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松村太郎の「"it"トレンド」 第299回

小さくないショックと、価値観の変化に備える

2020年05月04日 09時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII

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●「価値感フラット」

 筆者はさほど思い込みが激しいタイプではない、と思っていましたが、それでも30年間同じ土地で暮らしていると、行動パターンや思考パターン、常識、当たり前、といったものが染みついていました。

 誤解を恐れずに言えば、変化しないことに強く価値を感じ、ブランドや街の名前だとか、誰かが評価した価値感に同調し、企業やマーケティングの都合で付けられた価格に善し悪しが左右される。他人よりも競って得をしようとする。完全に物質的な価値感が優位だったように思います。

 我々の世代の前後から、日本社会においても良い扱いを受けているとは到底思えないのですが、驚くべきことに、自分たちが良しとしない世代の価値感をそのまま引き継いでいることに気づかされるのです。

 そうした東京を離れると、世界が一変し、既存の価値感を維持することはできなくなります。

 人種的にマイノリティという扱いを受け、言語や生活習慣といったカルチャーショック、平均年収2000万円以上という圧倒的な金融弱者化、そして生活習慣の違いから来る不便さと、あらゆるものがショックを与えてくる場所に引っ越すと、しみついていた価値感みたいなものは一気に崩れ去ります。

 ただ、個人的にはそうした価値感崩壊は良かったと思います。もう少し正確に言えば、価値感が破壊されたと言うより、「価値感がフラットになった」と思いました。

 これによって何が起きるかというと、比較による優劣ではなく、違うことが前提となり、良い部分を発見するようになる点です。結果、諸外国と比較して一方的に展開される「日本ディス」に共感できなくなり、それも含めてフラットに自分の国を見られるようになりました。

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