●2mの距離感を把握する「AR定規」
さて、ソーシャルディスタンシングは2mが目安となっています。しかし生活空間の中で「2m」という距離を意識したことはあまりありません。たとえば巨大な車格のSUVは車幅がおよそ2mかそれ以上なので、狭い道でのすれ違いで意識したことがある方もいるかも知れませんが。
そこで@kskee(Keisuke Terashima)さんはTwitterで、「Keep Distance Ruler」というARコンテンツを公開しています。
これは「USDZ」というARオブジェクトを流通可能にするファイル形式で、iPhone、iPadではタップすれば「クイックルック」ですぐにコンテンツを表示可能です。これをブラウザからiPhoneにダウンロードして開くと、カメラが起動し、iPhoneで平面検出すると、床に半径2mの円形の定規が現れ、2mの距離感を把握することができます。
これは実用的なARオブジェクトのアイディアとして目から鱗でした。そして、いろいろなところで表示させて見ると、意外と2mという距離を取ることは難しいことに気づかされます。コンビニなどの店舗では人とすれ違うときにどうしても接近しますし、レジに並ぶとしても、実際1mちょっとしか間隔が空いていなかったり、ハッとする場面ばかりでした。
アップルのティム・クックCEOはことあるごとにARをあらゆるアプリに適用すると指摘し続けてきました。しかしなかなか実感が湧くアプリや活用方法に出会わず3年近く経過してきました。
目に見えないものを出現させるという、最も基本的なAR体験が実用的であるとすると、もっと我々は空想を拡げて、目の前に現れたら便利だと思うモノをARで作ってしまった方が良いのかもしれません。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
この連載の記事
-
第314回
Apple
アップル「iPhone SE(第3世代)」隠れた最大のイノベーション -
第313回
自動車
「10年後にはみんなEVになるんだから」と人は言うけれど -
第312回
自動車
スマホから自動車を買う テスラのユーザー体験 -
第311回
自動車
Tesla Model 3をポチるまで 決め手は航続距離と乗り心地 -
第310回
自動車
テスラを買ったワケ 最大の動機は「リスク回避」 -
第309回
ビジネス
Twitterジャック・ドーシーCEO退任 理由は「創業期を脱するため」 -
第308回
トピックス
忙しすぎてカオスな予定を量子AIに調整してもらいたい -
第307回
Apple
なぜiPodは成功したのか 20年経った今あらためて考える -
第306回
トピックス
大学オンライン授業、教室との「ハイブリッド化」は複雑怪奇 -
第305回
トピックス
トランプ大統領が巨大ITに締め出された事態の重み -
第304回
自動車
アップルは本当に電気自動車を作るのか - この連載の一覧へ