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MacのCPU変更がついに発表! 「WWDC 2020」特集 第17回

「地図とユーザーデータ」から見える各社の地図サービス戦略

アップル新「マップ」の躍進、Googleマップと真逆のアプローチとは

2020年07月06日 09時00分更新

文● 西田 宗千佳 編集●飯島 恵里子/ASCII

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左がGoogleマップ、右がアップルのマップ。GoogleマップはGoogleマップの「ローカルガイド」での星が表示されており、アップルでは「食べログ」の星が表示されている点に注目

グーグルとアップルの違いは「ローカルガイド」から見える

 地図整備のポリシーが似ているように見えるアップルとグーグルだが、それはあくまで「自前で集めるデータ」に関してだけだ。実際の地図は多数のデータ提供元の情報を組み合わせて成り立っており、その考え方は両社で異なっている。

 わかりやすいのが「ローカルガイド」についての思想だ。現在の地図サービスでは、単に移動先を検索するものではなくなっている。行った場所がどのような場所なのか、その地域や店の評判が重要だ。Googleマップにしてもアップルのマップにしても、評判を「星」で示す。

 ここで両者を比べると面白い違いに気づく。

 Googleマップは、Googleマップの利用者から投稿を受けた情報を中心に表示し、アップルのマップは「食べログ」や「Yelp」といった他のサービスの情報を表示する。

アップルがWWDC 2020で発表した「Guide」機能では、オススメのレストランや旅行先での楽しみ方などを、提携したガイド情報媒体による内容を表示する

 同じように、地域のガイドもグーグルはあくまで「ローカルガイド」としてユーザーが作った情報を使うが、アップルはWWDC 2020で発表した「Guide」機能で、「ZAGAT」や「Lonely Planet」といった外部のサービスからコンテンツの提供を受けている。

 グーグルのローカルガイドは明確に「ユーザーからグーグルが情報を集めて作る」ものであるのに対し、アップルは「ユーザーから自分は情報を集めず、外部のパートナーと組んでサービスを提供する」形になっているのだ。

 これはおそらく、「ユーザーから情報を集める」という考えかたについて、両社がまったく違うポリシーを持っているためと考えられる。

 アップルはプライバシー重視で、基本的にユーザーのデータを蓄積しない。だからいわゆる「ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ(UGC)」を使っておらず、行動分析を情報としても使わない。だからこそ、ガイド的コンテンツには外部提供の情報を必要とする。

 それに対しグーグルは、ユーザーのデータを蓄積し、それをサービスの改善に生かす。別にグーグルがプライバシーを侵害しているわけではない。匿名化した上で活用し、生のデータはユーザー自身しか見られない。

先日筆者がGoogleマップを開いた時に表示されたもののキャプチャ。「「ロケーションの履歴情報」の自動削除をどうするのか、選択を求められる

 とはいえ、曖昧なユーザー意思の元にデータをずっと蓄積しておくのは彼らの本意でもない。2019年には一定期間が経過するとデータを自動的に消去する機能が搭載され、6月には、新しいユーザーの場合、デフォルトでは「18ヵ月後に自動削除」になった。また、Googleマップを開いた時に「削除の設定をどうするのか」を聞いてくるようにもなっている。

 「(デフォルトの変更は)我々にとっても大きな決断だった。一方で技術は進化している。我々もより少ない情報で効果を生み出す必要がある。効率などに変化はないと思うが、気づいた点があればぜひ教えていただきたい」と、グーグルでプライバシー&ユーザートラスト統括を担当するラウール・ロイ-チャウドリー氏は、変更についてそうコメントしている。

 ユーザーの持ち寄ったデータは最新のものである確率が高く、企業がまとめ直したものよりも鮮度も確度も高く、量も多くなる傾向にある。グーグルはそれをよく知っている。その上で、プライバシーと利便性の両立を目指しているわけだ。

 こうしたサービサーの姿勢による「違い」は、今後地図サービスの方向性をより明確に違うものにしていくだろう。過去のように「地形と建物と道路さえわかればいい」時代は過ぎ去り、より多彩な情報が地図に必須となったからに他ならない。この点を見ながら各社の「地図サービスの違い」を検討してみるのも、面白いのではないだろうか。

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