先日、ヘッドフォン祭 2020春 ONLINEの中で、Shureでは「AONIC 3」を「E4c」の後継と考えているというコメントがあった。しかし、いまではそもそも「E4c」のことを知らない読者も多いだろう。そこでこのあたりの機種を軸に振り返ることで、いまの高性能イヤホンブームにつながる歴史を紐解いていきたいと思う。
E4cは2005年に登場したモデルで、BAドライバー1基のシンプルな構成だった。
ShureがAONIC 3をE4cの後継と述べた理由のひとつはここに由来する。E4cはインピーダンスが低く、能率が高めで、はじめからiPodなど、いわゆる携帯オーディオプレーヤーを意識していたことがうかがえる。それまでのShureはマイクを始めとしたプロのミュージシャン向け機材を中心としたブランドで、このE4cは当時高まりつつあったiPod人気にあやかって「コンシューマーを初めて意識した製品」と言ってもいいと思う。
それ以前のShureは、シングルダイナミックの「E2c」やBAドライバー2ウェイの「E5c」が主力であったが、これらはイヤモニ、つまりプロがステージでモニター用途で使う製品をコンシューマー販路で販売していたのである。名称の“c”はコンシューマー向け製品であることを示す。

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