘルメットをとり汗をふき、顔を赤くしながらペダルとの格闘を続けました。中腰になって伴走するこっちも汗だくになり、かわいくない顔になりながら練習場を回っていきました。
●自分で行動する権利
ペダルのことであらためて思いましたが、子どもには時間が必要なんですよね。「これどうやるの」と言われたときにだけヒントを出し、「ねえねえ、見てー!」と言われたとき「何?」と見れば、子どもは色んなことを自分のペースで学んでいき、いつのまにか驚くようなことをできるようになっていくものなのだと思います。
数週間前まで着るまでに10分かかっていたボタンつきのパジャマも、今では大人と同じくらいすばやく着られるようになりましたしね。すごいもんです。
こうした「ゆったりとした時間の流れの中で、子どもが自ら気づいていくこと」だったり、「『ねえねえ』と言ったとき、『なーに』と話を聞いてもらえる」ということは、乳幼児の権利を考える上でも大切なのだといわれます。
国連・子どもの権利委員会が2005年に採択した「ジェネラルコメント第7号乳幼児期にある子どもの権利の実施」では、乳幼児を大人と同じような行為主体、社会における権利の保持者として扱っています。そこで大人は乳幼児の声に耳を傾け応答したり、乳幼児が権利を実現できるよう支援する責務があるというんですね。
つまり子どもの行動を待つことや、子どもの呼びかけにこたえていくことは、この社会で果たされるべき義務である、というわけです(文末の文献参照)。
●雨があがったらGo Toご近所
とはいえ現実には、子どもを待つことはむずかしいことも多いですよね。
たとえば、仕事で出かけなければいけないからと、子どもを急いで保育園に送り出そうとしているときとか。逆に、急いで保育園に迎えに行ったのに、子どもが玄関付近で遊びはじめて、なかなか帰ろうとしないときとか。子どもを急かさずそれとなく誘導してくれている保育士さんは本当にすごいですよね……。
子どもに「見て!」と言われたときにも、申し訳ないと思いながら「ちょっと待ってて〜!」と言うことは多いです。正直こっちが子どもルールの遊びに飽きていることもあるんですが、基本的には時間にゆとりがないからです。家事をしないといけないし、スマホには寝る前まで仕事の連絡が飛んでくるし。
それだけ働いていても経済的なゆとりができるわけではなく、最新家電や家事代行サービスを使いまくって色々とショートカットできるわけでもなく。忙しい日々の中がんばってがんばって時短と節約に励み、ようやくちょっと子どもの顔を見られるようになるって人も少なくないんじゃないかなあと思います。
いまどきは子どもを生み育てることも自己責任といわれることがあります。保護者として子どもに責任があることは当然なのですが、子どもが「ねえねえ」と言ったとき、ゆとりをもって「なーに」と言えるくらいの社会に生きていきたいものだと思います。子どものペースを守って生きていけたらいいなあと。
さわやかな話になるはずが湿っぽい話になってきました。気象予報を見てみると、平年通りであれば今週〜来週あたりから梅雨明けの様子。晴れ間が出たらGo To交通公園です。お父さん今度は麦茶じゃなくてビール飲みたいなあ。
参考文献:
乳幼児期の子どもの権利と保育・療育の今日的課題(黒川久美・2015)
https://www.nankyudai.ac.jp/library/pdf/HDR5_0004.pdf
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。3歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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