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MacのCPU変更がついに発表! 「WWDC 2020」特集 第17回

「地図とユーザーデータ」から見える各社の地図サービス戦略

アップル新「マップ」の躍進、Googleマップと真逆のアプローチとは

2020年07月06日 09時00分更新

文● 西田 宗千佳 編集●飯島 恵里子/ASCII

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アップルがWWDC 2020で発表した新「マップ」。左から提携したガイドサービスによる情報、2020年秋予定の360度見まわせる日本の「Look Around」、道の勾配や混雑の状況、経路に階段があるかなどを考慮した「自転車の経路案内」

 我々がスマホを使う上で、地図サービスは基盤といえるものだ。過去にはシンプルに地図や衛星写真を表示し、住所に基づいて場所を検索するものだった。しかし現在、地図サービスは高度化・多機能化へと進んでいる。その結果として、地図サービス・プラットフォーマーによるデータ整備が進んでいる。Googleマップとアップルの「マップ」はその代表例だ。だが、アプローチは真逆ではないか、と思っている。

 以下は筆者の想像を含む話なので、その点をご留意いただきたい。だが、そこまで外れていない、と考えている。各社がなにを行おうとしているのか、その方針はどう違うのかを知ることは、さまざまな地図サービスの今後を考える上で重要な要素になるはずだ。

アップルの「マップ」に隠されたAR時代への布石

 今年のWWDC基調講演で、アップルは自社サービスの中で「マップ」についていくつかのアピールをした。

アップルの年次開発者会議、WWDC20の基調講演では2020年前半にアメリカ内の地図を更新したことを公表した

 だが、筆者が感じる「もっとも大きな変化」は、「Location Anchor」という機能だ。これは正確にはマップそのものの機能ではない。ARを実現する「ARKit4」に搭載されたものだ。

 ARは目の前の風景にCGを重ねて、「そこにあるように見せる」機能。これまで多くの場合、実景とCGが重なった風景は、あくまで自分のスマホやHMDの中にだけあるものだった。他人の画面の中で同じCGが存在する風景を見せるには、同じ空間を共有できるよう工夫したソフトが必要になる。それでも、CGが見えるのは「同じソフトを使っていて、その場に一緒にいる場合」に限られる。

フェリー・ビルティングにCGの文字が。あなたが今から適切なアプリを持ってこの場所に行けば、このCGを実際にiPhoneの中から見ることができる

 だが、Location Anchorは違う。写真は、米・サンフランシスコ市内の観光地でもあるフェリー・ビルティングの前で撮影されたものだ。ここに写っている文字はARKitで実景に重ねられた文字だが、一時的に配置されたわけではない。適切なアプリの入ったiPhoneを持って現場に行けば、今でもこのCGは置いてあるはずだ。

アップルが収集した現実の地形から、「この場所で正しいか」「この向きで良いか」を照合する

 簡単にいえばLocation Anchorは、「現実の世界にデータで作られた物体を置く」ための仕組みといっていい。ここで活躍しているのが「マップ」のデータだ。現実の世界にデータを置く、というと「緯度と経度」があればいい、と思われがちだ。だが実際には、向きや高さなども必要。現実の場所に移動して配置するのが一番ではある。実際の地形や場所に合うよう配置するには、「マップ」のデータとして、その場所が「立体として実際にどのような場所か」を知っている必要がある。

現状ではLocation Anchorは、アメリカの主要都市のみに対応している

 実はアップルは地図のデータを自ら整備する過程で、その地形の3Dデータも取得している。そのデータを生かして「自分がどこにいるのか」を認識する技術も搭載しており、Location Anchorではそれを使っている。その関係上、現状ではサンフランシスコやニューヨークなどのアメリカ主要都市でのみ利用可能だ。だが、日本でも同様の整備は行われていくと考えられるので、日本を含めた多くの地域で使えるようになるのも文字通りの意味で「時間の問題」だろう。

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