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松村太郎の「"it"トレンド」 第293回

新MacBook Airで感じた、コンピュータにおけるキーボードの強さ

2020年03月31日 09時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII

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バタフライキーボードからシザー構造への回帰を果たした
MacBook Airのキーボード

 Appleは3月18日、MacBook Air、Mac mini、iPad Proの3モデルを刷新しました。ウワサされていた廉価版のiPhoneは登場しませんでした。Appleに限らず、エレクトロニクス産業全体が停滞を余儀なくされている中、いずれもコストパフォーマンスを高めた製品を投入したと言えます。

本体の厚みを0.5mm増してでも、MacBook Airは再びシザー構造のキーボードを採用することに決めました。

 ただし、Apple Storeは中華圏以外で無期限閉鎖。オンラインだけでの販売です。しかし今回、オンラインだけだとちょっと理解されにくいかもしれない、感触が重要なアップデートがありました。キーボードです。

 MacBook Airには、2017年までのシザー構造のキーボードが復活し、Magic Keyboardと名付けられました。そしてこれがiPad Pro向けにも登場することになりました。

 MacBook Airに対する反応はすこぶるよいモノでした。うーん、シザー方式のキーボード、確かにスタンダード感があって普通でしたが、それでも以前から外付けでHappy Hacking Keyboard(HHKB)を使っていたくらいなので、満足していたわけではないことがわかります。

 そして、2016年のMacBook Proでバタフライキーボードに乗り換えて、これはこれでコツを覚えればさほど嫌いじゃなかったという印象でした。

 別に反応速度にシビアなゲームをやるわけではないのですが、浅いキー=反応が速いというのもトレンドだったとわかりますし、力を抜いてなぞるように打てば、疲れず間違わず素早く打つことができました。筆者にとって、最良ではないけど嫌いではなかった程度でした。

 それでも、確かに新しいMacBook Airのシザー方式に戻ったMagic Keyboardは優れていると思います。力をきちんと受け止めて、ラバーが跳ね返すことでリズミカルに運指できる感覚は、メインマシンのメインキーボードとして十分満足できます。

 いや、なぜ最初からこうしなかったんだろう、という疑問もありますが、2015年以降のMacBookシリーズ全体として、薄さの追求をしていましたから。

 とはいえ、ずっとキーを叩く仕事をしていると、ときどき気分を変えたくなるものです。なのでHHKBを主としながら、ノートパソコン本体のキーボードをあえて使って見たり、メカニカルキーボードを挟んでみたり。そうやって気を散らしながら仕事をしているということです。

インターフェイスの方針について

 iPad Proは、iPadOS 13.4によって、マウスとトラックパッドにも対応しました。つまりMagic Keyboardアクセサリを取り付ければ、Macには存在しない「タッチスクリーン+キーボード+トラックパッド」を備えたノートパソコン的な存在になります。

 確かにiPadのマーケティングゴールはPCの買い替え需要を巻き取ることでしたが、もっとiPadらしい魅力を押し出していくのかと思っていたら、ダイレクトにPCでできて、iPadではできないことを潰していくという、わかりやすい戦略と言えます。

 新しいiPadOSでは、マウスカーソルをサポートしていますが、macOSやWindowsのように矢印がただ表示されるだけではなく、少し賢くなっています。アイコンやボタンに近づけると吸い付き、フォーカスが当たっている状態になります。細かなポイントをしなくてもクリックできるという仕掛けです。テキスト選択も表計算のセルも、状況に応じて細かいポインティングを避ける仕組みになっています。

 これは、iPadOSのマウスカーソルがアクセシビリティの機能から由来していることが理由です。iPadOS 13から、タッチ操作がうまくできない人向けにマウスをサポートしており、これが標準機能へと昇華したからです。

 Appleはインターフェイスについて、「1つの方法でしか実現できないモノを実装しない」方針です。iPadやiPhoneは「人間の指という最高のインターフェイス」を生かすタッチスクリーンを主役としましたが、その指がうまく使えない人や場面においては、スイッチや音声など、タッチしない方法でもすべての機能を利用できるよう準備してきました。

 Apple Pencilがあっても、指で描画できますし、キーボードが使えなくても声で入力できます。それでも、最も使いやすいインターフェイスが、そのデバイスの体験の中心になるという認識もまた存在していました。

 では、タッチとトラックパッド、どちらが使いやすいのでしょうか。こればかりは慣れの問題がつきまといます。筆者が2016年からiPad Proの「タッチスクリーン+キーボード」というインターフェイスに慣れきってしまっていることから、急にトラックパッドでマウスポインタが利用できると言われても、ついついキーボードと画面タッチの行ったり来たりになってしまいます。

 個人的には、そんなにトラックパッドを使わなくてもいいかな、というのが、現状の感想です。ただ、マウスカーソルが再発明された点は面白かったのですが。

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