QSimulateのハイスループット・量子力学シミュレーション技術が、JSRのマテリアルズ・インフォマティックスを推進する
Quantum Simulation Technologies, Inc.
QSimulateが開発した、かつてないハイスループットで量子力学(QM)に基づく計算を行うことを可能とするプラットフォーム「QSimulate-MI」が、半導体・ディスプレイ・光学・ポリマー材料の開発大手であるJSR株式会社(以下「JSR」)にてこの度運用を開始しました。このQSimuate-MIは、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を使った材料開発に向け、1日に何千もの分子の物性値を自動的に計算することを可能とする、クラウド上の革新的なプラットフォームです。JSRでは、このプラットフォームを使い、MIに不可欠な高精度データベースを構築・改良する予定です。
近年、QMに基づいたシミュレーションデータと人工知能(AI)を組み合わせたMIによって材料の高速な物性予測が可能になるという考え方が、広く受け入れられるようになってきました。AI/MIを使った信頼度の高いモデルを確立できれば、材料の反応性・吸光/発光等の光学特性・強度・欠陥や劣化など、さまざまな特性の予測が可能となると期待されています。しかし、信頼性の高いAI/MIモデルの構築には大規模な高精度QMデータが必要となり、したがって膨大な量のQM計算を行う必要があります。この大規模計算は、従来、計算資源・人的資源の両面で非常にコストが高く、AI/MIに基づく材料開発を進める上での大きな障害となっていました。QSimulate-MIプラットフォームは、ワークフローの自動化とともに、低コストかつ大規模なクラウド上のコンピュータ資源を有効に活用しすることで、これまでの課題を克服し次世代のAI/MIを切り開きます。
QSimulateのCEOで共同創業者である塩崎亨氏によると、「QMが材料開発において有用であるというのは長く受け入れられてきましたが、今なお時間と手間がかかるプロセスです。我々のQSimulate-MIプラットフォームを利用することでAI/MIを使った手法が確立し、QMレベルの高精度物性予測が低コストで可能になると、次世代の材料開発はこれまでとは全く違うものになるでしょう。」
JSRの研究者は、AI/MIモデルを構築することによって、パフォーマンスが高く環境負荷の低い新しい材料を開発することを期待しています。JSRのマテリアルズ・インフォマティクス推進室次長の大西裕也氏は、「いまちょうど材料開発は、AI/MIの活用に関して過渡期にあると思います。ですから、このタイミングでQSimulateのQMの専門家とJSRの材料開発の専門家が力を合わせることには、多大な意義があります。非常に楽しみです」と語ります。また、QSimulateのもう一人の共同創業者で、カリフォルニア工科大学のガーネット・チャン教授も、「これまで、QMのマテリアル開発へのインパクトに限界があったのは、QM計算のコストとワークフローの複雑さにありました。QSimulate-MIはこれらの問題を解決し、重要な一歩と考えられるのではないでしょうか。」と頷きます。
QSimulateについて: QSimulateはアメリカの東海岸・ケンブリッジを拠点とするスタートアップで、開発した次世代QMシミュレーションプラットフォームを用い、AI/MIに基づく材料開発を実現することに尽力しています。また、創薬におけるタンパク質と医薬分子の相互作用のためのQMベースのスコアリング法の開発や、量子コンピュータ向けのソフトウェア開発も行っています。https://qsimulate.com
JSR 株式会社について.: JSR株式会社は1957年に合成ゴムの国産化を目指して設立されました(旧社名:日本合成ゴム株式会社)。その後、エマルジョンや合成樹脂へと事業を展開し、1970年代後半からはそれらで培った独自の高分子技術を活用して半導体材料・ディスプレイ材料・光学材料等へと業容を拡大してきました。足元では、ライフサイエンス事業を新しい柱として、バイオ医薬など最先端の医療ニーズをとらえたバイオプロセス材料や診断薬材料、創薬支援サービスなどを提供し、収益の拡大を進めています。https://www.jsr.co.jp/をご覧ください。