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松村太郎の「"it"トレンド」 第298回

モバイルバッテリーのAnkerがレッドオーシャンを勝ち抜けた理由

2020年04月28日 16時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII

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●わずか10年で誰も使わなくなる可能性がある

 実はAnkerの社内で流れていたのも、「危機感」というほどネガティブではありませんでしたが、チャージング分野の成功にあぐらをかかない、どこか「戒め」のような空気感でした。

 実際、Ankerで「スマートイノベーション」というチームを引っ張るフランク・ジューの口からも、同じような指摘がありました。カセットテープやMD、iPodを引き合いに出し、どんなに流行ったコンシューマエレクトロニクス製品であっても、10年後には誰も使っていないという現実。

 つまり、Ankerがいくらバッテリーで覇権を取ったとしても、製品を作り始めてから10年後には誰も使わなくなる可能性がある、そしてタイムリミットはあと1〜2年程度だというのです。

 デバイスがますますバッテリーで動作するようになり、流石にモバイルバッテリーがあと数年で陳腐化するとは思えない……。確かに2年前まではそう考えてきました。しかし筆者の生活を振り返ると、あながち冗談でもない、と思いました。

 筆者はiPhone 11 Pro Maxを使っていますが、確かに、どんなに出かけようが、途中でモバイルバッテリーを使うことはなくなりました。出かけない週末ともなれば、省電力モードで土曜の朝から日曜の夜まで充電しないことすらあります。

 アップルが端末の厚みと重さを犠牲にして「Pro」の名前にふさわしいバッテリー持続時間を優先するなんて、誰も予想していませんでした。しかし、技術の進歩とそれに基づくライフスタイルの変化は確実に進んでおり、製品のライフサイクルを終末へと追いやっていくのです。

 これこそが、Ankerのチャージング以外の分野への進出の理由なのですが、ここから先は長くなりそうなので、書籍の方でぜひ。

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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